前章までは、基本的な「能動態 (〜が...する)」を過去形にしたり未来形にしたりしたわけですが、反対に「〜が...される」という「受動態(受け身形)」があります。受動態の基本形は「The work was done by Mary.」のようにbyを伴う形て教えられますが、by以下が省略されたり、動詞によって特定の前置詞が決まっていたりする場合もあります。 また、英語には「surprise(〜をびっくりさせる)」や「interest(〜に興味を持たせる)」のように、すんなり能動態で使うと意味が正反対になってしまうような単語があります。例えば「I was surprised.(びっくりした。)」などは全く日常的な表現ですが、受動態になっているでしょう? 「I surprised.」という能動態は本来成立せず、 「I surprised him.(私は彼を驚かせた。)」のように、必ず動作の対象が後に続く形になります。自分が驚いたと言いたい時は、厳密な日本語にすると「私は驚かされた」という形にしなければならず、従って受動態を用いることになるわけですが、自然な日本語にすると「驚いた」なので能動態として英訳してしまいがちですね。この章では、そういった特殊な受動態も含めて、解説してゆきましょう。
1. 受動態の基本形 受動態の基本は「主語 + be動詞 + 過去分詞」です。過去分詞は、規則変化する動詞は過去形と同じ、不規則変化するものは動詞ごとに形が決まっています。(動詞の変化については、基礎確認篇★その5. 過去形を参照して下さい。) ex1) Her husband helps Mary when she cooks. (メアリが料理を作る時には、彼女の夫が手伝います。) ・・・ 能動態 ⇔ Mary is helped by her husband when she cooks. (メアリは料理を作る時には、夫の手伝いが得られます。)・・・ 受動態 →(過去) Mary was helped by her husband when she cooked. (メアリは料理を作った時には、夫の手伝いが得られました。) →(未来) Mary will be helped by her husband when she cooks. (メアリは料理を作る時には、夫の手伝いが得られるでしょう。) ※時や条件を表す副詞節の中では、未来のことであっても未来形の代わりに現在形を用います。
ex2) The police keep him in jail. (警察は彼を留置している。) ・・・ 能動態 ⇔ He is kept in jail by the police. (彼は警察に留置されている。) ・・・ 受動態 →(過去) He was kept in jail by the police. (彼は警察に留置されていた。) →(未来) He will be kept in jail by the police. (彼は警察に留置されるだろう。) ※この場合、keep は状態動詞として用いられているので進行形にはしません。
ex3) 進行形の受動態 He is washing the car. (彼は洗車している。) ・・・ 能動態 ⇔ The car is being washed by him. (そのクルマは彼に洗車されている。) ・・・ 受動態 →(過去) The car was being washed by him. (そのクルマは彼に洗車されていた。) ※受動態の未来形は一般に進行形にはしません。例文の場合、The car will be washed by him.となります。
ex4) 完了形の受動態 She has finished the work. (彼女はその仕事を完了した。) ・・・ 能動態 ⇔The work has been finished by her. (その仕事は彼女によって(今しがた)完了された。) ・・・ 受動態 →(過去) The work had been finished by her. (その仕事は彼女によって(過去に)完了された。) →(未来) The work will have been finished by her. (その仕事は彼女によって完了されるだろう。) ※完了形の基本的な形について詳しくは、基礎確認篇★その9.完了形 1/ 2/ 3を参照して下さい。
2. 受動態の否定形、疑問形 否定や疑問の形は能動態の場合と変わりません。be動詞、もしくはwillにnot を付けたり、文頭に出したりすれば良いわけです。 @)否定形 Mary is helped by her husband when she cooks. →(現在) Mary is not helped by her husband when she cooks. →(過去) Mary was not helped by her husband when she cooked. →(未来) Mary will not (=won't) be helped by her husband when she cooks.
A)疑問形 He is kept in jail by the police. →(現在) Is he kept in jail by the police? →(過去) was he kept in jail by the police? →(未来) Will he be kept in jail by the police?
