一般に接続詞として用いられることの多い as, but, than ですが、これらは他にも様々な用法を持ち、以下のような特殊な場合に限って関係詞になることもあります。この区別をつけるためには、まず「接続詞」、「関係詞」が文法上どういう役割を果たしているかを把握することが大切です。「文の要素を繋ぐ」という役割りから見れば「関係詞」は「接続詞」の仲間であるとも考えられるわけですが、 ● 「(従位)接続詞」によって導かれる節は、主節に対して文法的に独立した要素として主節を修飾するのに対し、 ⇒ 基礎篇★その17.接続詞 3,従位接続詞 @) 基本の使い方 参照 ● 「関係詞」には必ず先行詞があり、それに続く節が先行詞を修飾すると同時に、先行詞は後続節を構成する要素になっている という点で明らかに違います。これを把握しておけば、as, but, thanがどちらとして用いられているかを判断するのも容易になるでしょう。ただし、形の上だけでは判断のつかない場合もあるので、文脈から大意を掴んで考える習慣をつけるようにして下さい。
1. as @) such, as, so, the same と呼応する形で用いられる場合 ・・・ 「as」の限定用法的な使い方 @ such 〜 as ... 「...であるような 〜」 ex) He is such a powerful man as anyone can rely on. (彼は、誰でも頼りにできるような力のある男だ) 例文からも分かる通り、as以下の節が先行詞"a powerful man"を修飾しているので、このasは関係代名詞と看做されます。 ちなみに、"such 〜 as ..." と似た意味でよく使われるものに"such (so) 〜 that ..."がありますが、この場合は「非常に〜なので、...である」という意味になり、従ってこの場合のthat は接続詞と看做されます。例えば、上の例文をこれを用いて言い換えると... He is such a powerful man that anyone can rely on him. (彼は非常に力のある男なので、[彼を] 誰でも頼りにできる) = He is so powerful that anyone can rely on him.(彼は非常に力があるので、[彼を] 誰でも頼りにできる) 大意はあまり変わりませんが、正確に意味を追求すると文法上で掛かり方が違っていることが理解できると思います。また、"such 〜 as ..."を用いた場合は、asが関係詞であるために、続く節で"rely on [人]"の[人]に当たる部分が先行詞となっていることから省略されるのに対し、"shch (so) 〜 that ..."では、that が接続詞であるために on の目的語である[人]を省略出来ない点にも注意して下さい。つまり、"接続詞によって導かれる節が、主節に対して文法的に独立している"というのは、このように主語や目的語が省略されないという意味でもあります。 なお、"such (so) 〜 that ..."の形で用いられる場合、例文のように必ず suchの後には名詞、soの後には形容詞もしくは副詞が来ます。これは、such が形容詞、so が副詞として用いられているために生じる違いです。つまり、名詞を強めたければ形容詞の"such"、形容詞や副詞を強めたければ副詞の"so "を用いるということですね。合わせて覚えておきましょう。
A as 〜 as ... / so 〜 as ... 「...するだけの〜 」 ex1) She has as much money as is needed. (彼女は、必要なだけの金を持っている) ・・・ 後のasは関係詞 You made so conspicuous an error as anyone could notice. (きみは、誰でも気づくだけの誤りをした = きみは、誰でも気づくような誤りをした) ・・・ 後のasは関係詞 ※この例文ではsoが副詞であるため直後に通常の形で名詞を置くことは出来ないので、a conspicuous error の形容詞部分のみが先に出てこの形になります。従ってこの文はsuchを用いると、You made such an conspicuous error as anyone could notice となり、また、接続詞を用いて言い換えると You made such a conspicuous error that anyone could notice it. になります。接続詞を用いた場合、目的語が必要になるので最後にitが入る点にも注意して下さい。
ex2) He is as tall as you are. (彼は、あなたと同じくらいの身長だ) ・・・ 後のasは接続詞 It's not so easy as you might think. (きみが考えるほど、易しくはない) ・・・ 後のasは接続詞 as は一般に副詞、接続詞として用いられることが多いわけですが、同じように「as (so) 〜 as ...」の形で呼応する場合でも、ex1) には、後のas の前に先行詞となる名詞があるのでこれは関係詞であり、ex2)にはないので接続詞と看做されます。後のas 以降に節が続く場合でも、このように先行詞があるかないかで文法上のasの定義は違ってきますので、注意する必要があります。 