1. 意味上の主語 通常の動詞が主語を持つように、不定詞にも、その動作や状態をもたらす主体としての主語があります。 @)一般的な意味上の主語 通常の動詞では例えば、 I live in this house. / He lives in the house. / Flowers are blooming. / The weather was fine. このように主語(I、He、Flowers、the weather)が何であるかによって動詞は文法的な語形変化を受けるので、これを「文法上の主語」と呼びますが、不定詞は文法的な変化を受けることがないので「文法上の主語」はありません。しかし、その主体となって文中で不定詞に対する主語の役割を果たしている語はあるので、それが「意味上の主語」と呼ばれます。 では、実際の文で「不定詞の意味上の主語」が、どのように表れているかを見てみましょう。 ex) I want to go there. (私は、そこに行きたい) I want you to go there. (私は、きみにそこに行ってもらいたい) 例文では、どちらも「to go」は動詞wantの目的語になっています。しかし、「行くのは誰か」を考えれば上の例ではこの文における主語である"I"が、下の例ではこの文における目的語である"you"が、不定詞 to goの表す動作の主体となっていることが分かるでしょう。一般に「不定詞の意味上の主語」は、このようにその文の文法上の主語、もしくは目的語になります。 ただし、意味上の主語が「一般の人々」である場合、以下のような例では省略されるのが普通です。 ex) It is wrong to tell a lie. (うそをつくことは、悪い) = It is wrong that we (should)tell a lie. ※wrong のように判断を表す主節に続くthat節中にはshouldが用いられるのが基本的な形ですが、これは特に米語では省略される傾向にあります。また、この用法は仮定法現在に相当するため、shouldが省略される時でも続く動詞(例文の場合はtell)には主語の人称による語形変化は生じません。この用法で使われる動詞や形容詞は、判断、感情、命令、決定、提案、要求、期待、希望、意図、規定など多岐に渡りますが、仮定法現在については、後の章で詳しく解説します。
A)「for + 目的格」、「of + 目的格」で示される意味上の主語 @)の例文は一般的な形でしたが、これとは別に文中で不定詞の意味上の主語が法則的に「for + 目的格」、「of + 目的格」という形で明示される場合もあります。 @ 「for + 目的格」 これはよく「It is + 判断、評価を表す形容詞 + for 目的格 + to 不定詞」の形で用いられます。 ex) It is impossible for him to reach the station in time. (彼が間に合うようにその駅に着くことは不可能だ) = It is impossible that he (should) reach the station on time. 文法上の主語とは違い、「意味上の主語」は先に書いた通り「不定詞が表す動作もしくは状態の主体となるもの」つまり「誰がそれを引き起こすか」を考えてゆけば判明します。そこでこの例ではthat節を用いて書き換えると分かるように、「到着すること(to reach)」が「不可能(impossible)」であるのは誰かというと「彼」なわけですから、これが「この不定詞to reachの意味上の主語である」ということになるわけです。 このような構文で使われるのは以下のようにに「判断、評価を表す形容詞」ですので、一例として覚えておきましょう。類例は多くあると思います。 類例) convenient(都合の良い)、dangerous、risky(危険な)、natural(当然の)、useful(有益な)
A「of + 目的格」 また、「It is + 人の性質を表す形容詞 + of 目的格 + to 不定詞」の形で不定詞の意味上の主語を明示する構文もよく使われます。 ex) It is very kind of you to help me. (あなたが私を手伝って下さることは、大変ご親切です = ご親切に手伝って頂きまして) = It is very kind that you (should) help me. = You are very kind to help me. この例の場合も「to help」するのは誰かを考えれば、意味上の主語はyouであるということが分かります。このような形容詞に対しては、習慣的に「of + 目的格」が用いられると覚えておけば良いでしょう。以下に類例を挙げておきますので、覚えておいて下さい。 類例) brave(勇敢な)、careless(不注意な)、characteristic/typical(特有の)、clever (利口な)、cruel(残酷な) considerate/thoughtful(思いやりのある) ⇔ thoughtless(思いやりのない) foolish/silly/stupid(愚かな、ばかげた) ⇔ sensible/wise(賢明な) generous(寛大な、気前の良い)、good/nice/kind(親切な)、mean(意地の悪い)、wrong(悪い) polite(礼儀正しい) ⇔ rude(失礼な)
2. 意味上の目的語 ex) There was something to eat on the table.(テーブルに何か食べるものがあるよ) ・・・修飾される代名詞 somethingは、構造上eat something の意味を持ち、「何かを食べる」であって「何かが食べる」ではない。従って、somethingは不定詞となっている動詞の意味上の目的語にあたる。 ※これとは別に、「名詞(代名詞)+ to不定詞 + 前置詞のみ」であれば、名詞(代名詞)は前置詞の目的語となります。 ex) The children have no toys to play with. (その子たちには、遊ぶおもちゃがない) ・・・ to play (with) は、名詞 toys を修飾。toysは前置詞withの目的語になっているため(play with the toys)、最後のwithを省くことはできません。動詞はその意味によってはこのように前置詞を伴わなければ目的語を取ることが出来ない場合があるためこういう表現が生じるので、「動詞と前置詞がセットになって目的語を取っている」と考えると理解しやすいかもしれません。 ⇒ これについては中級篇★その2.準動詞1.不定詞 A)to不定詞の用法でも同じ解説を掲載しています。
では、不定詞の意味上の主語がどれであるかをきっちり把握しながら、以下の日本語を英語に直してみて下さい。 極力、日本語で考えず、イメージを自動的に英語にする努力をしましょう。もちろん、発音やイントネーションにも注意して下さい。すぐに言えなかった場合は正解例を見て記憶し、少し時間を置いてから言えるかどうか試してみます。これを何回か繰り返すうちに、日本語に対応した英語が難なく出てくるようになると思いますよ。
解答例3.stay in bed ベッドにとどまる = 安静にしている 解答例3.4. instruct、adviseなどのように要求、期待、提案等を表す主節に続くthat節中にもshouldが用いられるのが基本的な形です。本文中でも触れましたが、これは特に米語では省略される傾向にあり、また、この用法は仮定法現在に相当するため、shouldが省略される時でも続く動詞(例文の場合はstay、wait)には主語の人称による語形変化は生じません。仮定法現在については、後の章で詳しく解説します。 解答例5.meetには、"出会う"という意味の他に、このように"落ち合う"という意味もあります。 解答例5.〜10.これらに使われている主節の形容詞も、判断を表現しているため解答例3、4.同様にthat節に置き換えると仮定法現在の扱いになります。 2009.6.6.+6.10.+10.15.+10.30.+11.5.
中級篇★その2. 準動詞1.不定詞 B)to不定詞の否定と時制 <<
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