2005/9/5+9/18+9/25
★ロウエル家の事情★
この話は
その1*その2*その3*その4*その5*その6
から続いてます。まだお読みでない方は、まずそちらからどうぞ。
こんな話を始めてから、このお話の本文を既に原稿用紙にすると200枚以上書きまくってるんですけど、そうやって書いてるといろいろお話の中の、作者が知らなかった「事実」が分かってきて楽しい。
アレクの親父さん(アルフレッド・ロウエル)っていうのは、公爵位についてるのと同時に国際的な実業家でもあるってのは前にも書きました。にーちゃんが二人いて、どちらもアレクと性格よく似てるから兄弟仲もすごくいい。アレクは20歳当時、大学で国際政治学を学んでるんですが、十代では既に家庭教師について経済学も勉強していて(とーちゃんの意向で)、そちらはもうかなりエキスパートになっちゃってるから大学では政治やってたんだな。だから家族もふくめて一族みんな、アレクは将来にーちゃんたちと同じように父親の事業を手伝って財界に入るか、そうでなければ政治方面に進むであろうと決めてかかっていた。
単にそっち方面に進むってだけならアレクだってイヤじゃなかったんですけど、そうするともう自分の生まれた貴族という身分にどっぷりつかって一生送らなきゃならなくなる。それだけは、彼はどーやっても我慢できそうになかった。そこでアレクちゃんは、回りを納得させる範囲で、しかも彼の元々の身分が極力重要視されず実績の方が評価される、それから日常、堅苦しい貴族社会から離れていられる、これらの条件を満たす仕事として軍関係に進むってのはどうかと考えたらしいんですね。もちろん、自分の愛しているものを自分の力で守れる所にいたいというのもあったらしいんですが。
しかしこれは当然回りの猛反対に合うことは必至。案の定、母親は泣いて止めるし、にーちゃんたちには両親を悲しませるような選択はヤメてくれと泣きつかれ、さすがに父親は、親や身分に頼らず将来を切り開こうという愛息子の、しかも敢えて軍関係に進もうという立派な志を一蹴することもできないが、だからと言って手放しでいい顔はしない。
ロウエル家っていうのは、これまでも代々、政界、財界に逸材を輩出してきた家柄なので、そっち方面との繋がりはすごく強いんですけど、軍との関係はいまひとつ弱い。軍人ってのはまた政治家や経済人とは違ったものの考え方を持ってますから、けっこう排他性の強いソサエティを形成してる。もちろんロウエル家の威光にはそれなりに従ってますけど、それはあくまで政財界での権力をバックにしたもので内部的な信頼を基盤としたオールマイティなものとは言えない。そのへんの事情があったんで、アレクはせっかく三人も息子がいるんだから、全員を経済界に入れてしまうのはもったいなくはないか、せめて一人くらい軍にいれば、そちらとの結びつきも強くしてゆけると思わないか、と、とーちゃんをまるめこむ作戦に出たんです。
これにはさすがにアルフレッド・ロウエルも、なかなかよく考えたじゃないかと思うんですけど、それでも可愛い末息子を完全に手放してしまうのはあまりにも悲しい。そこで。彼はアレクにいくつか条件を出します。
まず当時アレクはまだ20歳そこそこで大学在学中のことですから、ともかくそれは卒業してしまいなさい。と言っても、十代の頃からの英才教育もあるし、元々アタマいいから大学も殆ど卒業できるところまで準備をしておいて、アレクはこの話を持ち出したんです。だからそれには彼も異存はない。それから軍に入るなら、将来的にそれなりの地位をしめることを目標とすること。つまり家名を辱めるな、と、これもアレクは当然そう思ってましたから問題なし。そしてもうひとつが、将来的に経済界に入る、ということは、にーちゃんたちに協力してロウエル家の事業を継ぐ、その選択もオープンにしておくこと。そのためには、いつ何時でも財界に戻れるよう、国際情勢や経済の動きには常に気を配っているように、軍に入ったからと言って、今浦島状態にはならんよーに、と、この3つの条件を出して、それなら認めようということになったわけです。
まあ、この3つめは軍の上層に登ろうとすれば、おのずと世界情勢には気を配ってなきゃならなくなるし、経済界に入るかどうかは将来の話なんで、どうなるかは成り行き次第だしってことでアレクはOKするんですが、父親にしてみるとまだせいぜい20歳という、彼にしてみたらまだまだコドモのことではあるし、しばらく広い世間に出て見聞を広めるのも宜しかろう、と、そうすれば先行き、軍という枠の中に彼がおさまっていられなくなり、政治も軍事も経済を基盤として動いているということに気付いた時に、そして世界を動かすということがどんなに面白いことか気付いた時に、本来彼の進むべき道に戻って来ることもまたあるだろう、と、しかもその時にはアレクが軍で築いた人脈が彼にとってもロウエル家にとっても有用なものにもなる。そのように深謀遠慮してこの条件をつけたってコトです。
そんなこんなで、アレクは28歳くらいになると、もともと経済、政治はエキスパートですけど、軍事にも知識を伸ばしてる。ディはマーティに哲学や芸術という文化的側面から、様々なことを教えてますが、アレクとおつきあいしてると自然と彼の世界に関する話も出てくるから、なんだかんだでそっち方面にもマーティはどんどん精通してくことになります。お忘れにならないように言っておきますと、マーティはもともとふつーの子供じゃなく、ほんまもんの天才なんです。だからわずか13歳とはいえ、基礎知識として科学に関する以外の教科もバークレイ博士がちゃんと教えてる。それだけにディやアレクってゆー、それぞれの方面でトップクラスの知識を持ってる大人と話してもちゃんと話は通じるし、そればかりじゃなくて二人がいろいろ教えて楽しいって思うくらい覚えが早い。ま、だからこそ二人ともマーティに夢中になるんですけどね。
実はこの話を書き始めた頃、一番最初で出て来たマーちゃんは26歳くらいにはなってたんです。で、こいつはどーやってこんな風に育ったんだろうって思ってたら、その後いろいろコドモの頃の話が出て来てた。その過程でディやアレクのことも分かって来たんですが、マーティのあの全人的天才の資質(これは今までここで書いた中ではそんなに出て来てないけど)、あれがどうやって伸ばされたものか、ここへきてやっとハッキリしてきたんですね。私はまあ漠然とアタマいいから自然とそうなったんだろうと考えてタカをくくってたんですが、そのへんにもアレクやディが介入してたらしいです。
それにしてもアレクですが、どうするのかなあ。いずれ除隊して財界に入るのかなあ...。私はけっこう「実業家」って好きで、うちのキャラにもわりと多い。それも親の跡継いで会社と家柄守ってるだけのような、とりすましてお行儀のいい感じじゃなく、表面的にはそうでも中身はけっこう海千山千っていうか、莫大な金額を賭けていつでも大博打うってるような、そういう冒険児的な実業家ね。中には23歳の女のコで(23歳っても少女みたいなとこがいまだにあって、すっごい元気なコですが)、養父の事業を手伝ってて世界中プライヴェート・ジェットで駆け回ってるってのもいます(彼女は私の一番の気に入りのうちのひとり)。
アレクって話の始めから海軍にいるってことになってたんで(私が決めたというより、出て来た時から決まってたとゆーか)、そのまま来てましたけど、どっちかっていうと軍人よかそっちの方が似合いそうなんだよな。うーん、そのうちまた成り行きで話進んでゆくと思うけど、どうなるのかなあ。楽しみだなあ。
★ディの事情★へ
2005/9/4+9/7+9/25
★考えてみた★
マーティを苛めて喜んだり、自分の恋人を自分の一番の気に入りの親友とくっつけて喜んだり、とゆー、ディの心理って謎だよなあ...、と考えて(作者がそんなこと言ってちゃミもフタも説得力もないが)、もし自分だったら、そういうことをするかなと考えてみた。
結論からまず先に言うと、たぶんするという気がしてきたんだな、これが。もちろんそれってマーティやアレクみたいな現実にはいそうもない上等のキャラだったらという条件付きですが、それだったらきっと楽しい。
そもそも私がなぜ、コドモの頃から自分の小説の世界にこんなに浸り込んでいるかとゆーと、現実がつまらんからに他ならないんですが、ほんとーに退屈で、現実って全然面白くない。それで架空の世界に自分の好きなキャラをいっぱい作って、そちらを自分の「現実」にしてしまって、下界には殆ど帰って来なくなっちゃったんだ、私は。それで大して不自由もないし、実際、自分にとってどーでもいー世間と関わってるよか、自分の一番好きな連中と遊んでる方がずっと楽しい、私ってそーゆーヒトなんです。ものすごいめんどくさがりだし。いーもん、どーせ性格破綻者だもん。でも、これで私の話が現実を投影したようなものには絶対なりえないってゆう、その根本のところが分かってもらえるかという気がする。本人、現実なんかどうでもいいんだから。
だから、現実世界でマーティやアレクみたいな、それとかディみたいな人間を見出すのはほぼ不可能だということも分かってるんですが、でも、もし、万一マーティみたいなコがどこかにいたら。そう考えるとディの心理ってのは私にはパーフェクトに理解出来ますね。そもそも自分の中にそういうキャラがあるから、こういうヤツが出てくるんでしょうけど、逆にそういう資質が自分の中にあるから、現実の限りなく退屈なのにウンザリしちゃうんだろうな。
誤解のないように付け加えておくと、その私の「現実逃避」っていうのは、世の中よくある「現実世界でキズつくのが怖いから自閉症になる」みたいな、そーゆーのとは全然違います。そういうのは精神的に弱くて、社会的闘争に耐えられないヒトがなるもんでしょ?