1.2.をまとめると、以下のようになります。規則的な変化ですので、まとめて覚えておきましょう。
3. 助動詞を伴う受動態 受動態で未来形を作る場合を見ても分かると思いますが、他の助動詞を使う時も能動態と変わりありません。助動詞にbeを続ければ良いだけです。 The stars can be seen. (星が見られるだろう。) The boy must be kept by his parents. (その少年は彼の両親に養われるべきだ。) The work has to be done by him.(その仕事は、彼によってなされねばならない。)
4. by 以下の省略 その行為を為した者を特に明示する必要がない時や、they、people、we、you などが特定の人物や集団ではなく、不特定一般の代用として用いられている時は、by以下を省略してもかまいません。 They use English in America. → English is used in America. ・・・ by them を省略
5.受動態型の能動態 形は受動態ですが、意味的には能動態になるものがあります。 I was surprised. (私は驚いた。) I was born in Tokyo. (私は東京で生まれた。) She was pleased by his words. (彼女は彼の言葉に喜んだ。) I'm interested in his work. (私は彼の作品に興味がある。) このような現象が起こるのは、単語単体が持っている本来の意味と関連します。例えば surprise は「びっくりさせる」、please は「喜ばせる」のように、これらの単語が能動態として用いられた時に主語として取る対象が、受動態の行為者(by以下の部分)となっているためで、逆にこの行為の対象となる相手が主語となる時には受動態にしなければならないということが起こるのですね。具体的に言うと、 He surprised me. (彼は私を驚かせた。) = I was surprised by him.(私は彼に驚かされた。) このように行為者が明記されている場合は受動態として理解しやすいのですが、I'm surprised. (驚いた)やI'm pleased.(喜んだ) のように何によって驚いたり喜んだりしたのかとは関係なく能動態的に使う場合もあって、これらに慣用的な表現として馴染んでいないと「能動的な意味なのになぜ受動態?」と悩んでしまうことになります。
6.能動態型の受動態 5.とは逆に形が能動態なのに、受動態的な意味を持つものもあります。 This book sells well. (この本はよく売れる。) This play reads better than it acts. (この劇は上演されるよりも読まれる方がよい。) 5.6.ともに以上は代表的な例ですが、こういった用法はいっぺんに全部を覚えこもうとしても無理なので、沢山の英文に触れて感覚的な知識として蓄えてゆきましょう。
7.by以外の前置詞を伴うもの Many people are interested in English. (沢山の人が英語に興味を持っている。) The mountain was covered with snow. (山は雪で覆われていた。) The box is made of paper. (その箱は紙で作られている。) これらは形は受動態ですが、動詞に対して前置詞が決まっているものです。よくイディオムとして記憶されるものでもありますが、これらに何らかの法則性を見出すことは困難で、ひとつづつ覚えてゆくよりありません。これも沢山の英文に触れて知識を蓄えることでしか使いこなすことは出来ないでしょう。 以上の他にも、受動態には複雑な用い方がいろいろありますが、それについては文法教室・研究篇で解説することにします。まずは、ここまでの基本的な使い方についてしっかり把握しておいて下さい。
では、以上のような点に注意して、以下の日本語を英語に直してみて下さい。極力、日本語で考えず、イメージを自動的に英語にする努力をしましょう。もちろん、発音やイントネーションにも注意して下さい。すぐに言えなかった場合は正解例を見て記憶し、少し時間を置いてから言えるかどうか試してみます。これを何回か繰り返すうちに、日本語に対応した英語が難なく出てくるようになると思いますよ。
解答例3.Please be seated. は、丁寧に着席を勧める時、解答例5.「be named after」は「〜にちなんで名づけられる」という意味でよく使われるの慣用表現です。 解答例6〜8で、「be satisfied with」、「be disappointed in」、「be surprised at」は全て、by以外の前置詞を使う例です。どれもよく使われるのでイディオムとして記憶しておきましょう。
2007.10.24.. 基礎篇その7.進行形 <<
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