前章では、比較級と最上級を用いて「〜より・・・である」とか「最も〜である」という基本的な比較表現について解説しましたが、このような「物事の程度を示す」表現には「〜と同じくらい・・・である」とか「〜と言うよりもむしろ・・・」などのように他者と比較しながらも、原級を用いて言う方法があります。これらは慣用表現となっていますので、ここでその意味についてきっちり理解を深めておきましょう。
1. 原級を用いて、実質的には最上級の意味を表現する @) 「Nothing is so(/as) 原級 as 〜(〜ほど・・・なものはない) 」 ≒ No (other) + <名詞> is so(/as) 原級 as 〜 (〜ほど・・・な<名詞>はない) 」 ex1) Nothing is so cute as my little bunnies (are). (私のウサちゃんたちほど、可愛いものはない) ≒ No other animal is so cute as my little bunnies (are). (私のウサちゃんたちほど、可愛い動物はいない) = My little bunnies are the cutest animal of all animals. (私のウサちゃんたちは、動物の中で最も可愛い) ex2) Nothing is so beautiful as roses are. (バラほど美しいものはない) ≒No other flower is so beautiful as roses (are). (バラほど美しい花はない) = Roses are the most beautiful flower of all flowers. (バラは花のなかで最も美しい)
A) 「as 原級 as ever 過去形動詞 (古今まれな〜)」 ex) He is as brave a hero as ever existed. (彼は古今まれな勇者である) = He is the bravest hero that has ever existed. なお、「as 原級 as ever」なら、「相変わらず〜である」の意味になります。 ex) She is as busy as ever. (彼女は相変わらず忙しい)
B) 「as 原級 as any (誰にも負けず劣らず〜)」 ex) He is as capable as any engineer in his company. (彼は、彼の会社のどのエンジニアにも劣らず有能である) これは同等比較とも言えるかもしれませんが、いずれにせよ「最も〜である」というニュアンスを含みます。なお、anyの後の名詞は単数形になることにも注意して下さい。
2. 同等比較 「as 原級 as 〜(〜と同じくらい・・・である)」 ⇔ 「not so(/as) 原級 as 〜 (〜ほど・・・ではない)」 比較とは言っても程度が異なるものを比べるのではなく、程度が同じくらいであることを言うのが「同等比較」と呼ばれる「as 原級 as 〜」です。しかし、これに否定語notが付くと、意味は「同程度ではない」となる点に注意して下さい。なお、最初のasは副詞ですが、後のasは接続詞です。従って後のasの後ろには本来「S+V」を伴った文が続くことになります。ただし、後のas以下の文は誤解を招かない限り、省略しても構いません。特に、言葉が重複して冗長になるような場合は、省略されるのが普通です。 ex1) I know Peter as much as you do. (私は、あなたと同じくらいピーターのことを知っている) 最後のdoはknowの代わりとなる代動詞なので、これで代替せずに言うと、下のようになります。 = I know Peter as much as you know him. しかし、代動詞doが省略されて I know Peter as much as you.(私はあなたと同じくらいピーターを知っている) となった場合は、youが主格か目的格か判断できなくなりますので、以下のように意味が二つ生じます。どちらかは文脈や話の前後関係から判断するしかありません。 ● youが主格の場合・・・ I know Peter as much as you know him. (私は、あなたと同じくらいピーターのことを知っている) ● youが目的格の場合・・・ I know Peter as much as I know you. (私は、私があなたを知っているのと同じくらいピーターのことを知っている)
ex2) She is as kind as her sister (is kind). (彼女は、姉/妹と同じくらい優しい) ⇔ She is not so kind as her sister (is kind). (彼女は、姉/妹ほど優しくはない)
ex3) He has as much money as I (have).(彼は、私と同じくらい金を持っている) ⇔ He doesn't have so much money as I (have). (彼は私ほど金を持っていない) ※後のasは接続詞なので基本的には末尾はas I (have)ですが、口語ではas meも多用されます。
3. 「as 原級 as 〜 can/could = as 原級 as possible(〜が出来るだけ・・・)」 ex1) He works as hard as he can to support his family. (彼は家族を養うために、彼が出来る限り一生懸命に働く) = He works as hard as possible to support his family. (彼は家族を養うために、可能な限り一生懸命に働く) ex2) He worked as hard as he could because he needed a lot of money. (彼はたくさん金が必要だったので、彼が出来る限り一生懸命に働いた) = He worked as hard as possible because he needed a lot of money.(彼はたくさん金が必要だったので、可能な限り一生懸命に働いた) 上例のように〜の部分には主語と対応する人称代名詞が入り、canは文の述語動詞に呼応するので過去形ならばcouldを用います。
