whoever, whatever, whicheverなどの複合関係代名詞もwhatと同じく先行詞を含んだ形で用いられますが、whoever のみは格の変化がある点に注意して下さい。格は、続く関係代名詞節で、その複合関係代名詞に含まれる先行詞相等部分が、主格、所有格、目的格のどれとして使われているかによってくるわけですが、この点は他の関係代名詞と同じです。 ただし、通常の関係代名詞が先行詞である名詞を修飾するという役割から形容詞節として機能するのに対し、複合関係代名詞は先行詞を含むという性質上、原則として名詞節として機能することになります。しかし、関係代名詞はもともと先行詞と節を結びつけるという点で接続詞的な性質も持っており、そのため複合関係代名詞にもその性質が出て、譲歩を意味する副詞節を導くこともあります。 複合関係代名詞は意味そのものはさほど難しいものではないんですが、このように文法上の解釈はちょっと厄介かもしれません。では、そのあたりを順に説明してゆきましょう。
1.基本の使い方 ・・・ (〜なら)誰でも、誰のでも、何でも、どちら/どれでも ● whoever = anyone who ・・・ 〜(する)人なら誰でも ・・・ 主格 whomever = anyone that/anyone whom ・・・ 〜(する)人なら誰でも ・・・ 目的格 whosever ・・・ 〜(するの)なら誰の〜でも ・・・ 所有格 ● whatever = anything that ・・・ 〜(する)ものなら何でも ● whichever = any one that / either that ・・・ 〜(する)ものならどちらでも/どれでも 複合関係代名詞は、包括的なニュアンスを持つ「ever」が、人やものを表す関係代名詞「who, what, which」などと結びついたものですが、そのため通常はどのような条件で区切られた範囲内の包括性であるかが同時に示されることになり、従って、基本的な意味には「〜なら(条件)」の要素が含まれます。条件節というと代表的なものは if で導かれる副詞節ですが、複合関係代名詞は先行詞(通常は名詞)を含むという性質上、原則として条件のニュアンスを持つ名詞節として機能することになります。 @) whoever = anyone who ・・・ 〜(する)人は誰でも ・・・ 主格 ex) Will you ask whoever is at the reception desk to come upstairs? = Will you ask anyone who is at the reception desk to come upstairs? (受付にいる誰でも[よいので]、2階に来てもらってくれませんか? = 受付にいる誰かに、2階に来てもらってくれませんか? ) この例文では、「whoever」が導く太字部分の節が、動詞 askの目的語になっています(「誰でも受付にいる人に、頼んで(ask)くれ」)。このことは、"whoever"を"anyone who"でバラした文の方を見てもらうとよく分かると思いますが、"whoever"に含まれている先行詞"anyone"が"ask"の目的語になっており、従って、それを含む関係代名詞"whoever"が導く節そのものも askの目的語として機能するため、名詞節の扱いになるわけですね。 しかし、ここで注意しなければならないのが関係代名詞を選ぶ時の格の問題で、この場合、askの目的語になっているからと言って目的格whomeverを使ってはいけません。関係代名詞の格は、あくまでそれが導く節での先行詞の役割によって決まります。例文では、太字部分が関係代名詞の導く節部分ですから、ここでの先行詞相当部分の役割を見て格を決定する必要があるということです。つまり、ここでは [人] is at the reception desk で、意味上、先行詞相等部分が続く節の主語になっているから主格whoeverを用いることになります。 ちなみに、この例文はS+V+O+Oの文型になっているわけですが・・・ you = S / will ask = V / whoever is at the reception desk = O / to come upstairs = O このように分解することが可能で、これを見れば"whoever is at the reception desk"が、ひとかたまりで名詞節の役割を果たしているということが、更によく理解できるのではないかと思います。なお、続く"to come upstairs"は、askが動詞を目的語として取る時にはto 不定詞の形になるという決まりがあるため、この形になります。 ⇒ 動詞の目的語については、研究篇その1・動詞の目的語を参照してください。