私の場合は、まあ見てれば分かると思いますが全く逆で、「強すぎる」。こういう危ない人間は、あんまりふつーの平和な世の中に関わらない方が世間サマのためって気もしますが、ともかくそんななんで「社会的生存競争」なんてものには、そもそも始めから大勝するように生まれついてんの。
だから私が「現実」とつきあいたくないってのは、やっぱりそれがあまりにバカバカしいからだと思う。だいたい人間がもーちょっとマシなイキモノなら、歴史はこんなふーになってないよ。それだけ考えても、いかに一般に「人間」ってのがバカなイキモノか、つくづくウンザリするもんな。私は徹底した個人主義者だからまだ少しは人界にいくばくかの希望くらいは残してられるけど、世の中には理想主義が過ぎるとそこで絶望しちゃって自殺に走るなんてやつもいるもん。生まれつき脳天気なおかげさまで、救われてるのよね。海外旅行とかにあんまり興味がないのも、"所詮、どこに行ってもいるのは人間よ"って考えるからどーでもよくなるんだし。ま、どっちにしても、私は自分のお話の世界で遊んでるのが一番楽しいなあ...。
2005/8/29+9/18
★イケナイ発想・その6★
この話は
その1*その2*その3*その4*その5
から続いてます。まだお読みでない方は、まずそちらからどうぞ。
では、お約束しておりましたディとアレクの話ですが、二人は親戚同士で、しかも殆どトシ同じなんで少年の頃も一緒に学校行ってます。やっぱり貴族の子弟が学ぶってば、名門の寄宿学校で決まりでしょう。ありがちなパターンですが。
アレクは当然あの性格ですから友達も多くて、活発で回りからすごく好かれてる。もちろん、あらゆる面で「優等生」。ディも一見もの静かな美人(え?)で、おまけにその頃から美術の才能がすごいってこともあって、そういうのに惹かれるタイプの崇拝者をいつも回りに取巻きとして従えてる。アレクは親戚ということもあるし、ごく幼い頃からお互いの家の行き来もあって一緒に遊んだりしててディのことが好き。ディはわりと生まれつきあんなナナメの性格で、しかもその頃はまだ「いい子ぶってる」アレクのことがキライなんですが、それでもアレクが何か気に触ることをしたってのでもないし、身内で波風たてることもあるまいと、オアイソで仲良くしてる。それは学校に行きだしてからも同じ。
でもともかく綺麗な子供なんで、ディがマーティに言ったところでは、「強姦されかかったことなんて、子供の頃なら何回もある」。アレクもそれ知ってますから学校行き出してからは特に心配してて、それとなく気を配りながら、できるだけ一人でいることがないようにと忠告はしてる。でもディはあんななんで、「行きたければ行きたい所に行くし、居たければ居たい所に好きなだけいる、誰の指図も受けない」と相手にしない。そもそもそれまでも誘拐されかかったりいろいろ危ないめに合ったりしてんのに、その調子。学校でそういうことがあっても、そうそうビビったりしない。そこがディのあっぱれなとこで、アレクとはまた違った意味で資質的に「貴族」なんでしょうね、彼も。アレクみたいにケンカ強いわけでも何でもないのに、力なんかには絶対に屈さないという極めて強い自負があるんです。
ただ、ディは剣を持たせたら強い。お父さんもお祖父さんも達人だったんで子供の頃から教わってたし、ま、貴族的なたしなみってやつですかね。他に馬にも乗れば、スキーやテニス、狩猟だってやるし、だから全くの書斎派ってのとは違いますけど、争いごとというのは何によらず好きじゃない人なんで、殴り合いなんかはやっぱりとんでもない。後にいろいろあって身を守るってことも少しは真剣に考えなきゃならないと悟ってからは、護身用にハンドガンなんかも使えるようになりますけど、「優雅じゃない」って理由で、そっちはライフルとかの方が好きみたいではある。剣の方も更に強くなってて、今ではアレクでさえ3本に1本勝てるかどうかくらいなってますけどね。
でも当時はまだそこまで行ってないから、なんだかんだと騒動にも巻き込まれるし、そのたびにおせっかいなアレクが割って入ってはことなきをえてる。絵の方でディがたて続けに賞を取ってるのも大きくて、そのことを快く思わない連中から「あいつはあの美貌で教授に取り入って気に入られてる」と陰口たたかれる。当然アレクはこれに激怒するんですけど、ディの方は「言いたいやつにはいわせておけ」状態。もちろん教授が彼を特に可愛がるのも、数々の入選もディの実力です。
そういうことに加えて決定的だったのは、本格的な画家への登竜門ともいわれてる大きな賞に、十代という最年少で、しかもトップで入選する。もう将来は決まったようなもの。ディは特にセンセーショナルな画風を好むこともあって、認める人は認めるが、悪く言うヤツは悪く言う。あの媚びない性格も災いしてて、けっこう敵が多い。しかもこれまで言い寄ってくる男なんか当然相手にもしないで、ことごとくこっぴどくふってる。つまりいつでもめちゃくちゃタカビーなんだな。ディにしてみるとそんなことしょっちゅうで、いい加減イヤけがさしてるもんだから、ついついキツい対応になるんですけど、それを知らない回りは「気位の高い王子さまだから」という印象を持って彼を見てる。アレクの友達なんかはよく彼に、「ディは潔癖症なのか?」とか尋ねるくらい応対が徹底してんですね。
アレクはディの事情を知ってますから、「そうじゃなくて」とか、かばってやってるんですけど、そういう対応が他人を不必要にキズつけるのも事実で、そのせいで反感持たれて騒ぎに巻き込まれることもあるのは気にしてる。だからちょっとは自分の身を守るってことくらい考えてモノを言えと、始終言ってるんですが、ディは聞く耳持たない。そんなこんなで逆恨みは既にいっぱい買ってるわけで、それがどーんと一気に押し寄せて来ちゃってとうとう誘拐された挙句、めちゃヤバいとこまで行っちゃう。それでも泣き喚くとかみっともないことを一切しないくらいディってのは誇り高い。
翻ってアレクですが、友達多いんでディ以上に彼を取巻く状況がマズいってことは知ってる。それで気は配ってるんですけど、気がついたらディがどこにもいない。時期が時期だし、これはもしかしたらってことで広い学校中を探し回る。なにしろ校内に小さな湖まであるような広大な土地に建ってるんで、友達にも頼んで探すんだけどなかなか見つからない。見つかった時にはディはもう半殺しくらい酷いめにあってる。それでアレクは後先見ずに飛び込んじゃうんですけど、それで大乱闘になっちゃってアレクはとうとう大ケガ。それもディの画家としての生命とも言える右手が傷つけられるのをかばってのことだったんで、コトここに至ってディは、アレクってのはホントの、本物の、正真正銘の、「大バカ」だって悟る。しかもそんな状態で意識不明一歩手前のくせにアレクの言うことには、「だからずっと忠告してたのに、きみはなんてバカなんだ」。
どっちがバカなんだー、とディは思うんですけど、これでとうとうアレクが「いい子ぶってる」わけじゃなく、類まれなくらいの本当の「いい子」だって分かる。それ以来、アレクの忠告を入れてディも少しは回りに気を使うようになりますが、その時もしアレクがかばってくれなかったらもう絵が描けなくなってたかもしれない。それもあって、そうと表には出しませんが、アレクのことは何によらず特別扱いするようになる。まあ、アレクの方は長い年月の間にはそういうエピソードも「そんなこともあったかな」程度にしか覚えておらず、そのことでディの恩人なんて態度はゆめゆめ見せないもんだから(そもそもそんなこと考えてないし)、ディとしてはお手上げ。何を言われても、どういう態度を取られても、アレクに対しては怒りもしないで仲良くしてる。それはいつでもアレクの言葉がディを本当に思いやってのことだと分かってるからなんですね。
とゆーのが、マーティが現れる頃には二人がホントの親友になってた発端ですな。この話始めて長かったですけど、やっとこれで一段落つきそうです。私はこれからこのプロットを元にして、本文作成に取り掛からせて頂きます(これだけでも何年かかるやら...)。ま、そのうちちょこっと本文の切れハシでもお目にかけるかもしれません。ここまでつきあってしまった皆さま、お疲れ様でした。アタマの方は大丈夫でしょうか。どうかつつがなく、現実の正常な世界にお戻りになられますように(合掌)。
★ロウエル家の事情★へ
2005/8/28-8/29+9/12
★イケナイ発想・その5★
この話は
その1*その2*その3*その4
から続いてます。まだお読みでない方は、まずそちらからどうぞ。
ということで、そもそもこんな話題を始めてしまった最初のところに話は舞い戻るわけです。
それなりにおさまってシアワセしているアレクとマーティですけど、しばらくしてバークレイ博士が田舎の研究所で進められてる極秘プロジェクトに加わるために、そちらに行かなければならなくなってしまいます。マーティは別にイヤだと言えば行かなくてもいいんですが、実はそこにアリシアがいまして、以前から自分と同じような立場にあるアリシアのことを気にしていたマーティは、どうせアレクも時々しか帰ってこないことなんだし、田舎もたまには気分転換になるだろうということで博士に同行することを承知します。まあ、このコがいるといないとでは博士も研究の捗りかたが違いますからね、なんだかんだ言ってもやっぱり一緒に来て欲しい。
それで今度は華やかな街中から緑豊かな田舎に舞台が移ります。あくまでイメージってことですが、以前も言ってた通りこのお話は背景イギリスをイメージにして書いてたので、街の設定は当然ロンドン、田舎ってばウェールズですか。このウェールズって設定は、これも殆ど最初からあったもので、グリーンの出身地と一緒だったってのは単なる偶然です。
さて、この研究所で誰もが認めるほど一番有能なのはアリシアなんですけど、ただ、親がいなくて孤児同然に育ったことが災いして、アタマはいいけど物凄くひねくれガキに成長している。ホントはキレイなコなのに、服装も髪型もまるっきりかまいつけないもんだからマーティに言わせると「悲惨」の一言。性格もネジ曲がっちゃってて、回りからは性格ブスと思われてるのと、あまりに異常なくらいアタマがいいことへのやっかみとで、仕事以外で近づいてくる者も殆どない。従って友達もいない。結果として一日中、ただひたすら研究所でコンピュータ相手に黙々と研究にいそしんでいる。
でもまあ本当は性格ブスと言うより、回りの心ない攻撃をかわすために予防線を張ってるって方が正しいんですね、このコの場合。マーティアと出会う頃には10〜12歳くらいになってると思うんですが、そのトシであまりにもあまりにもアタマが良すぎる。それこそもうバケモノとか、コンピュータとか、あいつは人間じゃないとか、いいだけ酷い陰口を叩かれてて、それも仕方ないほどの頭脳なんです。ただ存在しているだけで回りの劣等感を煽ってしまうというか、回りのオトナも科学研究に従事するくらいですから、それなりに自分の頭脳には自負がある。それをこともなげに蹴倒しちゃうんですから、回りは面白くないですよ。それもアリシアが何かしたとかじゃなく、そこにいるってだけでそうなっちゃうんです。まだこのコがせめて18歳とか20歳とか、それなりのトシになってりゃまだしもだったんでしょうが、そういう環境じゃ、とても素直でいいとこなんか出したくっても出て来ない。マーティの場合はこの点、バークレイ博士がついてましたから、彼の人柄や威光もあって、それほど酷いことにはならなかったんですけどね。だから天才の教育ってのは難しいんです。
こういう場合、そのコの基本的な資質がどんなに良くても回りが問題になるってこともあって、まあ人間ってのは自分より優れた者に対して本能的に反感を持ちますからね。劣等感持ったが最後、理性がふっとぶって人間は残念ながら現実でもよくいます。そういうのを避けたりうまくコントロール出来るほど、当然アリシアはオトナじゃないし。ま、結果として博士とマーティが研究所に現れる頃には、すっかり内向的で、どっぷり暗い少年になってしまってた、と。
アリシアがそういう状態だってのはマーティも以前から博士に聞いたりして知ってるんですけど、自分にもいろいろ他人事でない覚えのあるようなことなんで、それもあって心配して博士と同行する気になったんでしょうね。アレクのおかげもあって、この頃にはマーティもそのくらいには落ち着いて、成長しつつあったってことでしょう。そろそろ15歳にも近づく頃だったし。
こーしてっ、二人の天才少年は出会うことになりました。
マーティアはディのせいでドン底に落ち込んでた時こそ暗かったんですが、そんなことなる前は純真で明るい少年だったんです。博士は本当に可愛がってマーティを育てたので、親がいないとかそういう辺りのことでネジ曲がるようなことも全然なかった。回りは可愛いからちやほやするし、ただディのことがあったのと、丁度その頃、もうひとつショックなことが続いて、一時期あんなになってただけです。あるイミ、そういう時期が自分にもあったことがマーティをずーっと大きく成長させてるわけで、ディの「苦労しないと大成しない」というセオリーは、かなり正しいってことでしょうね。ディ自身のことを言えば、そりゃ経済的な苦労ってのはしてないかもしれないけど、やっぱり芸術家として優れてるってことで回りとの接点が取りにくいし、どうしてもある種の疎外感はつきまとってる。今のように大画家として認められてしまったら誰も何も言わないかもしれないけど、そこへ行くまではやっかみもあっていろいろ不愉快なめにも合わされてるし。彼にしても、そのへんでイヤってほど人間の愚かな部分は見てきてる。それが今の彼の芸術的大成のベースのひとつになってるってことを考えれば、彼がそれほど罪悪感もなしにマーティを苛めたり、アレクを苛めたり、するのもっ、理解できるな、私は。ディとしては悪いことしてるつもりはないぞ、あれは。
で、マーティはそういうコなんで、実際アリシアに会って可哀想で仕方なくなる。自分はもうアレクに可愛がられて、大事にされて、幸せいっぱいですからね。幸せな人間は寛大になるものです。それで同情心からなんとかしてやろうと思ってアリシアに近づくんですけど、始めは当然噛み付かれる。アリシアに反してマーティはもともとオシャレだし、数年前の落ち込んでる時の彼ならともかく、どこから見ても恵まれてて、愛されてて、綺麗で、そうなるとアリシアが見たとたんに、かっつんと来るのが当然のような極楽トンボにしか見えなくなってる。
それでもマーティはアレクがどれくらい根気よく自分の面倒を見てくれたかも、今のアリシアのような状態にあるコがどんな気持ちでいるかもよく知ってますから、全然諦めない。なんだかんだとかまわれてるうちにアリシアの方が折れてきて、どんどんなついてくる。そうなるとマーティもどんどん可愛くてしかたなくなる。アリシアの酷い外見も、マーティアの審美眼は本モノですから、ちょっと手入れすれば見違えるように美しくなることは始めから知ってる。適当に親しくなったところで、身だしなみもオシャレも教えて、アリシアはそのうちすっかりマーティの好み通りに変わっていく。
この場合、アレクは長いこと脳天気に海に出ていて、その間にマーティがどんなことなってるか想像もしなかったってのは迂闊でしたね。ディじゃないけど自分で手を入れて育てるってのがどんなに楽しいか知ってしまったマーティアは、アリシアに夢中になっちゃうんです。これこそ全くホントのマイ・フェア・レディ状態。
そんなこととは知らないアレクは、マーティの15歳の誕生日にディたちも連れて遊びにやってくる。「ディたち」ってのは、ディも含めてバークレイ博士と親しかったことから近くにいて、早くからマーティアをちやほやしてた連中です。こいつらのせいで酷いめにあってるマーティですが、彼らに悪気がなくて自分を好きでいてくれてるってことは知ってるので、今でもずっとつきあい続けてる。
でもその頃にはアリシアはマーティにとってかなり特別になってて、そこへアレクと顔を合わせたもんですから、忘れかけてたけどよくよく考えたらアレクがいたんだったってことを思い出す。アレクはそんなこと知りませんから、いつも通りに振舞う。(アレクに関しては、博士も公認ですからね。と言うか、あんな状態だったマーティを元に戻してくれたのはアレクだから、何も言えないって方が正しいかも。)でもマーティはアレクが自分の恋人だってアリシアに知られたくないと思ってるのに気がつく。気がついてまっさお。もしかしてこれは、どちらか選ばなければならないってことでは?
