この章では、比較級を用いた慣用的な表現を集めました。よく見かけるものなのに、まぎらわしくてカン違いしやすいものが多いので、ここで整理してきっちり覚えておきましょう。
1. 比較級を用いて、実質的には最上級の意味を表現する @)「比較級 + than any other + 単数名詞(他のいかなる〜よりも・・・)」 = 「比較級 + than (all) the other + 複数名詞」 ex) The emergence of computers is greater than any other phenomenon in human history. = The emergence of computers is greater than (all) the other phenomena in human history. (コンピュータの出現は人類史上、他のいかなる現象よりも大きい) = The emergence of computers is the greatest phenomenon in human history. (コンピュータの出現は人類史上、最も大きな現象である) ※ phenomenon 「現象」の複数形はphenomena ですが、「並はずれたこと、非凡な人」などの意味で用いられる時はphenomenons になります。
A)「Nothing is 比較級 + than 〜 = No (other) + 名詞 is 比較級 than 〜 (〜より・・・なものはない) 」 ex) Nothing is greater than the emergence of computers in human history. (コンピュータの出現ほど、人類史上において大きなものはない) = No other phenomenon is greater than the emergence of computers. (コンピュータの出現ほど、人類史上において大きな現象はない)
B) 「the + 比較級 + of the two (ふたつのうちで〜の方) このように二者間の比較では比較内容の程度がより強い方を示すことになるため実質的には最上級的な意味になりますが、二者の場合は最上級は使わず、比較級を使って表現します。なお、このように最上級的な意味を表現する比較級には、必ず定冠詞が付くことを忘れないようにしましょう。 ex) Jane is the younger of the two girls. (ジェーンは二人の少女のうちで年若い方です) ・・・最上級的な意味を持つ比較級 ⇔ Jane is younger than Mary. (ジェーンはメアリより若い) ・・・ 通常の比較級 そもそも冠詞は名詞に付くものですから、このような比較級に定冠詞が付くのは、本来は Jane is the younger girl of the two girls. であるものが、girl の重複を避けるために前の方が脱落しているためと考えれば理解しやすいと思います。
2. 「less 原級 + than 〜(〜より/ほど・・・ではない) = not so 原級 + as 〜 (〜ほど・・・ではない)」 ex) She is less kind than she was. = She is not so kind as she was. (彼女は、昔ほど優しくはない)
3. 「more 原級 + than 原級 (〜よりむしろ・・・)」 この意味に用いられる場合、1音節語や、2音節語で例外とされる語であっても「more + 原級」の形になる点に注意して下さい。 ex1) She is more kind than generous. (彼女は寛大というよりはむしろ親切だ) ≠ Jane is kinder than Mary. (ジェーンはメアリより親切だ) ex2) He is more clever than wise. (彼は賢明というよりはむしろ利口だ) ≠ Jane is cleverer than Mary. (ジェーンはメアリより利口だ)
4. 「the 比較級 +S+V 〜, the 比較級 +S'+V'・・・ (〜すればするほど・・・)」 ex) The more he came to know her, the less he liked her. (彼女を知るようになればなるほど、彼は彼女が好きではなくなった)
5. 「the 比較級 + for/on account of/because (of)等 〜 (〜のために、それだけいっそう・・・)」 この意味の場合、意味を強めるには比較級の前にall、none、so much などを置きます。 ex1) She looks all the more beautiful for her behavior. (彼女はその振る舞いのために、よりいっそう美しく見える) ex2) He is none the wiser because he read many books. (彼はたくさん本を読んだにも拘わらず、少しも賢くならない) ※ex2)のようにnoneが付く時は、「〜にも拘わらず・・・ない」の意味になります。
6. 「比較級 and 比較級 (ますます〜、だんだん〜)」 ex) The story becomes more and more exciting as you read on. (その話は読み進むにつれて、どんどん盛り上がってくるよ)
7. 「No sooner 〜 than ・・・ (〜するやいなや・・・、〜するとすぐに・・・)」 ≒ as soon as 〜 ex) She had no sooner pointed the gun at the man than he rushed upon her. = No sooner had she pointed the gun at the man than he rushed upon her. . (彼女がその男に銃を向けるや否や、彼は襲いかかってきた) ≒ As soon as she pointed the gun at the man, he rushed upon her. . この言い回しは上例のように過去完了と共に用いられ、no sooner が文頭に出ることがよくあります。これは口語より文章表現の方によく使われるものではないかと思いますが、no soonerが文頭に置かれた場合は、その後の語順が倒置されて完了形のhadが主語の前に出ることに注意して下さい。また、意味はas soon asとほぼ同じと考えて良いようですが、より厳密に言うなら「殆ど同時に起こった」というニュアンスが強いかもしれません。no sooner と過去完了がセットで用いられるのは、もうひとつの出来ごとが過去完了で表現されている内容より"そう早くはなかった"というニュアンスがあるためでしょう。
8. no more/not more と no less/not less more と lessを用いた表現で 特に意味を誤りやすいのが以下の8種類の表現です。more/lessをno/notどちらで否定するか、more/lessの後に語句が入るか否かで全て意味が違ってきますので、例文をしっかり覚えて感覚的にどの意味か咄嗟に判断できるようにしておきましょう。
では、以上のような点に注意して、以下の日本語を英語に直してみて下さい。極力、日本語で考えず、イメージを自動的に英語にする努力をしましょう。もちろん、発音やイントネーションにも注意して下さい。すぐに言えなかった場合は正解例を見て記憶し、少し時間を置いてから言えるかどうか試してみます。これを何回か繰り返すうちに、日本語に対応した英語が難なく出てくるようになると思いますよ。
解答例1.troublesome はsome で終わる語なので原則としてer、est を付けるとされていますが、more/mostを付けても構いません。むしろ、現代の用法では一般にmore/mostを付ける方が多いという説もあります。 解答例4.「心安い、打ち解けた、気楽な」などの意味で"familiar"を使いますが、これには「なれなれしい = overfamiliar」という意味もあり、"Don't be familiar with me. (なれなれしくするな)"という感じでも使います。 解答例5.learn の過去、過去分詞はlearned/learnt どちらでも構いません。語尾の発音も[d]/[t]どちらも使えます。 解答例6.The sooner, the better. は慣用的によく使われる表現です。 解答例7.「奇人、変人」という意味ではeccentric、weird ともに使われますが、weirdの本来の意味は「超自然的な、異様な」なので、こちらの方がより「わけのわからない人物」というニュアンスが強いようです。これに対してeccentricは「常軌を逸している」という意味であるものの、一般に「変わった人」程度のニュアンスで使うことができます。 familiar/unfamiliar to <人>= 「<人>に馴染みがある/ない、<人>にとって慣れた/慣れない」 familiar/unfamiliar with <物事> = 「<物事>をよく知っている、通じている/知らない」 解答例8.become aware of 〜 = 「〜に気づく」、become の活用は become > became > become 、runの活用は run > ran > run
2011.2.10.+2.13.+2.21.+2.24.
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