A) whomever = anyone whom/anyone that ・・・ 〜(する)人なら誰でも ・・・ 目的格 ex) She invited whomever she met. = She invited anyone whom/that she met. (彼女は、出会う人みんなを招待した) 今度は、目的格になる場合の例です。例文ではwhomeverに含まれる anyoneに相等する部分が、she met [人]の位置に来るため、続く節の中で目的語の役割を果たしていることになります。そこで、関係代名詞も目的格whomeverを使うことになりますね。
B) whosever ・・・ 誰の〜でも / 〜(する)なら誰の〜でも ・・・ 所有格 ex) You can use whosever pencil is on the desk. (誰の鉛筆が机の上にあっても、使って構いません) さて、whosever は先の二つより更に扱いが複雑です。なぜなら、whoseverは所有格なので、原則としてこれには必ず名詞が続くことになり、従ってwhoever/whomeverのように単体で節を導く形にはなりません。このため、これが関係代名詞であるか、関係形容詞であるかという文法上の判断がちょっと大変になります。 例文では、"whosever"のかかっている名詞"pencil"は実質的に動詞"use"の目的語であると同時に、"whosever"の導く節において主語の働きをしていることが分かると思います。そこで、この場合はwhoseverがpencilで始まる節を導いていると看做されることにより、太字部分ひとかたまりでuseの目的語になっている名詞節であると考えるられるわけです。しかしこれに対し、例えば、 You can use whosever pencil (that/which) there is on the desk.(机の上にある鉛筆が、誰のでも使って構いません) こうなると、that以下が名詞pencilを修飾している形になるため、whosever自体は節を導いておらず、pencilを修飾する形容詞としてのみ機能していると考えられます。従ってこれは、関係形容詞であるということになりますね。文そのものの大意は殆ど変わらないのですが、これは文法上の分類の問題です。 このように考えると、複合関係代名詞の中でも"whosever"は、他の複合関係代名詞が単体で含んでいる先行詞相等部分が、続く名詞として後に出た形になるという点において、特殊な存在であると言えるでしょう。
C) Take whichever you want. (どちらでも/どれでも、欲しい方を取りなさい) D) Do whatever you like. (好きなことを、何でもやりなさい) whichever/whateverは、格の変化もないので、特に理解しづらい点はないと思います。ちなみに、上の例ではどちらも、それぞれtake/do の目的語となる名詞節を導いているということが分かるでしょう。
2.whoever か、whomeverか? 関係代名詞としてwhoever を用いるか、whomeverを用いるかは特に戸惑うことの多い点かと思いますが、先にも書いたように、必ずその関係代名詞が導く節に対する先行詞相当部分の格で判断します。主節や挿入文がくっついていても、惑わされないようにしましょう。 ex) He relies on whoever is punctual. (彼は時間に性格な人なら誰でも信頼する) ・・・ [人]is punctual と考えて主格whoeverを選ぶ = He relies on anyone who is punctual. Tell it to whomever you like. = Tell it to anyone that you like. (誰でもあなたの好きな人にそれを話しなさい) ・・・ you like [人]と考えて目的格whomeverを選ぶ = You like [those people] and you can tell it to them all. I always have my eye on whomever I'm talking to. (私は、誰であれ話している相手から目をそらさないことにしている) ・・・ I'm talking to [人]と考えて目的格whomeverを選ぶ。 = Whenever I'm talking to [someone], I always have my eye on. ※なお、この場合のonは副詞なので、前置詞と混同しないようにしましょう。 文法的にはこのように考えてどちらか判断すれば良いわけですが、口語では動詞の目的語や離れた位置にある前置詞の目的語になる時には、whoeverを用いる傾向が強いようです。合わせて覚えておきましょう。 ex) You shouldn't believe such a story, whoever you heard it from. (誰から聞いたにしても、そんな話を信じてはいけません) ・・・ 文法的にはyou heard it from 「人」なので、目的格whomeverを用いるのが正しいが、fromが離れた位置にあるため、口語ではwhoeverを用いる傾向が強くなる