そりゃまあそうでしょうね、ふつー。そのままってわけにもいきますまい。この場合、前の時のディのように、どちらも「気にしない」なんて言ってくれっこないですからね。もちろん平気でそう言えるディの方がヘンなんですが...。
それで始めのうち隠してるんですけど、そのうちアリシアはアレクとマーティの本当の関係を知ってしまい、知られたことでパニクってるマーティを見てアレクの方もやっと、これは何かマズいことになってるんではと気付く。アレクの方はこんなに遠くに離れてるのがやっぱりイヤで、何とかマーティを連れて帰れないかとすら思ってて、以前から考えてはいたけどこの際、もうずっと一緒にいられるように仕事をヤメてもいい、つまり何より大好きな海を捨ててもいい、それを言おうと思って出向いて来てるから、こちらも大パニック。ああ、大変。そうこうするうちにアレクも仕事があるし、話は宙に浮いたまま帰らざるをえない。
さて二人もパニックですけど、アリシアも当然落ち込んでる。と言うのは、この頃のアリシアのマーティアへの気持ちは恋愛感情でも何でもないけど、彼が現れたおかげでどんなに自分の日常が変化したか、それでもう、そのなつきかたってのはひとかたならないものがある。兄弟か家族のように思いつつあるのに、アレクや他の友人たちとマーティがどんなに仲がいいか。それだけ見てても「いつか帰っちゃう」んじゃないかと暗い気分でいたところへ、アレクはただの友達ですらないと分かる。そんなの絶対、マーティは彼のところに帰っちゃうじゃないか、そう思ってしくしくしく。それをマーティが放っとけるわけもなく、絶対帰らないからと約束する。それはつまり、少なくともマーティにとっては気持ちの上だけとはいえアレクに対する裏切りだし、結果として別れるってことですけど、アリシアの側にいる時はまだアレクと別れられると思ってる。まだ自分の本当の気持ち知りませんからね、マーティは。だから、これまでのこともあるし、アレクに何も言わずに済ませるわけにもいかないから、ちゃんと行って話してくる、一週間で帰るから、って約束して出かけていく。
ところがアレクの顔見ちゃったとたんに、ああ、とっても別れられない、こんなにアレクのことが好きだったのか、ってことで、マーティは身動き取れないくらいとっちかっちゃうんです。アレクも始め怒ってますから彼にはめずらしく辛辣なもの言いだし、「もうこのまま閉じ込めてでも絶対帰さない、帰さないためだったら、どんなことでもする。殺してでも側においておく。」とまで宣言する始末。ディがこれを見てたらさぞ楽しんだんでしょうけど、彼のことだからいち早くこの事態に気付いてるはずなのに、この件に関してはなぜだかディは沈黙を守ってて介入してこない。と言うより、その必要がなかったのかもしれませんけど、ともかくアレクとはとても別れられないし、かと言ってアリシアをこのまま悲しませるようなことになるのも我が身を切られるように辛い。選べるわけなんかなくて、マーティアは半狂乱になっちゃう。
決して優柔不断でも何でもないし、元来しっかりしたコなんですが、ディの時といい、どうも好きな人が絡んでくる問題になるとマトモな判断力が無くなってしまうみたい。それで答えが出せないままにそのままずるずると一週間が二週間になり、三週間になってもアレクの側を離れられない。言うコトも支離滅裂になってくるし、そうなると根が優しいアレクですから、マーティのことのみならずアリシアのことまで心配になってくる。アリシアはアリシアで、あまりに長いことマーティが帰ってこないので、博士に事情を話して何とか連絡がとれないかと泣きつく。博士はそらみたことかと思いながらもアレクのとこへ電話をかける。でもマーティは話もしないで切ってしまう。
絶対に帰さないとか言い切ってたアレクですけど、ここまでマーティがパニクっちゃってるのを見てて、かえって自分のことをそんなに想っててくれたのかと気付くんですね。ここでアレクの方が折れるって言ったら、ふつー読者は納得しないかもしれないとよくよく分かってんですけど、うるさい、うちではそういうことが起こるんだ。ご都合主義とかそんなんじゃありません。ここで自分を抑えてでも相手の幸せを優先する、それが純愛というものです(言い切るぞ!!)。実際ね、自分が絶対そうするって分かってるから、確信を持ってアレクもそうするって言えるんだ、
私は。ましてやこの場合、マーティはアレクのことが好きでこんなことなってるんだから。
私に言わせれば、そう出来ない方が狭量ってもんです。そこで引き止めたって、相手不幸にしてまるごと破滅に一直線じゃないですか。私は好きな人には絶対に幸せでいて欲しいです。それが自分の幸せだし。そもそも、それくらい想ってやれないような値打ちのないやつは、始めから好きにならん。
ってことで、作者権限で全ての異議は却下。実際、コレだからうちではどんな設定作っても、レディ・コミとかヘタな純文みたいなグロテスクな展開には、しようったってならない。残念ながら世の中、狭量な人間が多いから、そういうのの方が現実的なんでしょうけどね。ま、生き方は人それぞれです。私は他人の現実なんてどーでもいーもん。
さてマーティがどうしようもなくなってるのを見て、アレクはもう見るにしのびなくなってきて、しかも皮肉なことにそれがキッカケでこれまで謎だったマーティの本心がハッキリすることになった。それも考えて、とうとうアレクは折れるんです。「きみを全部失ってしまうよりは、半分でもおれのもののままな方がいい」。カッコいいですね、アレク。ほんとにほんとにマーティのことが好きなんですね。そう言えば、実はコレと同じよーな展開が、うちの話の中にもうひとつある。そっちの方が着想は先ですけど、これまた好きな展開なんだな、私の。
アレクはそれでいいから、ともかく先行きどうなるにしてもアリシアだって心配してるだろうし、一度帰ってやれって言う。アリシアの方はまだ恋愛感情絡んでないにしろ、問題はマーティの気持ちの方なのよね。アリシアは「恋人」っていうのがどういうイミか、ホントのとこまだちゃんと分かってないようなコドモだから。それはマーティもちゃんと分かってる。だからそもそもアリシアはそれなりに先行きの展開に任せて、アレクとはこれまで通りつきあう、これでホントはパニクる必要なんかなかったはずなんだ。少なくともこの時点ではアリシアにとってマーティは兄貴みたいなもんだから、側にいてくれさえすれば、にーちゃんに恋人がいても弟は気にしないよね、ふつー。
でもマーティは以前、ディとアレクの間でウロウロしてた時にアレクから、そういうことをしてはいけないんだ、どっちか選びなさい、と叱られてたから余計だったんでしょうけど、長いこと彼の側にいて必要以上に常識が戻って来ちゃってたのかこういうヘンなとこでスクエアになってて、一度に二人を同じように想ってちゃいけないって思いこんでしまってた(それが当然ってば当然なんですが)。それで「どっちか選ばなきゃ」でパニクってたの。ただ、前の時はマーティとしては自分の気持ちがディにあって、アレクのことは成り行きって状態だったから、それほど自分を責める必要もなかったんですけどね。ことにディはそれまでもマーティが誰とつきあおうが気にも止めませんでしたから。でも今回の場合、どっちも同じくらいのウエイトになってるのが問題だったんだと思う。それが直接にお怒りを買うはずのアレクから、よきにはからえというお達しが出たおかげでいくぶん落ちついて、マーティはアリシアのとこにやっと帰る。少なくともアレクを失わなくて済むと思うだけで、ずいぶん気持ちは軽くなってる。
アレクの方はとりあえずそういう結論を出しましたが、今度はアリシアの方です。マーティに結局別れられなかったという話を聞いて、でも今まで通り彼が自分の側にいてくれるってことだけは確かなようなんで、一応それで納得したように見えた。マーティにしても、そのことに関しては謝りながらも、アリシアが問題としてるのは自分が今まで通り側にいてくれるかどうかだということは分かってたから、ともかくしばらくはこれで静観ってことになる。でもヤバいはヤバいですわね、この状態は。まず、マーティの方がいつまでアリシアをそのままにしとけるか。アリシアの方は何も知らないんだから、そのまま兄弟みたいな顔して可愛がってれば済むかというと、それはマーティとしては無理でしょう。しばらくは、そういう三角関係に無理に引きずり込んで、昔の自分みたいな思いをさせるのは可哀想と思って手を出さないんですけど、どういうわけかアレクがそれを見ていて煽るようなことを言い出す。開きなおっちゃったというか、いつまでもそっちで純愛されてるのが気に入らなかっただけなのかもしれませんが、まるでディが乗り移ったように「なんだ、まだ手をだしてないのか、もしかしてふられてるの」みたいなことを会うたび言うの。アレクがこのくらい意地悪くなっちゃう気持ちも、私は分からないでもないが...。
ということで、ここで男のコ三人の三角関係が成立しちゃう、いったいこれからどうなるんでしょーね、というお話なのでした。まあ、あまり道徳的とは言えない発想なんで、「イケナイ発想」だなあと思ったりしてたんですが、その後、まだまだこんなもんじゃない方向に進んじゃってるんだよね。困った困った。
それにしても女のコの入った三角関係なんてのは(もしくは女々しい根性の男でも同じだけど)、たいてい不粋で陳腐な方向に行っちゃう気がしてヤなんです。それこそいったいどっちが本当に好きなの、とか、どっちと結婚してくれるの、とか、考えただけでウンザリする。もちろんこの話は背景に更に大きい展開を持ってるんで、この三人の関係はそれもあってずっと高い方向に行くっていうか、アリシアとアレクもマーティを間においてお互い実にノーブルなスタンスでつきあってゆくことになるし、たぶんこのバランスっていうのは、マーティが本当にどちらも寸分たがわず同じくらい好きだから成立すんでしょうね。もしそうじゃなかったら、崩壊して当然のバランスですから。
私けっこう好きなのは、昔、大きな商家とかの旦那さんにお妾さんがいて、それへ奥さんは「いつも主人がお世話になってます」と、盆暮れの付け届けをした、とゆー、そういう話。まあとんでもない飛躍的イメージですが、アレですね、アレ。浮気は男の甲斐性っていう、あれです。優雅だなあ、そういうの。その甲斐性ってのは経済的なものだけじゃなく、そういう状態に女二人を置いてもそれで通る人間的な甲斐性ですか。もちろん女性の方もどちらもよく出来てて、醜い争いなんか絶対しない。そういうよく出来た女にそうさせておけるだけの男の甲斐性っていうか、そういうもんです。それを成立させるだけの人間的魅力っていうか、私はそういうのに惹かれるんですね。同じようなシチュエーションでも、女同士が醜く争うようじゃダメです。それだけによっぽどの男でなきゃ出来ない贅沢でしょ、そういうの。あ、それって光源氏か。あれが代表的ってば代表的だな。やっぱ、それっくらい外側だけじゃなく中身もいい男でなきゃね。そういう男だったら、もうお側に置いて頂けるだけで幸せです、何でも許します、ってならない?
