-至福の園-

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★マーティア(マーティア・メイ・ルーク)...不世出の大天才。最初は育ての親のマリオ・バークレイ博士の影響で物理学を修めるが、後に政治、経済、哲学、心理学など、二十才までに1ダースを超える博士号を持つに至る。IQは軽くover 300、現IGD主席経営顧問。他に多数の役職を兼任している。

見事な黒髪と黒曜石の瞳の持ち主で、幼い頃にはディの代表作「天使」シリーズのモデルを勤めたほど神秘的な美貌に恵まれる。当時は僅か11才でディの恋人でもあったが、後にディの陰謀によりアレクに譲られた。18才の時、正式にバークレイ博士の養子となっているので、現在の本名はマーティア・メイ・バークレイだが、アリシアを含めると「バークレイ博士」が3人になってしまうので、表向きは既に広く知られていたルーク姓のまま通している。

 

★アリシア(アリシア・バークレイ) ... 8才で物理学博士号を取った、マーティアに匹敵する大天才。マーティア同様、現在では多岐に渡る博士号を持つ。現IGD副主席経営顧問。他にも山ほど肩書きを背負わされていて、IGDにおいてはアレク、マーティアに次ぐ権限を持つ。

ハニー・ブロンドとすみれ色の瞳で、どこからどう見ても外見は虫も殺さないような優しげな雰囲気だが、性格は強情で芯が強い。12才の頃、マーティアと一緒にディの「二人の天使」シリーズのモデルを勤めたこともあり、当時は全く天使そのもののような可憐で可愛らしい少年だった。12才でマリオ・バークレイ博士に引き取られ、15才でマーティアと一緒に養子となる。11才で出会ったそもそもの始めからマーティアに夢中だが、それを知っていて割りこんだディともなりゆきでつきあっている。

 

★ディ(デュアン・クリスタル・モルガーナ・ド・シャンタン)...クランドル屈指の天才画家。その類まれな美貌とプレイボーイぶりでもつとに有名。現モルガーナ伯爵でもある。母はベアトリス・モルガーナ、父はロベール・ド・シャンタン伯爵。両親が結婚した時、父は既に自家とその爵位を継いでいたので他家に入ることが出来ず、またベアトリスは先代モルガーナ伯の一人娘だったため、ディが一世代飛ばして祖父からモルガーナ家を継ぐことになった。僭越ながら作者の好みで彼のイメージ・モデルはアルフレッド・ダグラス卿。結婚はしていないが実は3児の父で、その母親は3人とも全て違う。現在、子供たちの母親の一人であるカトリーヌ・ドラジェから引き取って側に置いているデュアンは、彼の三番目の子供。デュアンという名前は同じだが、ディはDiane、息子のデュアンはDuaneと綴る。ディの綴りはシャンタン伯の好みで付けたもので、クランドルでは変則的なもの。「ディ」という愛称はこの特殊な綴りからくる。

 

★アレク(アレクサンダー・フレデリック・ロウエル)... 世界的コングロマリットInternational Grand Distribution(国際総合流通)の設立者であり、現オーナー。アルフレッド・ロウエル侯爵の三男で元海軍士官でもあった。除隊前の最終階級は大佐。ディとは親戚筋にあたり、ごく幼い頃から親友でもある。ディが絶世の美女だった母親ゆずりの繊細な美貌を誇る一方、アレクは太陽神の如き美丈夫で、もちろん長身のハンサム・ボーイ。クランドル人標準のブロンドと、晴天の空の抜けるように青く明るい色の瞳を持つ。最大の趣味はヨットと狩猟。かつて海軍にいたのも海を愛するあまりである。大侯爵家の子息にしては貴族社会の形式主義と堅苦しさが何より苦手で、性格はストレートで潔い。マーティアが12才の頃、コカイン中毒でボロボロになっていたところを薬をやめさせ、まっとうな道に引き戻したのも彼だ。それをきっかけに親しくなり、ディと別れさせて(実はディの陰謀で)マーティアを手に入れて以来、溺愛している。IGDのオーナーとしてセレブリティ中のセレブリティなので何度もゴシップ誌にでたらめの結婚話を流されたりしているが、本人はマーティア以外、視界に入っていない。

 

★デュアン(デュアン・ドラジェ)...ディの三番目の息子。episode1の頃は11〜12才くらい。モルガーナ家の後継者としてディに引き取られてからはデュアン・モルガーナになるわけだが、将来的に画家、イラストレーターを目指している関係上、あまりにも有名な父親と同じ名前になってしまうのは不都合ということで、モルガーナ家に入ってからも筆名として母方のドラジェ姓を使っている。母親が人気イラストレーターであることもあって、彼女の担当編集者に作品を気に入られ、それは雑誌などにも使われて、この頃には既にデュアン・ドラジェの名前で一部に知られてもいた。