3.譲歩の副詞節を導く ・・・(たとえ)誰が/の/を〜であっても、何が/を〜であっても、どちらが/を〜であっても さて、複合関係代名詞は基本的に「〜なら(条件)」の要素を含むと書きましたが、この性質上、「たとえ〜であっても(譲歩)」という意味が出てくることがあります。これは、名詞節として機能している場合にも文脈からみて発生することがありますが、文法上、名詞節として文中で主語や目的語の役割を果たさず、その節が独立した形で譲歩の意味を示す副詞節となる場合も出てきます。 本来、このような副詞節を導く語は「関係代名詞」ではなく「接続詞」の役割を果たしていると言えるので、転用されているとも言えますが、一般に辞書ではこの用法は本来あるべき代名詞用法のひとつに分類されており、接続詞用法として独立したものとは考えられていないようです。これは、複合関係代名詞は、関係代名詞でありながら、接続詞的に使われて譲歩の意味を持つことがあるというだけで、複合関係代名詞そのものに先行詞が含まれているという性質上、純粋な接続詞とも違った存在であると考えられるからではないかと思います。 ともあれ、本来は形容詞節として機能するべき節を導く関係代名詞の仲間であっても、このように複合関係代名詞は、その意味や性質上、特殊な働きをするものであると覚えておくと、文法的に厳密な判断が必要になった時に戸惑わずにすむでしょう。 なお、譲歩の副詞節となっている場合には、以下の例のように may/might が挿入される傾向にあります。これは必ず入るというものではありませんが、一般によく見受けられる形のようです。また、「, 」で区切られて独立している場合が多いことも、副詞節であると判断する手がかりになります。 @) whoever = no matter who ・・・ (たとえ)誰が〜しても ex) I won't do such a thing, whoever asks. (誰に頼まれようと、そんなことはやらないよ)
A) whomever = no matter whom ・・・ (たとえ)誰に/を〜しても ex) Whomever you may ask, the question will never be answered. (誰に尋ねたって、この疑問は解けないだろう)
B) whosever = no matter whose ・・・ (たとえ)誰の〜であっても ex) Whosever this car is, get it out of here right away. (誰のクルマであっても、いますぐここからどけろ)
C)whatever = no matter what ・・・ (たとえ)何が/を〜しても、いかに〜でも ex) He is innocent, whatever you may think. (きみがどのように考えようとも、彼は無罪だ)
D) whichever = no matter which ・・・ (たとえ)とちらが〜しても/どちらを〜しても ex) Whichever you may choose, you will find it interesting. (どちらを選んでも、面白いことが分かるだろう)
4.関係形容詞として使う ・・・ whosever, whatever, whicheverのみで、後に節ではなく名詞単体が続く形 既に書いたように、複合関係代名詞にもwhat同様に関係形容詞として使われるものがあります。形容詞として使われている場合は節ではなく必ず名詞単体が続くわけですから、この用法があるのは以下の3つです。なお、この形でも単に条件を言う場合と、譲歩を言う場合がありますので、意味は文脈から判断して下さい。 ex) Whosever car this is, get it out of here right away. (誰のクルマであろうと、いますぐここからどけろ) He offered whatever help he could give.(彼は、自分にできる助力は何でもしようと申し出た) Take whichever book you like. (どちらでも/どれでも、好きな本を取りなさい)
では、以上のような点に注意して、以下の日本語を英語に直してみて下さい。極力、日本語で考えず、イメージを自動的に英語にする努力をしましょう。もちろん、発音やイントネーションにも注意して下さい。すぐに言えなかった場合は正解例を見て記憶し、少し時間を置いてから言えるかどうか試してみます。これを何回か繰り返すうちに、日本語に対応した英語が難なく出てくるようになると思いますよ。
2008.11.12.+11.15.-11.17.
>> 中級篇★その1.関係詞2.関係代名詞 D)as, but, than
|