4. 「A as well as B (BばかりではなくAも / B同様にAも)」 ex1) His grandmother as well as his parents is always very kind to me. (彼の両親ばかりではなく、おばあさんも私にいつも優しくしてくれる) 「A as well as B」のように主語が複合的になっている時、AかBのどちらの人称に動詞を一致させるかは迷うところだと思いますが、この場合は文意の対象となる主体はAの方なので、動詞の形もそちらに一致します。つまり、例えば上の例文でA(his grandmother)とB(his parents)が逆の位置にあれば、前にあるものに合わせるので動詞は複数形が用いられるということです。 ex2) His parents as well as his grandmother are always very kind to me. (彼のおばあさんばかりではなく、ご両親も私にいつも優しくしてくれる) またこの形は「Not only B but (also) A」と同じ意味になることも、合わせて覚えておきましょう。こちらを使うと上の例文は以下のようになります。 ex1) = Not only his parents but (also) his grandmother is always very kind to me. ex2) = Not only his grandmother but (also) his parents are always very kind to me. 例文から分かる通り、こちらの場合の文意の対象となる主体は先の場合と逆で後の方なので、述語動詞もその人称に合わせた形になっています。このような構文における人称と述語動詞の関係については、研究篇3. 複合的主語の人称 でまとめて解説していますので参考にして下さい。 なお、この構文では、比較されるABは共に比較可能な同種のものに限られます。「as well as」 は異種のものを並べて使うこともありますが、その場合は、ex3) のように「〜と同じくらい上手に」の意味に変わります。ex4) と意味が違っている点に注目して下さい。 ex3) She speaks English as well as her mother. (彼女は、お母さんと同じくらい上手に英語を話す)・・・ English とher mother は異種のもの ex4) She speaks French as well as English. (彼女は英語ばかりではなく、フランス語も話す)・・・ French とEnglish は同種のもの = She speaks not only English but (also) French.
5. 「not so much A as B (Aと言うよりはむしろB / B ほどAではない)」 ex1) He is not so much a scholar as a philosopher. (彼は学者と言うよりはむしろ、哲学者だ) ex2 I was not so much astonished as shocked. (私は驚いたと言うよりはむしろ、衝撃を受けた) ex3) She has not so much reason as you (have). (彼女は、あなたほど理性的ではない) これと似たような形で「not so much as (〜すらない)= not even」があります。混同しないように、しっかり覚えておきましょう。 ex4) The papers did not so much as refer to the matter. (新聞各紙は、その件について触れることすらしなかった) = The papers did not even refer to the matter. ex5) There was not so much as a comment on the matter in the papers. (新聞各紙には、その件について寸評すら出なかった) = There was not even a comment on the matter in the papers.
6. 「〜 times as 原級 as A (Aの〜倍・・・)」 ex) His collection of books is about three times as large as mine. (彼の書籍コレクションは、私のものの3倍はある。) = His collection of books is about three times larger than mine.
7. 「as good as 〜 (〜も同然、殆ど〜)」 これも同等比較の一種と考えることができるかもしれません。なお、goodという言葉のイメージとは関係なく、以下の例文のように悪い事柄を表現することにも使います。 ex1) His life is as good as over. (彼の人生は終わったも同然だ) ex2) He is as good as dead. (彼は死んだも同然だ)
8. 「as many 〜 (同数の〜)」 ex1) The three seconds seemed as many minutes to her. (彼女には、その3秒は3分にも思えた) ex2) She wrote three letters in as many days. (彼女は3日間で3通の手紙を書いた) 上例の他に as many の前に倍数を付けて、「同数の何倍」を表現することもできます。 ex3) Mary has two sisters and I have twice as many. (メアリには姉妹が二人いるが、私には四人いる)
9. 「like so many 〜 = as so many 〜 (まるで〜のように)」 ex) They worked like/as so many ants. (彼らは、まるでアリのように働いた)
では、以上のような点に注意して、以下の日本語を英語に直してみて下さい。極力、日本語で考えず、イメージを自動的に英語にする努力をしましょう。もちろん、発音やイントネーションにも注意して下さい。すぐに言えなかった場合は正解例を見て記憶し、少し時間を置いてから言えるかどうか試してみます。これを何回か繰り返すうちに、日本語に対応した英語が難なく出てくるようになると思いますよ。
解答例5. conduct = 運営する、管理する ・・・"コンダクター"という言葉から「指揮する」は知っていると思いますが、その他にもこのような意味でよく使われます。
2011.1.29.-1.30.+2.18.+2.24. 中級篇★その4.比較表現 1. 比較級と最上級 B) 最上級の注意点 <<
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