女のコとしても。
ってことで5回に渡って倒錯的な世界にひたりこんでしまいましたが、そういう話のベースになってる「純愛の美学」(おお!)っていうか、そういうのの話もいずれしたいぞ。いや、自分では私の話って基本的にすっごい健全だと思ってるんですけど、というのは絶対に破滅的とか醜い方向に行かないから。結局は、そういう危ない関係に巻き込まれてる全員が賤しい根性で動かず、それぞれ関係者の立場を思いやるってことが出来るキャラだからでしょうね。みんな人間としてデキがいいっていうか。私、そういうの以外好きじゃないもん。だから好きじゃないタイプはウチの世界に入れないんだ。そんなの入れると話がダサくしかならん。
とは言え、根本的に「偽善は最大の悪徳のひとつ」と考えてるので、「自己犠牲の精神に基づく、キレイすぎる感動巨編」みたいのにもならないけどね。心が伴った対応と、単なる口ばっかりの偽善とは全然違うんだよ。そのへんをキッチリ分けるのが「美学」ってもんなの。賢いつもりのバカの何がイヤと言って、口先ばっかりの偽善でも言ってる間は本人、本気でそのつもりでいるってことなんだよな。で、自分の美化されたセルフ・イメージに自己とーすいしてるから、誰もが自分の言うようにするべきだ、って簡単に狂信できるのね。おバカ。でもそういうのに限って、いざ何か自分に負担がかかってくるとなると、さっきまでご立派なこと言ってたのも忘れていきなり保身に走る。つまらん連中だ。
ま、その話はいずれするとして、その前にディの話ですが、そうだよな、コイツもそこそこ苦労してなきゃ、あれほど若くして芸術家としては大成しないよな、と考えたりしてて、ちょこちょこ彼の過去の話なんかも出て来てるんです。その中でも、なんでそんなにアレクを気に入るようになったのか。その話の方を次回は先にしようかな。だから、も一回つづく...。
その6へ
2005/8/26-8/27+9/3
★イケナイ発想・その4★
この話は
その1*その2*その3
から続いてます。まだお読みでない方は、まずそちらからどうぞ。
なんか私のアタマはここ数日、ますます「イケナイ発想」がエスカレートしているようで、もう昨日なんか、さすがにコレはこんなとこじゃ書けない、ってとこまで行っちゃいました。まあどんな発想だったかは、いつか出来上がった作品で読んでもらえればと思いますが(果たして、そんな日が本当に来るのか?)、ディがマーティアをモデルにして描いた絵があるって言ってたでしょ?
これは7枚続きの連作で、しかも床から天井まであるような大きさの大作が続いてるんですけど、これを描いた時、ディがどうやって描いたか。そんなことやってたのか...、っていうか、もうさすがにコレはここでは書けません。だめ、それだけは許して...。
いや、ちゃんと書いたストーリーの流れてる中でエピソードとして出て来るんだったら、このシーン、すっごいキレイかもしれないんですけど、その部分だけ抜き出して書くと、あまりにも常軌を逸してしまうの。
ってことで、そういう絵があるんですけど、以前も書いたように私のストーリーっていうのは、目の前でヴィジュアルで展開してゆく、まんまシーンが見えて来ちゃうんですね(もちろん台詞入り)。私もディはマーティのどんな絵を描いたんだろうって、見たいなと思ってたんですけど、単純に肖像画なんて全然芸がないじゃないですか。それでどんなんだろうなー、と思ってたら、それはこんなふうだった。これはもし私、自分で描けたら描きたいですよ。コトバじゃ伝えきれないよーな絵なんで。でも、ウデがないのが悲しい...。
まずその中の一枚め、「ワルプルギスの夜」というタイトルがついてるんですけど、全体に墨を流したような、暗黒一歩手前みたいな闇に左上から右下にかけて亀裂が走ってるんです。で、その頂点に半透明の丸い月。その月の光が闇を分けてる部分がその亀裂になってるんですね。一見して暗い、向こうがよく見えないって感じの闇に一面覆われてるような絵なんですけど、よくよく見るとその亀裂を中心におびただしい数の魔物が描いてあるのが見えてくる。それはもう画布一面にベースとして描かれていて、その上に濃いグレーを流してあるんです。無数の魔物はじっとしてるんじゃなくそれぞれに動きがあって、まるで狂乱の宴って雰囲気で、しかもこの月の透明感が凄絶。冷たくて、禍々しくて、美しい。これを背景にして闇の向こうに描かれてるのが、十字架のようにも見える大きな剣を、今にも下にむけて突き刺すような形に掲げている大天使。ゆったりとしたトーガを着て、背中に大きな羽根を持ってはいるんですけど、ただし、この羽根が白なのか黒なのかは全体がそんな色なので分からない。だから、もしかしたら悪魔かもしれない。魔物を葬るために天から降りてきた天使か、それとも魔物の宴に加わるために天から堕ちた堕天使か。そう思ってみると、魔物は狂喜しているようにも、断末魔の苦しみに喘いでいるようにも見える。これはディの意図したところで、それがどちらに見えるかはたぶん、見る当人の資質に直結してくるんじゃないですか。
そういう幻想的な光景が、まあ分かると思いますけどディってヒトはああいう性格なんで、まずザッパい画風じゃないですわね。魔物一匹一匹でも丹念に描き込まれたような、それはもうレンブラントの如き精緻で、それでいてダイナミックな筆致です。それが床から天井まであるような画布に描かれてると言えば、少しは迫力が分かってもらえるでしょうか。素材的には油彩だと思うんですけど、現実問題、油彩だけでこういうことが出来るのかどうか、今のとこちょっと分かんないんで、それについては保留。
こんな調子で7枚続いてるわけなんですけど、もちろんこの天使のモデルがマーティアです。ディは元々それほどモデルを使う画家ではなくて、でもマーティと初めて会った時に何かピンとくるものがあったらしく、ぜひともアトリエに来てほしいと頼みこみます。その頃のマーティは、まだ全然すなおで純真で、とても後のグレ方なんか想像もつかないような、それこそ天使のような少年。ディはもうその頃から有名な画家だし、バークレイ博士とも顔見知りだし、そんなに惚れこまれてるんならってコトで博士も許可する。でもヨコシマなディは、ただ純真な天使のようなモデルが欲しかったわけではなかったのであった...。
まあ、この一枚めの雰囲気を見ても分かりますけど、そんな純真な少年をモデルにしてこんなの描けないよねえ...。さて、ディはこれらの絵を描いている間、マーティアに何をしたんでしょうか?
きゃはははは。ないしょ。
ちなみにこの7枚の絵をディは個展で発表はしたけど、売らないで手元に置いている。郊外に彼が親から相続した古い城があるんですけど、その石造りの由緒ある城に7枚とも飾られてるんです。回廊の石壁に、ゆらめく蝋燭の光に浮かび上がるこの世のものとも思われない幻想的かつ詩的な光景。うー、想像してしまうな。
発表された時は、もうそれはそれはセンセーショナルで、それまでも鬼才とか言われてたディですけど、これで一気に天才の名をほしいままにするようになる。世界中の美術館やコレクターが、ディが売らないと言えば言うほど欲しがって、今や天文学的な値段が付いてるというシロモノです。それだけに「天使」のモデルになったマーティアへの世間の関心も通り一遍ではなく、なにしろコレ描いてる間いろいろあったんでマーティは自分がモデルだなんて知られたくないのに、ディはまだその頃すっごくやさしくしてくれてたのでマーティも気を許してたし、「ぼくの恋人をみんなに見せびらかしたい」とか言うもんですから、仕方なく個展にディと一緒に顔を出す。
ふつうの少年だったとしても、このシチュエーションじゃ有名にならざるを得ないでしょうけど、なにしろこの国きっての世界的な科学者バークレイ博士の秘蔵っ子で、しかも自身が数々の卓越した研究成果を上げている天才少年ともなれば、マスコミが騒ぐのなんの。そのおかげで、それまではせいぜいバークレイ博士の周辺でだけ可愛がられてたのが、特に画壇を中心にチヤホヤするやつが増え、それと前後してマーティにはすごくショックなことがあったこともあって、あんなとこまでグレちゃったわけです。やっぱり一番悪いのはディか...。当然だな。でもこの「ショックなこと」っていうのはディとの関係がこじれてたこととはまた別もので、つまりマーティにはダブルで負担になるようなことが一時期に起こっちゃったんですけどね。
でもなんか分かってきたのは、マーティがどうしてそんなにディが好きかってことで、この絵を描いてる一年くらいの間に、ディはマーティアにいろんなことをとりとめもなく話すんですけど、ディにしては珍しくそれで気を引こうとか、何かよからぬ企みがあるとか、そんなんじゃなく極めて素直に思ってることを滔々と話すんです。始めはマーティア、ちょっとディのことを恐がってるんですけど、一枚目の絵が完成するあたりからその才能に惹かれるようになって、どんどんどんどん彼のペースにハメられていく。で、ディの方も、彼がいろいろ話すのを聞いてたマーティアが「ディは(厳密な意味で)画家じゃないよね」とか、的を射たようなことを言うのでますます嬉しくなる。で、ますます調子にのってマーティアを可愛がる。まあ、このへんで出来た信頼関係(みたいなもの)があるということが分かると、後にマーティがアレクのことで簡単にディをたよったり、ヨリ戻そうと言われてコロっと言いなりになってしまったり、そういうのも理解出来る感じがする。マーティアの元々のキャラクターから言えば、よほどのことがなきゃホントはそうはならないはずだから。
マーティがディを「画家じゃない」と言うのは、この絵「ワルプルギスの夜」を見ても分かることなんですが、単なる視覚的美を追っているだけの絵画じゃなく、その構図には様々な哲学的示唆が含まれている。そしてそれが7枚並ぶ時には、ディの根本的に持っている思想性が目のある人間には理解できるようになっている。"bete comme un peintre(画家のように愚かな)"という形容は、少なくともディには縁がないですね。つまり絵画でありながら、「詩」なわけだから、突き詰めればデュシャン的な方法論は視覚的要素がクラシックな絵画であっても可能なんです。
私はよく「詩」というコトバを使いますけど、世の中にふつー出回ってるような、韻文、散文含めてたかだか卑小な人間の、小市民的感情をコトバを弄して書き連ねたような、つまらん哲学性のカケラもないタダの言葉の羅列はこの際忘れて下さい。本当の「詩」というのはそんなくだらない矮小なもんじゃない。それはまさに「神々の言葉」とも言っていいようなもので、そこに含まれているテーマは小市民の想像なんかはるかに及ばないような壮麗、壮大な思考です。そういう本モノの「詩人」というものを、同じ人間と思うこと自体が既に僭越。で、このディの「詩人」の資質はマーティアとも共通しているもので、マーティはそれまで回りに見出すことのなかった自分と同じ種類の、同じ視野を持った人間であるからこそ、ディのことがそんなに好きで好きでしかたなくなってしまったんだと思う。
ディは「背徳的なのは我々ではなく"彼ら"の方なんだ」と言い、だからこそ光を闇に、闇を光に(foul
is fair, fair is foul)、それを絵画を通して表現しようとし、それゆえにこの7枚めなんですけど、この最後の7枚めに描かれるマーティアは、光も闇もどちらも足下に従えてなければならない。それこそがまさに全能ということで、しかもディは絵画のなかでだけその「天使」を存在させるだけでは飽きたらず、現実にマーティアという、人間でありながら光も闇も従える大天使を創造したかった。だからこの絵の7枚目の想像上の「大天使」は実際に存在しているし、それでやっとこの話は本篇のテーマに突入できる、と、ゆー、ながーいながーいプロローグが今書いてるよーな、話なわけですね。ああ。私、200歳まで生きても完成できないかもしんない、こんなの。
よし、ここまで来たらとりあえず次回くらいにはアリシアが出て来るくだりを書けるかもしれない。たぶん、書けるだろう。
その5へ
2005/8/25-8/26+9/3
★イケナイ発想・その3★
この話は
その1*その2
から続いてます。まだお読みでない方は、まずそちらからどうぞ。
ども!
