★視覚を活用する★ 人間はコトバを理解しようとする時、実は聴覚ばかりに頼っているわけではありません。聴覚を助ける最大の感覚は視覚です。 これまで一般にヒアリングというと前章で書いたようにCDやテープに録音されたものを聞いて、聴覚のみから英語の理解力を発達させようとすることが多かったと思います。しかし、実生活では常に聴覚と視覚は連動して周囲の情報を収集し分析しているので、なにも「聞く」ことだけに拘らなくても良いわけです。 ヴィデオやDVDのない時代にも熱心な英語学習者はよく映画を見に行ったものだったようで、これは視覚と聴覚の両方を使って状況を把握する訓練としてなかなか役に立つものだったでしょう。これを考えると、現代では何度でも繰り返して見れる手軽なDVDが安価に出回っているのですから、これを活用しないテはありません。 映画なら話される言葉は実生活で使われている日常的な言い回しですし、模範的な学習テープよりも実際的な状況での発音やスピードを聞くことができます。様々な国の映画を見ることで、国ごとに違う発音に慣れることができ、もちろん登場人物はひとつひとつ違うわけですから、個々で変化する多様な話し方を通して言葉を理解する経験も積むことができます。それに何と言っても教材のCDと違って映画ですから、見てるだけで面白いですよね。オススメはアメリカやイギリスなどのTVシリーズで、連作になっていると同じ俳優さんや女優さんを続けて見れるわけですから、その人の話し方に慣れるにつれて理解もしやすくなり、ストーリー展開も似たような状況が設定されていることが多いので、把握しやすくなってゆくと思います。 「今、なんて言ったのかな?」と思うこともしばしばあると思いますが、そういう時は繰り返し見て、ストーリーの流れや周囲状況から、発音された言葉そのものではなく「何を言ったのか」、つまり内容そのものを推測してみると、聞き取りにくかった言葉そのものを逆から認識する手助けになることがあります。 最近では、字幕の代わりにスクリプトが出るDVDなどもあるようですし、初めはスクリプトをオフにして見て、どうしても分からない所があったら今度はスクリプトをオンにして見るということを繰り返していると、視覚やストーリー展開から得られる要素を利用して、聴覚を補うということが出来るようになってゆくでしょう。
★試験より簡単★ 英語の資格試験では、ヒアリングと言えば聴覚のみを使って内容をどれだけ理解できるかということが試され、当然聞き返すこともできません。しかし、実際の英会話では先ほども書いたように聴覚の他に視覚を使って状況を把握することができますし、聞き取りにくかったり分からなかったりしたら何より「聞き返す」ということが許されます。 また、ヒアリングテープから内容を推測する手がかりというのは聞こえてくる言葉しかないわけですけど、実際の会話では話題や話の流れが予め特定されていることが多く、よく知っている相手なら相手の言いそうなことを予測することも出来る場合があります。 つまり、文章を読む時にも文脈の把握がそれに続く内容の理解を助けることが多いように、日常会話においては話されていることの大意をつかむ手かがりは、試験より遥かに多くなるということです。従って、日常会話は資格試験よりはるかにカンタンということになりますね。 外国人に話しかけられたからと言って、いきなりあわてる日本人はけっこう多いようですが、まず落ち着くことです。そして、言葉だけから内容を把握しようとせず、視覚や聴覚、周囲状況や一般常識などから「何を言いたいのか」を推測してみましょう。大切なのは、一語一語を聞き取ることではなく、「何を言いたいのか」を知ることなのですから。 2007.7.27.
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