子供の頃のディに生き写しと少年の頃のディを知る皆が言うほどよく似ているが、ディの瞳が母ベアトリスゆずりの濃い蒼である一方、デュアンはカトリーヌゆずりのエメラルド色の瞳という点が唯一違う。髪は父譲りのブロンド。母もブロンドだが、色調は微妙にディの方に近く、髪質もディの絹糸のような滑らかさがそのままだ。自分の父と知る前からディの熱狂的ファンで、10才近くになるまで離れて育ったこともあってか、一緒に暮らすようになってから実の父親に本気で恋してしまうという災難に見舞われる。このオープン・アンド・シャット状態にも関わらず、ストレートでくじけない性格のデュアンはディに告白。結局、現在ではディの恋人の一人になっている(もちろん一応は秘密)。最大のライバルはアリシアで、アリシアにマーティアがいると知ってからは真正面から宣戦布告。いつか自分がディの一番の恋人になるんだと根性を据えている。

 

名称、用語等

★クランドル...作者の好みで作った実在しない架空の国名。敢えてモデルはと言えば英国だが、それはあくまでイメージ的なものと受け取ってもらいたい。

 

★歴史の軌道修正 ... 歴史とは一定の軌道に乗って爆走している列車のようなものであり、その推進エネルギーはあまりにも巨大であるので、一気にその流れを止めたり、修正したりすることは控えめに言ってもほぼ不可能に近い。しかし、現在の世界に内在する様々な問題は、過去における偶発的、または人為的要因によるものであり、従ってそれらの問題を将来的に解消するためには、現在においてそれらの要因を取り除き、または縮小の方向へ向け、それによって現時点で予測される方向ではなく、理想的な方向に向くよう意図的にプログラムを組み直す必要がある。

例えばそのひとつが「経済の軌道修正」。18-19世紀における産業革命以降、工業化とも言われるように経済は主に第2次産業を主体として発展して来たが、これがそれまでに比べて爆発的に環境を悪化させ、現代において深刻な環境問題の主たる要因となった。また、肥大化した経済を存続させるために戦争というカンフル剤を打ち続けなければならないという非人道的な側面をも生んでいる。しかし現代においては既に第3、4、5次産業が台頭してきており、これを世界経済の主体とすれば「殺す経済」ではなく「生かす経済」を実現することが可能になる。またこれは、環境問題の改善をも視野に入れた修正となりうる。他に「宗教概念の修正」、「国家概念の修正」、「思想史の修正」など、マーティア・メイは歴史の軌道を修正するためには、人類世界を構成するあらゆる要素について科学的に徹底して分析し、相互の関連性に基づいて大局的かつ総合的な観点から問題点を修正することが必須であると提唱している。これはIGDの「世界連邦構想」の基盤でもある。またマーティアは、世界史は無知に立脚した稚拙で無責任なヒューマニズムによっては決して変革されえないとも指摘する。

 

<<まー、アリ、アレク、ディの関係について>>

まー、アリ、アレクとまー、アリ、ディという三角関係が、マーティアとアリシアを中心点にしてダブルトライアングルになっているわけだが、そこへ現在ではデュアンが割り込んで行っていることになる。しかし、ディがアリシアを特別扱いしながらも、アリにはまーがいるのを良いことにあちこちで遊び歩いていたことは三人の子供たちの存在からも明白。

アリシアは幼い頃こそマーティアとアレクの間に割り込んだことでアレクに悪いという気持ちと、マーティアを独り占めしたいという気持ちの間で右往左往していたが、後にはアリも含めてこの複雑な関係について悩んでいる者は4人のうち1人もいない(全ての元凶であるディに至っては、一度たりとも悩んだことすらない)。それはお互い、親友であったり、元・恋人だったりするので他の3人についてよく知っており、それなりに互いに認め合っていたり、必要としているせいもある。それに加えて、全員が仕事だの、芸術だの、哲学だの、自分の信念に人生かけてたりするので、恋愛問題ぐらいでごちゃごちゃ悩んでいるヒマがないのも事実。

世の中には、このテの関係を扱う小説ジャンルが存在するようだが、作者がこれを書き始めたのは1980年6月のことで、当時は一般的で明確なジャンルとしては成立していなかった。作者も殆ど読んでいないし、自分の小説については「新ロマン主義(唯美主義、真美主義ともゆー)」という独自のカテゴリーを打ち立てているので、全くの無関係である。また日本純文学等の、芸術史から見て傍系にも当たらない有名無実な前時代の遺物からも一滴の血も引いていない。作者の概念付けでは、哲学絶無、もしくはあっても低レベルなものは文学の名に値しない。ただし、その判断はジャンルではなく作品ごとになされるべきである。

以上、予めご承知おきの上、お読み下さいまし(♪)。

 

※人物、用語等の解説は、折に触れて修正、加筆します。

 

2008.3.3.-3.4.