AYAPOOならではのヨタ話が続いてますが、皆さんまだおつきあい頂ける根性は残っておられますでしょうか。お客さんが減ると悲しいなーと思いつつ、それでも前回の続きです。今、私のアタマはこっちの世界にどっぷりハマりこんでいるので、他のことが考えられなくなっちゃってるんですね。そのうちまた地上に戻ってくると思いますけど、それまで呆れられても止まらないんだもん、仕方ない。
さて、ディにヨリを戻そーよと迫られたマーティはそれでもしばらく抵抗するんですが、まあ昔の恋人なんてものは、しかもキライで別れたわけでもなんでもない、今だって好きな相手からそう言われてごらんなさい。やーっぱり突き放しきれなくて、アレクのことで相談に来たつもりだったのにホントはディに会いたいってのもあったらしく、結局いいようにまるめこまれて彼の思惑通りになっちゃいます。
別れたと言っても、それはディがあんまりマーティを苛めるんで、苛めて楽しまれてることに気がついたマーティがそのことで怒って長いこと彼と合わなかったというだけで、そもそも二人の間でははっきり別れるということに決めたってわけでもなかった。しかもディは、どうしてそんなに苛めてたか、ひとつには彼を好きで仕方ないマーティが、意地悪されて怒ったり、泣いたり、喚いたり、するのが可愛かったというのもあるんですけど、それ以上にいっぺんどん底まで落として、立ち直れるかどうか見てやろうという意図もあったってことを話すんです。それはマーティも、もしかしたらそうかなと思わないでもなかったんで、そうするとやっぱりディは自分のことが一番好きだったのかと思って喜ぶ。ディの方はアレクのおかげもあったとはいえ、マーティが立派に立ち直って見せたことに喜んでて、「今は何でも、ご褒美をあげたい気分」だとか言って、めでたく復縁。
これがふつーの恋人同士なら、ココで二人がヨリ戻しておしまいってコトになるんでしょうけど、ディは始めからそんなつもりはない。アレクとマーティをくっつけちゃおうという目的はまだ当然捨ててませんから、じゃあアレクはどーするの、って話になるわけです。
マーティは大好きなディと元通りになれたんだから、それで満足できるはずなのにアレクのことはそれでも気になってる。それはもちろんディも知ってます。で、二人してどーしよー、という話になっていく。マーティはアレクの側にしばらくいたせいで少しは常識を取り戻してるし、それで「本当ならディとこうなったってちゃんと話すべきなんだろうけど...」、でもディは「今、ぼくとのことを話したりしたら、最悪アレクのことはそれで終わりだよ。ぼくは知っての通りそういうことはまるっきり気にしないし、別に悩まなくても欲しければ手に入れれば?
いいじゃない、正直で。自分にウソついて、ご立派な偽善者になるより、よっぽど健全だよ。」
それでもまだマーティは、アレクが自分のことをどこまで想ってくれてるか分からないので、どうするか決めかねてる。そこでディは例の真相、つまりアレクがホントはマーティにご執心だという話をバクロ。それで少し自信を取り戻せたマーティは、そのことを今まで隠しておくなんてディはまた何か企んでるとは思いながらも、アレクにちょっかい出すことに決める。で、「本題なんだけど、どうやったらいい?
アレクにさっさと本音を吐かせるには?」
アレクの性格をよくよく知ってるディには、彼がマーティに手を出さない理由なんてお見通しなのね。そりゃ、始めこそああいう事態で、しかもディに対してアタマに来ていることもあって、マーティを彼から取り上げようとマジで思い込んでたアレクですが、一旦マーティアが落ち着いて、しかも自分への信頼や好意を持ってくれるようになったと分かると、今度はそれを壊すような無理強いはしたくなくなる。自分のしたことの見返りでディにとって代わろうなんて考えは、アレクの健全な精神にはまるっきり不当なことだとしか思えない。たとえマーティの方がそれを当然だと思ってたとしてもです。ま、そうなるとアレクの自制心ってのは鋼鉄なんで、このままじゃどこまで行ってもどーにもなるまい。それもディにはお見通し。そんなとこへマーティがどんな小細工しようと、アレクの方は最悪の場合、気がつかないってこともありうる。
もうそうなるとヨコシマな画策をするより、ストレートに好きだって言っちゃいなさいと、ディは言うんです。アレクのような人間の心を動かすのは、本心からの言葉だけだって知ってますからね、彼は。ただ、その「好き」も、あんまりわざとらしく積極的じゃいけない。事実ありのままというか、アレクの気持ち次第だよみたいな、マーティの本心そのままの方がずっとアレクの気持ちを揺らすだろう。
ディは他にもアレクの性質や環境など、マーティに有用そうなことを教えて、はい、では頑張ってね、と送り出す。でも彼には実はもうひとつ、決定的にアレクがマーティアに手を出さざるを得ないように仕向ける、えげつないたくらみがあるんです。でも、それはめちゃくちゃ悪どいやり口なんで、まだマーティには教えない。そしてその後も二人を見守りつつ、折にふれてマーティを呼び出しては進展を報告させている。もちろん、その間も自分との関係は続けさせてる。...、こういう男に仕込まれたら、マーティも先行き強くならなきゃ仕方ない。二十才過ぎてからの彼は、簡単には自分の心の底を覗かせないような、ちょうど今のディのようなクールなところのある青年に成長するんですけど、そのへんもディの設計図通りってことかもしれません。それにしてもこのへん、これまた私の好きな映画、ジェラール・フィリップとジャンヌ・モローがやったあの、
そうです、「危険な関係」、あれっぽいですね。好きなんです、私、ああいう危ない話が。
そしてアレクの方ですが、マーティアが自分の気持ち、つまりアレクに感謝していること、アレクが少しは自分のことを特別に思ってくれているのかなと考えていたこと、でもアレクは少しもそんな様子を見せてくれないのでちょっとキズついてること、コレは全部ホントのことですけど、それと彼への自分の好意を素直に話すのを聞いて、かなり気持ちが動く。だーけーど、それでもまだ落ちない。まあディには始めから分かってることなんですけど、彼の決定的な計画を実行に移す前に、アレクがそれを聞いて動揺するようなところまで気持ちを持って行っておかないと効き目がない。それも分かっているから、マーティアの話を聞きながらディは爆弾落とすタイミングをずっと計ってるんです。
それも知らずにアレクは、マーティと会うたびに少しずつ抑えが効かなくなって来る。まあ、そりゃ、マーティの方がまるっきり無防備に自分にあまえてくるんですから、抑えている必要の方が本当はないんだし、ただ彼がひっかかっているのはマーティがまだ完全に彼にまいっているわけではない、どちらかと言えば彼への感謝の方が強くて彼の気持ちを受け入れてもいいと思っている程度だと、事実、殆どその通りなんですが、それを知ってるからなんですね。だから、まだ今のところはもう少し、と思って踏み切らない。それくらい彼にとってはマーティアは大事になっちゃってるんです。もちろんディとも、少なくとも恋人としては切れたとアレクは信じてるし、マーティアのことをまだ子供だと思ってるし、これまでがあまりにも年相応に行ってなかったんだから、このままもし背徳的な環境から抜け出せるなら、その方がいいんじゃないだろうかとも彼は考えてるわけです。今は自分が一番近いところにいるんだし、だからこのまま大事に見守って...。
ディが待っていたのは、実はコレ、アレクが一番頼られているという余裕で安心してしまうところまで二人の気持ちが近くなる、つまりアレクの気持ちがそこまでマーティアに寄っていて、抜き差しならなくなってること、もう自分から離すことが出来なくなってしまってる、そこまで行くのを待ってたんです。で、どっかん。そこで自分とマーティアの今の関係をアレクにリークすんですね。つまり、マーティアは今でもぼくのものなんだよ、と。そして、そうである限り、ぼくはこれまで通り扱うつもりだよ、と。その上、マーティアがアレクに興味を持っていて、どうやれば自分のものに出来るのかということについて、ディの指示を仰いでいる、これまで全部バクロしちゃいます。
あれだけ酷い目に合わされたディと節操もなくヨリを戻してる、それもショックですけど、ディは性懲りもなく、アレクがここまで健康にしたマーティをまた逆戻りさせる気でいる。しかも実際、ディとそういう関係を続けていながら、アレクにあんなにあまえて見せているマーティアは(しかもディの入れ知恵で)、まさにディの思惑通りに一切のモラルから切り離されたモンスターに成長しつつあるんじゃないのか。まあ、これも事実そうで、アレクの出方次第では、つまり彼が今ここで見捨てようものなら、マーティはディの望むままの美しい悪魔に成長するだろう。何が何でもディと切れさせないと、と言うのは、マーティにとってディはクスリ以上に厄介な麻薬になってしまっているので、必ずそうなってしまう。ことここに至って、アレクはディがマーティに対して持っている影響力そのもの、それを消滅させなかったらどうにもならないと悟る、というか思わされてしまうことになる。もちろんこれは全てディの計算通り。それでアレクは以前のような中途半端な気持ちではなく、今度こそ本当に、どんなことをしてもディからマーティを取り上げる、と決意。でも実はお分かりのように、それこそがディの目的だったわけです。
ま、そういうわけで、アリシアが登場してくる頃には、マーティとアレクはおさまるところにおさまってうまく行ってるんですけど、でもディの介入でナシくずしにそんなことなっちゃったんで、実はその頃に至ってもまだアレクは、どのくらいマーティアに愛されているのかについて自信は持ってない。マーティがディともきっちり別れて、それからは自分以外の誰にも興味を持ってないのは知ってるが、だからといって自分をどのくらいに思ってくれてるのかはずっと謎。それは当然で、マーティの方がそもそも自分がどのくらいアレクを想ってるか、よく分かってないからです。それを決定的に認識するのが、アリシアが現れてから。よし、そのお話は「その4」以降に持ち越すことにしよう。つづく...。
*****
つづく...、はいいんだけどさ、ちょっと考えてたコトがあるんで付け加えておこう。これ、もしマーティが女のコだったとしても成立はする話なんだよね。ただ女のコだったら別にいろいろ設定付け加えないと(特にキャラクター設定)、最後は結婚しておしまい、みたいな、極めて陳腐な話になりかねない。それだとつまらん。そんな話、他人のなら許せてもウチでは絶対許されない。
男女の関係というのは、結婚にしてもそうだけど、社会的な要素が簡単にからまって来ちゃうじゃないですか。そうすると結婚してれば世間体がどうとか、だから別れられないとか、捨てないでとか、逆に「奥さんと別れて私と結婚して」とか、もうそれって「純粋な愛情」からは全然離れちゃって、人間的な「欲」が絡んで来てるってことなんですよね。それがイヤ。ああいうのは「純愛の美学」に反する。世の中、そういう「欲」と「愛」とをカンちがいしてるヒトなんて掃いて捨てるほどいるけど、私はつくづくそういうのがウザい。考えてみればだからこそ、そんなつまらん現実を投影したような話が掃いて捨てるほどあるわけか...。
「背徳的」っていうことは、そもそも自分を取巻く社会なんてどーでもいい、ってトコにしか成立しないから逆に「純粋」なままにしておけるんだろうな。だから書きやすいって言えば書きやすいけど、でも書き方さえ間違わなければ、別に背徳的であることにこだわらなくてもいい。"Love