ただし、This is so much as I could find out. (私が知りえたことは、これだけだ)のように、形の上で先行詞がないように見えても、as以下が文法的に独立しておらず、完全な文にするためには I could find out this much. (私は、これだけの量を知り得た = 私は、これだけのことを知りえた)のように、目的語として先行詞を補って考える必要があることもあります。従ってこのasは関係代名詞であると看做されるわけですが、このように先行詞がないように見えても接続詞ではなく関係代名詞であることもあるので、必ず文脈や後続節の意味をよく考えてから判断しなければなりません。ちなみに、このmuchは本来は形容詞ですが、muchの名詞用法に「〜だけの量(額)」という意味があり、これはhow, as, so, tooなどとセットになってよく使われる形で「形容詞の独立用法」と呼ばれます。このため、This is so much as I could find out. で、muchは形容詞でありながら名詞としても機能していることになり、これ自体が先行詞となっていると考えることも出来ます。ついでに言えば、 I could find out this much. という文では、muchは名詞として機能しています。 また、such 〜 that ... / so 〜 that ... と同様に、such/soが関係詞 as と呼応する場合も such は形容詞、so は副詞として用いられているため、suchの後には通常の形で名詞を続けることができますが、so の直後には形容詞が来て、その後に名詞が続く形になります。ちなみにex1)、ex2) どちらの場合も前のasは副詞です。 なお、ex2)の、後ろのasは接続詞と解説しましたが、そうすると本来asの後は as you are tall / as you might think it easy となるのでは? と思われる方もあるかもしれません。確かに、原則として"接続詞に続く節は文法上独立した存在である"という定義からすれば必要なのですが、このような比較表現の場合は接続詞として as/than どちらが用いられる時でも、それより前に出ている語句が後の節において重複する場合には省略できるという原則もあります。特に、例文のtall/easyのように、比較内容を表す形容詞や副詞は例外なく省略することになっています。これは、表現がいたずらに冗長になるのを防ぐために自然とそうならざるをえない法則でしょう。
B the same 〜 as ... 「...と同じような〜」 ex) I have the same necklace as she has. (私は、彼女が持っているのと同じようなネックレスを持っている) この意味で"the same" に呼応する関係詞はas/that の2つがありますが、一般に as だと「同様のもの」、thatだと「同一物」と言われることが多いようです。しかし、この区別は必ずしも厳密なものではないようなので、意味は文脈から判断するように心がけて下さい。 例えば、I have the same necklace that she has. なら、同時に二人の人間が同一のものを所有しているとは考えられないので、同様のものを意味していると判断することが出来ます。また、This is the same necklace that I lost yesterday. であれば、同一物である確率は高くなるでしょう。ただし、この場合に同一物であることが絶対確実であれば、実際には This is the necklace that I lost yesterday. という、より断定的な表現になる方が多いと思います。また、同一物であるか否かを話者が判断しかねている場合はthe same 〜 as/that どちらにもなりうるでしょうし、同一物でないことが確実であれば、the same 〜 as が用いられることが多いでしょう。 要は、その場その場での話者の表現したいニュアンスに関わってくることですが、ただし、一応こういう原則があるとされているので、自分が使う時にはその点に留意しておくと誤解を招かずに済むと思います。
A)「, 」で区切られて、節を導く場合 ・・・ 「as」の継続用法的な使い方 ex) She was absent from school, as is often the case. (彼女は学校を休んだ。それはよくあることなのだが = 彼女が学校を休むのは、よくあることだ) ・・・ 先行する部分にas節の主語となる内容が含まれる ( = To be absent from school is often her case.) As was expected, she did the job beautifully. (予期された通り、彼女はその仕事をうまくやってのけた = 彼女がその仕事をうまくやってのけることは、予期されていた) ・・・ 後続する部分にas節の主語となる内容が含まれる ( = Her doing the job beautifully was expected..) Time is not a merciful master, as we all know. (時は慈悲ある主ではない、誰もが知っているように = 時が慈悲ある主ではないことを、誰もが知っている) ・・・ 先行する部分がas節の目的語 ( = We all know that time is not a merciful master.) He is a faithful man, as are all of his family. (彼は誠実な男だが、彼の家族も皆そうなのだ = 彼が誠実であるのと同様に、彼の家族も皆そうだ) ・・・ 先行する部分に、意味上as節の補語となる内容が含まれる ( = All of his family are faithful. / He is a faithful man and all his family are the same.) 