Is The Drug"っていうか、「愛」ってそこにしか成立しないんだよね、ホントは。それはもう恋愛だろうが、親子愛だろうが、人類愛だろうが、そこにしか本当は成立しないものなんだ。でも、そこんとこが分かってないから、「大きい愛(unconditional
love)」とか「小さい愛(conditional love)」とか、全世界的にちんぷんかんぷんな考えが行き渡っている。それはそもそも多くの人間が「欲」と「愛」とをカンちがいしてるってのと大きく関係してると思う。ともかく私が書きたいのは、どこまでいってもただひたすら「純愛」なのよね。私はそういうもんしか書きたくないの、というか、資質的にそういうもんしか書けないの。
逆に言えば、そのへん分かってれば男女だろうと女のコどうしだろうと、こういう話にすることは可能なわけで、そこが本当の「美学」ってやつですかね。実際、うちの場合どんな設定でもレディ・コミとか純文的な陳腐さってのとは無縁だし、そこが所謂「耽美小説」ってのとも全然ちがうとこじゃないかな。ともかくカテゴリーとかそんなん、どーでもいいヒトなんだ、私は。だからこれからも、書きたいものを書きたいよーに書くぞ♪
その4へ
2005/8/24
★イケナイ発想・その2★
この話は
その1
から続いてます。まだお読みでない方は、まずそちらからどうぞ。
前回のお話を書いてる間に自分の小説の中にどっぷりハマりこみ、気がついたら夜が明けていた...。小説を書き始めると夜昼なくなるのが困るところなんですが、ストーリーが流れ出すと時間なんかどーでもよくなるくらい楽しいんですね...。あのあと話の細かいところがどんどん出て来ちゃって、だからしばらくココの話題もそれが続くかもなあ。どうか、お客さんがなくなってしまいませんように。(合掌)
そもそもはその「イケナイ発想」っていうのはアリシアが登場して来てからのストーリー展開のことなんですが、しかし昨日から今日にかけて、立ち直ってからのマーティがそのあとどうなってくか、とか、アレクの細かい人格・背景設定、だとか、このふたりの関係に根性わるのディがどうちょっかいを出すか、とか、そういうのがどんどん続いて出てくるので止まりません。アリシアはいったいいつ出て来るんだ、って感じになってしまってますが、ともかく先に、その後のマーティとアレクとディの話を書きましょう。まだ前回の更新分をお読みでない方は、話が見えなくなっちゃうと思いますので、こちらから先にどうぞ。
マーティは彼を更生させようとあれだけ親身になってくれたアレクが、当然、自分のことを好き、それも特別な感情を持ってると、そりゃ思いますよね。で、アレクがその後もあれこれかまってくるので、それはまあそういうことかな、と、けっこう悪い気はしてない。
元々この話は場所としてはイギリスをイメージしてたんで(国名とかは変えてましたけど)、だからあのへんの有閑階級を連想してもらえればイメージ近いと思います。アレクはディによるとその中でも屈指の大公爵の三男坊なんだそうで(ディがマーティに教えるんだ)、上に兄が二人、お父さんは大実業家としても知られてて名門中の名門。お兄さん二人は事業を手伝ってるが、アレクは格式だの身分だのが堅苦しい貴族社会になじまず、海が好きで自由が好きで、しかもたいそうな愛国者なもんですから現在の職業についている。とはいえ、アレクの場合は家族から浮き上がってるというわけではなく、その明るくて聡明、曲がったことが大キライでまっすぐな性質、そんなののせいで兄弟三人の中でも一番両親に愛されている。お兄さん二人も、若くして既に海軍中佐の地位にある彼のことを誇りに思って溺愛している。海軍では中佐ですが、元々の正式な身分はアレク・ロウエル卿ですね。アレクサンダー・フレデリック・ロウエル卿。そういうわけで要するに曇りひとつないお育ちの、シアワセなお坊ちゃまなんだな。そういう育ちだから、あの性格だとも言えるが...。
アレクの最大の趣味はヨットと狩猟、軍人ということもありますけど、だからもともと名射手です。念のために言っときますが、当然、長身の美形ね。でなきゃ、絵にならないもーん。ってゆーか、あやぼーはあちこちでも書いてますが、人間の美しさっていうのは内面に由来すると考えるひとで、だからその「美しい」っていうのも、アレクの性質とかから考えたら当然でしょ?
例え造型がどうでも内面が伴ってこない人物を、ウチの世界では「美形」とは言いません。
だからまあ、もちろん部下からも慕われてるし、友達も多いし、へんくつで人ぎらいなディでさえアレクのことは気に入ってる。ディはお母さんがロウエル家の縁続きなので、アレクとは親戚にあたります。年もそんなにちがわないし、だからコドモの頃からお互いよく知ってるのね。ディはお母さんが外国の貴族と結婚して生まれた子供なので、半分は他の国の血がまじってます。イメージとしてはその半分がフランスってとこでしょうか。ディの方は、これはもう生まれつきの芸術家ですから、性格はエキセントリックだし、繊細な感じの麗人で、うんと子供の頃はけっこう苛められやすいタイプって感じですね。たやすく人になじまないし。別に回りに何言われようが、本人は凡俗のたわごとなんざ意に介するような神経持っちゃいませんが、アレクはあの性格だから、自分の親友が(ネコっかぶりのディがどう思ってたかは別として、アレクは既にその頃からそう信じてたらしい)不当に悪く言われたりするのは我慢ならない。それでよくディの代わりにケンカしたりとかするんですけど、でもディも始めはアレクのそういう「いい子ちゃん」なとこが鼻持ちならないって思って嫌ってたんだ(と、ディが言っていた)。だけどアレクのあのまっすぐさは本モノなんで、逆にそれが分かってくると、そういう稀な性質ってのが好きなヒトなんで、アレクの本質を認めて今では大事にしてる。
さて、マーティの方ですが、そういう誰でも友達にしたいようなアレクから、そんなに想われてるって思うのは気分がいい。いいはずなんですが、でも、その後いろいろな所に連れてってくれたり、一緒に旅行したりしてるのに、どういうわけかアレクはそれ以上のアプローチをしてこない。いったい、なぜ?
マーティとしては、これはもしかしたら単に自分のカンちがいで、アレクのような正義漢には自分がああいう状態でいるのが可哀想で、あれはその同情心から出たことだったんじゃないのか、と思い始めるんです。もう既にアレクのことは相当好きなので、これは気に入らない。この状態は、断じて気に入らない。それで意地になってきて、絶対手に入れてやる、とヨコシマな決意をしたりしちゃいます。悪いコなマーティは、これまでも散々そのテのことはやってるんで、知ってる限りの方法で、でも表面的にはそれとなく、アレクの気を引こうとするんですがうまくいかない。それで、あろうことかディに相談しに行っちゃう。そのへんがマーティがまだコドモな所というか、当人もあとになって自分がどんなに、おマヌケだったか悟りますが、振り返って考えて自分があんなになったのは元々ディが、そう仕向けるように仕向けるようにしてたと気付いて怒ってるくせに、そんなこと忘れて頼っちゃうんだものな。まあ、ディが一番アレクをよく知ってるし、悪知恵にかけては並ぶものがないと思ってるせいもありましたが。
ディにしてみれば、これこそがアレクに最初にマーティのことで怒鳴り込まれた時から密かに意図してた展開だったんで、話を聞くなり面白くなってきたと喜ぶ。彼は自分のお気に入りのふたり、アレクとマーティをくっつけたいんです。なぜって、それはとても絵になるだろうなあ、と考えるだけで楽しくなってしまうから。それからアレクを道ならない恋に迷わせてやったら、どんなに面白いだろう、とか。なにしろこんなことでもなけりゃ、アレクはこの先も殆どまっすぐ波風立たない人生を歩んでいってしまうだろう。それでは、つまらないじゃないか。要するに、コイツは他人の人生狂わせて、波風立てんのが好きなわけ。だってその方が人間って成長するし悩まなかったら大成しないから、そうするとしょせんそこそこの人間で終わっちゃうじゃないですか。それがディは面白くないんです。ましてやマーティやアレクのように元々優れた資質を持ってるのに、平穏無事な人生を送って、退屈な人間になっちゃうなんてディには許せない。ディってのは画家です。でもキャンバスの平面上での創作だけで満足してられない、まあそのへんがこいつも天才なんですが、「造型を超えた芸術」、つまり「人間」という素材を通して、彼の理想とする美を創造し表現すると言いますか、他人の人格形成に影響してその美質を引き出し、彼にとって理想と思われる人間に作り変える。マイ・フェア・レディとか紫の上とかありますけど、ディのやりたいことはもっとある種、壮絶かもしれませんね。マーティにしたって彼の介入がなかったら、たぶん最終的にどこまで大成したかは、ちょっと疑問かも。
というわけで、この展開に喜んだ彼は、あれは実はこういういきさつだったんだよ、とコトの発端をマーティに教える。ただし、アレクが自分でも気付かずにマーティアが好きだったということを指摘したというくだりはハッキリ言わない。マーティにアレクの本当の気持ちを教えるのが得策か、そうじゃないかまだ判断しかねてるからです。だけどマーティはその話を聞いて、それどこじゃなくなる。なぜと言って、それはディがもう自分に執着を持ってないと、だから自分のことはアレクに任せたと思い込んじゃうからです。元々マーティがディの言いなりになってたのは彼が好きだったからで、だからこの事実を知って、アレクのことなんかすっかりそっちのけで落ち込むし、よけいディに対して怒る、というかすねる、というか...。
ちょっと話がとびますけど、私は人間の感情ってけっこう複合的なもので、単純には割り切れないものだと思ってんです。特に愛憎からむと嬉しいとか哀しいとか、一元的には表現できないような複合的なものになりませんか。そうならない単純なヒトも多いのかもしれませんが、私はそういう単純な感情しか持たない人間に興味がない。だから自分のお話の中のキャラも、おのずと錯綜した感情ってのを持つことになりますね。ま、だからマーティはアレクのことはアレクのこととして、この場合、ディのことの方がより大問題なわけ。その頃はまだ「好き」とは言っても、そんなに自分がアレクに執着してるとは思ってませんから、あれだけあつかましく自分の日常に踏み込んできて、あまつさえ自分が彼の言うことを聞きいれ、ましてやこんなに好意まで持ってやってるのに、そんなことにちっとも気付かず脳天気してるアレクが許せない、だ、か、ら、自分のものにして思い切り振り回してやろう。...ディのおしこみが良かったのか、元々そういう性格なのか、マーティはそういう結論に達してるんです。だからどちらかといえばまだその程度にしか思ってないアレクのことより、長いつきあいのディが自分にもう関心がないってことの方にキズついてんですね。
でもなかなかどーして、このディってのはそんなに単純じゃない。もちろんマーティアには今でも十分執着してるし、そもそもしてなきゃこんなに苛めない。マーティはもう自分が彼にとって何のイミもなくなってると思いこんで、元々どうして彼のところに来たのかもどうでもよくなって、めちゃくちゃ不機嫌になって帰ろうとする。でもディが引き止める。
「放してよ。あんたにとっては、おれはもう何の価値もないってことがよく分かったから。」
「アレクのことを聞きにきたんじゃなかったのか。」
「アレクはあんたみたいに酷いやつじゃないからね。あんたの悪知恵なんか借りようとしたおれがバカだった。」
「だけど、アレクが欲しいんだろう?」
「.....