上例のように、関係詞 as にも他の関係詞同様に、「, 」で区切られる継続用法的な使い方があります。通常asは接続詞として副詞節を導くことが多く、その場合も「, 」で区切られることがあるため混同しやすいですが、 ● 従位接続詞が副詞節を導く場合、主節に対して文法的に独立した要素として主節を修飾する ⇒ 基礎篇★その17.接続詞 3,従位接続詞 @) 基本の使い方 参照 これに対し、例文はどれも as節が文法的に独立しておらず、先行もしくは後続する部分の一部もしくは全部を文の要素として初めて意味をなすという点が決定的に違っており、このことから、こういったasの用法は「関係詞」と看做されているようです。意味的に突き詰めて言えば、接続詞なら「〜なので、・・・である」のようになるのに対し、関係詞であれば「・・・であることは(を)〜である」のようになるということですね。 なお、 ● 通常の関係代名詞は「人」か「もの」を先行詞として用いられるために、その継続用法は先行詞(語)に対して補足説明を加える形になるのに対し、 ● asがこの用法で用いられる場合は、その意味上、先行する「ものごと」に対して補足説明を加える形になることが多く、従って、通常の関係代名詞と違い、先行する節全体や内容そのものにかかってゆく場合が殆どのようです。
2. but 「〜ない...はない」 = that/who 〜 not ... "but"が関係詞として用いられるのは否定を伴った先行詞を持つ場合に限られ、限定用法のみで継続用法はありません。 ex) There is no one but wants to be happy. = There is no one who does not want to be happy. (幸福になりたくない者はいない) There is no rule but has exceptions. = There is no rule that does not have exceptions. (例外のない規則はない)
3. than ・・・「比較級(主にmore/betterなど) + [名詞] + than 〜」の形で、「〜より...な [名詞] 」 "than"は通常、比較級と呼応して接続詞の役割を果たすわけですが、この時に比較級として使われる"more"や"better"が副詞であるのに対して、これらには形容詞としての用法があります。形容詞用法の"more"や"better"の後には名詞が続くことになり、この名詞を先行詞として"than"が続く場合に、この"than"は関係詞であると看做されます。なお、このとき、先行詞となっている名詞は、続く節で主語、補語、目的語の役割を果たしています。(※ただし、辞書によってはこの場合のthanも関係詞として明確に分類せず、接続詞に含めている場合もあるようです。) 下の ex1) では、関係詞thanと呼応する比較級に名詞が続いているのに対し、ex2) は通常の比較級なので、この部分に名詞が入ることはありません。また、ex1)の例で見るようにthanに比較の意味合いが含まれることから、thanに続く節を先行詞を含めて言換えたり、比較の意味を持たない関係詞を用いて言換えると、否定的な意味になることにも注意しておきましょう。 ex1) Father gave me more money than was expected. (父は、思っていたより多くのお金を私にくれた) ・・・ thanは関係詞/先行詞 (more)moneyは続く節の主語 → Father gave me much money but that ( = much money) wasn't expected. ・・・ 等位接続詞 butを用いた言換え = 父は私に沢山の金をくれたが、(沢山の金は)予期されていなかった。= 父は私に沢山の金をくれたが、私は(沢山の金は)期待していなかった。 → Father gave me much money that wasn't expected. ・・・ 関係代名詞thatを用いた言換え = 父は私に、期待されなかったほど沢山のお金をくれた。 = 父は私に、期待していなかったほど沢山のお金をくれた。 ※「Father gave me much money + much money wasn't expected」で、二つの内容を一つにまとめる時、比較の意味合いにするために先の原級much (money) が変化してmore (money) になりthanと呼応。同時に関係代名詞than節で主語として機能する先行詞部分は消去され、意味の上から肯定文になった形が元の例文。