」
「ぼくなら教えてやれるよ、どうすればアレクが落ちるか」
ふふふふふふふ。まあ、ココではダイジェストであらすじ書いてるだけですが、あやぼーの小説はねえ、まず一番のウリがダイアローグ部分なのだ。と言うのは、私はあんまり本なんか読まないコドモだったんだ。他人の考えよか自分の考えに執着するようなガキだったから、ヒトの書いたもんなんか読もうとしなかったの(ナマイキ...)。だから、お話を書くと言っても、お手本にするようなものをそもそも読んでない。純文なんてその頃からバカにしきってたしな。ましてや書き始めたのが7つとか8つの頃だし、土台、マネるような原型になるものすら知らない。だから、まず人物の会話を並べるってことを単純にやってたわけ。それはたぶん、その頃から私がストーリーを作るというより、好きな架空の人物と遊ぶのが好きだったからだと思う。後にはガードナーのメイスン・シリーズなんかよく読んでましたけど、あれも比較的、会話の多いミステリー小説だったし、もう少しするとマンガを描くようになったから、基本的にマンガで使うコトバって会話じゃないですか。だから長いこと、並行して書いてた小説も会話が中心で文章部分が殆どなかったの。まあ当然、特にそっちはヘタだったしね、当時は。そういう流れもあって、今でも会話書くのはすごい好きです。
でも会話部分だけじゃ、小説にならない。ましてやなにより後に、その「自分の考え」を小説のストーリーと合体させる必要が生じてきて、文章もおのずと書くようになりましたけど、私がマンガより小説に流れたのは何よりマンガじゃ、どうしてもその「自分の考え」を盛り込むのにきわめてスペース的限界がある。しかも前回書いたような理由でエピソードも多すぎる。そんなこんなで、結果として「マンガ」という枠組みでは入りきらなくなって来ちゃったんです。商用の小説でも普通は枠決まってるから、当然同じになっちゃいますね。でも小説では視覚的なディテールが表現できないというのもあるし、理想としてはイラストも自分で書いて、小説にくっつけるとかしたいんですけどね♪
さて話を戻しますが、それからいじわるディは、マーティアにアレクのことを教えてやるのと交換条件で、自分とヨリを戻しなさいと迫る。完全にイジメですね、このへん。マーティにしてみりゃ、じょーだんじゃないって申し出じゃないですか。だいたい自分があんなにディに執着して側にいたがった時は突き放しておいて、それもあって自分はああまでなって、それをなにを今更、ってなもんです。ましてや話が支離滅裂というか、だってアレクのことを教えるというのは、二人が出来上がるのに手をかすってことで、だけどウラじゃ自分とつきあえってことなんですから。始めはマーティア、あまりにもバカバカしいと言って怒るんですが、でもこれで今度はディがまだ自分に執着してるってことが分かる。よくよく考えてみるとアレクのことは知りたいし、ディのことも今だって好き。...
困りますね、このマーティアの性格。実は、この性格が後にまた災いすることになるんですが。
うーん、これからどうなるんでしょうねえ。それどころか、本編はいったいいつ始まるんでしょうか。だからこのへんは全部、背景設定の部分でしかないんですってば。しかし、ここまででも考えてみると十分、私のは「イケナイ発想」かも...。長くなっちゃったし、また続きは「その3」にしようかな。
その3へ
2005/8/23-8/24
★イケナイ発想★
こんなことを書くと、コイツいったい何考えて生きてんだとか思われそうですが、でもいいもん、書く。昨今、ココもわりと話題のパターンが決まっちゃってて同じようなことばっか書いてますから、たまには全然ちがう話もしないとね。
と、言うのはですね、以前からあやぼーがシュミで小説を書いているという話はたびたびしてると思います。でも、もうだいぶ長い間、まるっきり何も思い浮かばず、あらゆる書きかけのお話もストップしたままになってました。まあ、私はモノゴゴロついて字が書けるようになった頃から、お話をノートに書き付けるということをやってましたから、もちろんコドモの頃のは小説と言えるようなシロモノですらないですけど、ともかく「書く」ということに関するキャリアはやたら長いんです。で、その間に何度も、まるっきり何も書けねー、という時期がありまして、それでもいつもいつのまにかまた書き出す、ということの繰り返しで、そのたびにある程度は内容とか文章力のクオリティが徐々に上がっていって、いちおー、今では人前に出しても恥ずかしくはあるまい、というところにまではなってます。(どうせ、自画自賛の自己満足さ...。)
ともあれそういうコトを繰り返してるので、今回も長いこと何も思い浮かばないけどそれでヤメてしまったとかではなく、そのうち何か話が走り始めるだろー、という希望的観測のもとに、長いこと何も書かずにいたんです。その間は、ご覧のように、Ayapoo
とか、その他のサイトのページなんかでダ文を書き散らしてたわけですが、いつもいつも「小説書きたいなー」とは思ってました。アレはもう、アイデアが出て話が走り始めると、書くのが面白くって仕方ないもんで。
まあ、そういうワガママなヤツなんで、とてもじゃないけどプロになって、いつまでに、こんな話を、何枚で書いて下さい、なんてコトに対応する才能は絶無。それで小説家になろうなんて、ユメユメ思わなかったのでした。だからあくまで、「シュミ」なんです。
で、それがつい一昨日くらい、昔のノートをひっぱり出して来て、いずれ設定を焼きなおして書き直したいなあと思ってた小説のひとつをつらつらつらと読んるでと、おや?
昨今珍しく書きかけの続きの話が走り出してしまった。おお、アレはこういう展開になるのか、なるほどなるほど面白いぞ、てなもんで、無責任な話ですが私の場合、小説ってのは考え考え書くもんじゃなく、ストーリーが勝手にヴィジュアルでぶっとんでく、それを文字に書き起こすってのが一番近いと思います。もう、それが始まると、殆ど自動書記状態ですね。
さてそのモンダイの、先が見え始めたお話ですが、これは記録によると書き出したのが1980年6月、かれこれ25年前とゆー、オソロシイほど大昔のことです。(当時私が何才だったかは、ご想像にお任せする。)
その後、例によって何年かごとにぼつぼつ話が進んで行ってたんですが、コレは、というかコレも、というか、設定があまりにも大掛かりだったので(私の話はそんなんばっかなんだ)、当時コドモの私の知識では手におえず(無謀と言った方が早い)、けっこういーかげんなとこがいっぱいあったために、今、多少は分別のあるオトナになった目で見れば、そのへんをクリアするまで完成することはとても不可能だったなとゆーシロモノなのであった。でも、この話、というより、登場人物がすっごい好きなんで、なんとかしなくちゃー、と思いつづけてはいたんですけど、設定面でどうしてもビシっと決まるバックグラウンドを用意できず、おのずと止まったままになっていた、と、まあそんな話です。それが一昨日、おお、どうやらコレでいけそうだぞ、みたいな背景が定まり(25年ぶりにか、やっぱりプロにはなれんな)、喜んでたらついでにストーリーまで流れ出した。ま、それはいいんですが...。実はココからが本題なんです。
私の小説って一見してエンタテイメントの他愛ないラヴ・ストーリーかなと、たぶんたいていのヒトはそう思って大して気にも止めないと思うんですけど、そのバックにもうひとつ、ヒト知れず動いている野心というものがありまして、それが設定に影響してくる、つまり話のフォーカスは通常の小説と同じように登場人物の動きに合っているようでいて、しかし!!
作者のヨコシマな意図はそのウラの設定の方と連動しているという、どうにもヤヤコシイ構造を持ってるんです。考えてみると、コレってけっこう誰かさんの音楽の作り方と似てるかもしんない...。
しかし今回の場合、設定はいいんです、設定は。そのへんはどうせ国際情勢がどーのこーの、哲学がどーのこーのって部分ですから、ふつー、あんまり読むヒトの気を引く部分ではない。やっぱり小説ってば、ストーリーと登場人物よね。ところがこのストーリーと登場人物ってのが私の場合、どうも不道徳な傾向にあるというか、それこそホントにマトモなラヴ・ストーリーなんて書けないのな♪
一番マトモなので30才の小説家と15才の少女、でもこの主人公の小説家の方が、実は美しい叔母さん(彼の父親の妹)と14歳の頃から危ない関係続いてたりとか、血のつながりはないけど長年育ててくれた養父と相思相愛の天才少女がいたりとか(もちろん、養父の方には奥さんがいる、つまり彼女にとって養母。でも彼女はこの養母のことも好き。おかげで道ならない恋だけならまだしも、家庭崩壊だけは絶対に回避したいもんだから、ひとりで苦労することになる。オマケにこの養父の方は根っから不道徳なんでもちろんアテにならない。ちなみに彼と彼女のトシの差は25才。)、ウチってわりとそんなんばっかりなんですね。だからそういう危ない不道徳な設定の好きな私が、しかもオスカー・ワイルドの信奉者である私が、そりゃ当然、書きますよ、昨今のコトバで言えば耽美小説系の話だって。ただ、私はそのコトバは全然好きじゃないし、そもそも私がそういう話を書き始めた頃にはそんなコトバ、影も形もなかったんだ。だから実際は、まるっきり別ものですけどね。
そのへん話すと、けっこう、だから栗本薫さんの影響があるのかなと思われちゃうかもしれませんけど、それは全然ちがってて、どちらかというと初期の頃の一条ゆかりさんの方がまだ影響されてると思います。最近の一条さんの話はきわめて健全になっちゃってますけど、昔はもうそれこそ近親相姦だの同性愛だの、そんなのアタリマエな世界で、ただ一条さんが書くとそういうドロドロしちゃいそうな話が、実にすいっとオシャレに仕上がっちゃうんで、そのへんがすっごい好きなとこでしたね。
まあだから、私の小説もそういう題材が入って来るわりには全然明るいというか、純文系の暗い愛憎ドロドロみたいな話にはまるっきりならないんです。これはもう私の生まれつきの、たいよーのように脳天気な性格のタマモノだと思います。後ろ向きなのも暗いのも大キライなんだもん。そしてこの設定に、こむずかしい背景が絡んでくるわけですから、それはもう世の中に似たモノなんてどこにもないってことだけはハッキリしてます。それが良いか悪いかは知りませんが。
で、ともあれ日常そういうヘンなことばっか考えて喜んでるんで、そういう話をすると健全な精神をお持ちの皆さまから、「コイツいったい何考えて生きてんだ」と思われてしまうかもしれないな、と言ってたわけです。私の名誉のためにつけ加えておきますが、本人はそういうことを考えて喜ぶ他は全くふつーです。(弱冠、逆ロリータ系の傾向が見受けられますが、そんなのダニエル・スティールだってそうだもん。大した問題ではない。)
しかし生まれつきの嗜好というものはいかんともしがたく、更にそのイケナイ発想が進み、それで今度考えついたのが、ってゆーか、そもそもこの話にはその傾向はあったんだ。うかつにも気付かなかっただけで。(以下、他に何もすることがないほどヒマか、興味がおありの方だけ、お読み下さい。)
この話の主人公っていうのはマーティア・メイとアリシアという二人の天才少年です(ちなみに私は「天才」と「美形」と「富豪」しか書かない)。女のコみたいな名前ですけど、二人ともまちがいなく男のコです。で、この話の始めの方では確かそれぞれ13才と10才だったはず(忘れてんだよ、なにしろ25年前に作ったんだ)。でも天才少年なので、どちらも科学者だったりします。
ウチの話ってのは殆ど全てがダブル・キャストで、主人公が二人いるみたいなものが多いです。この話の場合も、一見アリシアの方が主人公なのかなって感じなんですけど(それっぽいキャラだし)、実はマーティの方がわりとメイン。(私もアリシアが主人公かなと思って書いてたんですけど、脇役だったはずのマーティがいつのまにかシャシャり出て来た。このへんに、いきあたりばったりで何も考えていない作者のいい加減さが伺われる)。
話の展開上、マーティの方の卓越した哲学的資質がその背景とすごく絡んでて大事なとこなんで、このコがいないとそもそも話は成立しない。そうすると、やはりこっちが主人公なんだろうか?
未だによく分からないが...。しかし一方ではアリシアがいなかったら、マーティは動かない。動かないということは、話が先に進まない。だからやっぱりダブル・キャストってことになるんだろう。いや、もしかするとこの話は最終的にはトリプル・キャストってことになるかもしれないんですけど...。
さて、どんな少年たちかというと、さっきも書いたように私は「天才」と「美形」と「富豪」しか書きませんので、当然、私好みの美しい少年、ということになります。アリシアの方はブロンドの巻き毛にブルー・アイズ、マーティの方は素直な黒髪に黒い瞳(このへんがやっぱり定番でしょう、って、何の?)。
どちらかと言えばアリシアの方が明るい性格で、回りのみんなから順当に可愛がられるタイプです。だから「主人公」タイプだと思ったんだけどな、そもそもは。しかしけっこう根はしたたかで、小悪魔的なところがある。始めは純真を絵に書いたような少年なんだけど、どんどん自分でも知らなかったような面が出て来て、マーティに振り回されてるようでいて、実は振り回してるのはこっちの方。
マーティの方は決して暗い性格じゃないんですが、全人的天才(「賢者」ともゆー)の常で、ふつー常人が覗き込まないような不条理だの哲学的深遠だのと生まれつきおつきあいしているから、どうかすると理屈っぽい。科学者として天才的ってのは彼にとってはほんの一部で、メインは詩人(あやぼーワールドではコレははずせない)、哲学者、政治家、そういうのが全部混在した資質と、啓蒙の砦としての芸術全般に対する理解と深い造詣の基盤を生まれつき持ってるような、それこそもう大天才中の大天才なわけです。一見こっちの方が悪いコのようでいて実は一番のモラリスト。だからアリシアに振り回される。
こんなのをメイン・キャラにしてしまった場合、とてもじゃないけど話をワク組みが定まった現代に持ってきたんじゃ身動き出来なくなる。そもそも歴史をどうやって軌道修正するかってのがメイン・テーマの話なんだから、発想の発端で既にそんなことは考えもしてなくて、当然、SF的ですけど、ある程度未来か、まるっきりの想像上の世界を作って、そこに現代を詩的に重ねるという手法を取らざるをえませんね。もちろんそんなこと、書き始めた時の私が論理的に考えて選択したわけじゃありません(コドモにそんな知恵はない)。単に始めからそういう設定で書き始めてたんで、そのまま行ってるだけです。
話がこの二人だけで進むんだったら、まあせいぜい少なくともストーリー上は耽美系の話で済んだのかもしれないんですが、なにしろ二人とも天才なもんで、コドモなわりにはけっこう幼い頃からあれこれしなくていい苦労をさせられてる。ちなみに、どっちも両親はいません。マーティの方が生まれが早いですから、彼の方が先に苦労させられてて、そのおかげで一時期すっごいグレてたことがあったんです。グレてたって言ったって、しつこいようですが天才ですから、そのへんの不良少年のようなわけにはゆきません。
彼の育ての親っていうのも科学者(バークレイ博士)で、父親代わりにマーティを育てた優しいオジさまなんですけど、天才ってのはコレでけっこう育てるのが大変なんです。なにしろ認識世界が何もかも回りの人間とちがっちゃうわけでしょ?
そこから来る疎外感ってのは凄いもんで、だから私は天才の教育っていうのは学問教育なんかどーでもいいから(どうせそんなの放っといたって勝手に覚える。教えないと覚えないのは凡人)、最初の人格育成の方を重視する必要があると思うんですよ。そうしないと、自分の周囲との接点の取り方を覚える前に、人格が捻じ曲がりかねない危険性がありますからね。そうなっちゃうと本人も可哀想だし、根性曲がった天才なんてそれこそ手におえんでしょう?
で、マーティの場合も、そういう周囲からの疎外感や、自分の認識体系や速度が一般的なものと合致しないこととか、その他にもいろいろあって自暴自棄になっちゃってた時期がある、と。バークレイ博士はもともと名士の家柄の出なので、彼のつきあいってのは上流の有閑階級が多い(このへん、ビンボー人なんか書いたって面白くもなんともないとゆー、単なる作者の好みにもとづいている。深いイミがあって作った設定ではないが、結局それでないと話が展開しないということが後になって分かった)。おのずとマーティもそういう人たちの間で育っていて、貴族だの芸術家だのって知り合いが多かったんだな。ゆえに、悪い遊びを教えたがるオトナが多かったってことだ(よし、つながったぞ)。なにしろ絶世の美少年ですからね。彼をモデルにしたがる画家だの、あちこち連れて歩きたがる有閑夫人だの、そういうのがいくらでも回りにいて、そこへ持って来て当人は親父代わりのバークレイ博士に反抗的になってた時で、彼を困らせるようなことばっかりしてやろうとしてたわけ。なんでそんなことになったかってのには、わりと決定的な原因ってあるんですけど、その話はちょっとおいとく。
この回りのオトナたちってのは悪気はないんだけど、マーティが可愛いのでかまいたがってんのよね、要するに。だから大人の世界に引っ張り込んで、コドモには悪いことばっかり無責任に教える。芸術家にとってはマーティの資質っていうのはミューズみたいなもんですから、ってゆーよか、まんまそうなんで、それはもういろんなイミで惚れこまれちゃうし、芸術家にモラルなんて期待してもそりゃ無理ってもんだ。そうなると当然タダでは済まない。そんなこんなで夜遊びはする、無節操に恋人、愛人は作る、浮名は流す、別れるの別れないので騒動は起こす、挙句の果てに危うくジャンキーにはなりかかる、とにかくもうバカなマネだけは13才までにひととおり、やりつくしちゃう。そこへ。
バークレイ博士の言うことなんか聞きゃしねーし、回りの大人はそもそも連中が悪いこと教えてんだからアテになんかなりゃしねーし、このまま放っときゃ遠からず破滅ってとこまでとことん行っちゃってるとこへ、現れるんですねえ、助けてくれるヒトが。やっぱり小説なんだし、そのまま破滅されちゃ、話終わっちゃいますからね。そうなっちゃ困るんで、この不道徳なオトナたちとつきあいはあるけど、そこまで背徳的じゃなく、わりとスクエアな性格の、しかもマーティのことが気にかかる程度には知り合い、みたいな人物。これも例によって何も考えてなかったんですが、書いてりゃそのうち成り行きで出て来るもんで、それがアレク・ロウエル、貴族の子息だけど海軍士官、普段は仕事で船に乗ってることが多いって青年です。この人物の背景設定も全然考えたもんじゃない。単に、出て来たんでそのまま使ったんですが、まあ貴族だからその周辺とつきあいはあるわね、でもって何も不自由がない有閑階級の身の上で、あえてそういう仕事をしてるってのがけっこうスクエアな性格を物語っている。普段は船に乗ってるから、マーティの回りの騒動とも、それほど直接的な関わりはない。ただ、マーティの恋人の一人である画家のディとは親友で、長いつきあいがあるので、彼のアトリエでマーティと会ったこともある、とまあそんな感じです。よしよし、不自然じゃないぞ(そもそも話を書いてる時に、そこまで考えてる余裕はないが...)。
誓ってアレクは元来至極マトモなキャラで、従って長いこと自分がどうしてマーティのことを気にかけてるのか自分でも気がついてない。ただ、良くないウワサを耳にするたびにどーにもこーにも気にかかって仕方がなく、ディの恋人だということは知ってるので、マーティがクスリづけになってんのを見かねて、いーかげんになんとかしてやれ、と詰め寄る。でもこのディってのもエキセントリックな性格してて、「堕ちるなら、どこまでも堕ちていい、そういうマーティアを美しいと思うし、愛していられるから」とのたまう。だいたいそもそもこの男がマーティの堕落の発端なんだ。コイツはマーティをモデルにしてセンセーショナルな作品を数多く生み出すんだが、自分が納得のいく絵を描くために純真な少年のままのマーティでは飽き足らず、誘惑して背徳の道に堕とす。ところがそれで愛情を注いで大事にしてやればいいものを、わざと突き放すようなことばっかり言ったりやったりして、ただでさえ自暴自棄になってるマーティをどんどん追い詰めるようなことをするんだな。なんでって、それは当然、そうなればなるほどマーティがキレイだからですよ、言ってる通り。うーん、このへん「ドリアン・グレイの肖像」だな。いや、全然ストーリーは違うんですけど、この話にヘンリー・ウォットン卿ってのが出て来て、敬虔で純真な青年であるドリアンを堕落させるって展開があるんです。この話は、後に確かオーガスト・ダーレスがパクって、所謂クトゥルー神話に応用した作品があったはず。「破風の窓」って作品じゃなかったかと思いますが、パクり方が見事で、私はラヴクラフト系は全然興味ないんですけど、この話はすごく面白かったという印象がありますね。ちなみに「ドリアン・グレイ」の原作は、言わずと知れたオスカー・ワイルド。
話を元に戻しますが、アレクってのはスクエアで実直な青年ですから、このディの答えはまるっきり理解出来ず、言われたことが信じられなくてくってかかる。根性わるのディには、当然アレクがここまでマジで怒る理由は始めから見えてるんで、まだ自分で気がついてないアレクに、にっこり笑って「きみはマーティアに恋しているんだよ」と意地悪く指摘する。いきなり言われてアレクは唖然として言葉もない。それへ「それならそれで構わない。取り合うつもりはまるでない。」
私はこのディってキャラもけっこう好きでね。こう言い放っちゃうからといって、マーティのことをなんとも思ってないってわけじゃないんですよ。単に、面白がってるだけ。彼はアレクもマーティも気に入ってるんで(こういう男は気に入らない者には声もかけない)、こうやるとどーなるかなー、みたいな、結果が見てみたいだけなのね。案の定、アレクってのは基本的に単細胞ですから、このディの態度にアタマに来て、「だったら、おれがマーティアにどう手を出しても、文句は言うなよ!」って、言うだけ言って怒りまくって退場。
で、ココからこの二人の関係が始まるんですが、とにかくマーティをとっつかまえて、クスリだけでもやめさせないと、とんでもないことになる。アレクは当然そう思ったんで、その通りマーティを捕まえてきて、自分の親父の別邸に閉じ込め、クスリが抜けるまで側にいてやる。でもそんなのマーティにとってはタダのおせっかいだから、喜ぶどころか、暴れるわ、わめくわ、罵るわ、オマケにクスリで気がおかしくなってるから、それこそれ正気の沙汰じゃない。マトモにやってちゃアレクの方がケガしますから、ひっぱたいてでも、殴ってでもおとなしくさせなきゃ仕方がないので、当然クスリが抜けるまでものすごい騒ぎ。それでやっと正気に戻ったと思ってホッとして放しても、アレクが仕事で出かけて、しばらくして休暇に戻って来る頃にはまた元に戻ってる。もうそれこそ戦争で、アレクが追いかければ追いかけるほどマーティは意地になって逃げ回る。それが延々、延々、繰り返されるわけ。それでもアレクは諦めないし、ヤメない。
まあ結局、彼のスクエアで誠実、こうと思ったらとことんやり通すって実直な性質が、マーティを正気に戻すんですよね。やっぱり、そういうことじゃないですか?
そこまで想われてるって分かったら、そりゃあマーティアもなつくでしょ。そして一旦なついたら、今度はアレクは特別ってことになる。ただ、マーティアは意地っぱりなので、もうすっかりなついてるくせに、そうとは言わない。内心、アレクにしか興味がなくなってるのに、面と向かっては全然そんなことないって顔してる。アレクの方はマーティが彼を避けなくなったので、それで満足とは言わないまでも、とりあえずはそれで良しとしておこう、みたいな感じで、「特別仲のいい友達」という状態がその後ずっとつづいている。そのへんからマーティは元々の明るさを取り戻すんですけどね。
書いてて疲れましたが、なんか、ここまでだけでもどうかすると小説ひとつ書けちゃいそうだな。でも実はこんなの本編に差し掛かってさえ、いないんだー。うー。だから、やたら長いんだって、私の小説は。あやぼーとしては、久しぶりに通しで話を振り返ってみたかっただけなんで書いてるんですが、もし、ここまで読み進んで来られた方が万一あったら、どうもお疲れさまでした。ありがとうございます。(合掌)
なんで長くなるかってゆーと、私のは人物が動くことでストーリーになっていくからだと思います。ふつう、小説というのはストーリーがあって、と言うより、小説を書こうとする時には、普通の方法ではストーリーを考える所から入るでしょう?
そしてそれに適した人物が設定されるという方向で書かれるのが一般的だと思う。ミステリーなんか、わりとそうですよね。ウチは逆。ここまでのところは、単にマーティやアレクというキャラの人物設定をやってるだけで、それが出来るとあとは勝手にキャラ本人が動くからストーリーも動く。ひとりひとり、現実の人間と変わりがないので、中心的な本編とは何の関係もないエピソードも山ほど出て来る。私はお話に出て来る連中と遊んでたいだけなんで、そういうのも全部書く。おのずと長くなる、というわけです。とてもじゃないけど、スペース区切られてなんてやってらんないですよ。それに、そういう細かいエピソードの集積が、ひとつの「お話の世界」をより鮮明にしてくわけだし、その人物の、その人格を存在させしめるためには、過去における瑣末なエピソードが蓄積する必要もあるわけです。
それはそれとして、このへんまでだとまだ何が「イケナイ発想」なのか全然説明してないですね。まだまだ続きがあるんですが、今日は疲れたので「続く」ということにします。次回更新で、「その2」をやります。ここまで読んでしまわれた方、次回もおつきあい下さればうれしいです。
その2へ
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