He is a better man than you'll ever be. (彼は、きみがなりうるよりずっと、いいヤツなんだ) ・・・ thanは関係詞/先行詞 a better manは続く節の補語 ⇔ You'll never be a better man than him. (←この場合のthanは前置詞) ⇔ You'll never be a better man than he is. (←この場合のthanは関係詞) = きみは彼よりいいヤツにはなれないだろう。 ※「He is a good man + You'll never be a good man (like him)」で、二つの内容を一つにまとめる時、比較の意味合いにするために先の原級good (man) が変化してbetter (man) になりthanと呼応。同時に関係代名詞than節で補語として機能する先行詞部分は消去され、意味の上から肯定文になった形が元の例文。
ex2) Health is better than wealth (is good). (健康は富に勝る) ・・・ この場合のbetter は形容詞でgoodの比較級/thanは接続詞 She is more wise than (she is) clever.(彼女は、利口と言うより賢明なのです) ・・・ この場合のmoreは副詞で形容詞wiseと共に比較級を作る/thanは接続詞 従位接続詞は本来、節を導いて主節を修飾するものですが、ex2) のように名詞節を導いて「主語+述語」を含む節でありながら、文法的に主節(文)の一部を構成する要素(主語、補語、目的語)になることがあります。上のような例では比較級と呼応するasの解説でも書いたように、通常、冗長になるのを避けるために重複する主語や述語、比較内容を表す形容詞や副詞が省略されて語のみが繋がれているように見えるのが普通です。しかし、文法上の理論では節でなければならないので、厳密に言えば( )内の語を補って考える必要があります。 thanのみを接続詞と考えるのではなく、必ずセットで用いられる「比較級+than」がまとめて接続詞の役割を果たしていると考えるとより分かりやすくなると思いますが、そうすると better than wealth (is good)/ more than (she is) clever が名詞節と考えられ、これがそれぞれの文で補語として機能していることがはっきりしてくるでしょう。 ●Health is good. + than wealth is good. → Health is better than wealth. ・・・ 二つの内容を一つにまとめる時、比較の意味合いになるので先の原級goodが変化してbetterになりthanと呼応。同時に比較表現であるため、than節から前出の部分は省略される。また、まとめられた文で主語Health = better than wealth であることから、than節が補語として機能している。 ●She is wise. + she is more than clever. → She is more wise than clever. ・・・ 二つの内容を一つにまとめる時、比較の意味合いになるので先の原級wiseが変化してmore wiseになりthanと呼応。同時に比較表現であるため、than節で前出の部分は省略される。また、まとめられた文で主語She = more than clever であることから、than節が補語として機能している。
※「文法は口語を基盤として、その一般的な法則性をまとめたものにすぎない」わけですから、通常はここまで理論的に追求する必要はないでしょう。ただ、文法を解説する上で、従位接続詞の定義から外れたように見える使い方がされている場合、そこまで説明しないと文法定義に対して理解の混乱を招くことになります。このように一見、文法定義から外れた使い方に見える場合は、補って考えてみると理解しやすくなる場合があることも覚えておきましょう。
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では、以上のような点に注意して、以下の日本語を英語に直してみて下さい。極力、日本語で考えず、イメージを自動的に英語にする努力をしましょう。もちろん、発音やイントネーションにも注意して下さい。すぐに言えなかった場合は正解例を見て記憶し、少し時間を置いてから言えるかどうか試してみます。これを何回か繰り返すうちに、日本語に対応した英語が難なく出てくるようになると思いますよ。
解答例1〜3."go out with "は"つきあう、交際する"という意味でよく使われます。"go with"でも構いませんが、口語ではよく"go out with"が使われるようです。また、後続するas/that節にwould が含まれるのは、これが確実な事実ではなく、話者の推測が含まれた表現であるためです。なお、読む場合は、解答例1. はイントネーションの山をgirlに置いてasに向かって切らずに続けて言うのに対し、2と3はgirlで一旦軽く切るようにします。これは、関係詞と接続詞では本文でも解説したように表現のニュアンスが微妙に違うためです。 解答例6〜7."(提案、申し出を)拒絶する"という意味では「reject」が一般的ですが、「attractive」のような形容に対しては「resist」を用いることもよくあります。日本語で言う「抗し難い魅力」と同じようなニュアンスです。
2009.4.6.+4.8.+4.17.+4.24.〜4.25.+4.30. 中級篇★その1.関係詞2.関係代名詞 C)複合関係代名詞 <<
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