Doritos Live Chat Part1

2000.1.18.

      

Part 1

Karina: リトス・ライヴにようこそ。今日から司会を勤めさせて頂くカリーナです。そしてゲストはグリーン・ガートサイド! 今日はニューアルバムの話をしに来てくれました。

Green: こんにちわ、よろしく。

Karina: インターネットでの出演は初めてですか。

Green: ロンドンでもいくつかやったことがあるよ。

Karina: ところでどうしてもう一度戻ってくる気になったんですか。カムバックしようと思ったきっかけは、何だったんでしょう。

Green: 自分でもよくわからないんだけど、2年くらい前から、このアルバムの制作に取りかかってて、その時にもう隠遁生活から抜け出してはいたんだ。

Karina: ええ。

Green: 考えてみると、すべてはどうしてこの世界から去ることになったのか、から始まると思うんだけど、そもそもここでの自分を売るという仕事が好きじゃなかったことから来るんだ。自分の中で大切なものが破壊されてゆくようで...

Karina: どうして?

Green: ウソっぽい、まがいものの世界だと思うからだよ。

Karina: どういう点で? こういうインタヴューとかでしょうか。

Green: だいたいのインタヴューは問題ないんだけど、例えばラジオ・ショーとか。...ぼくはステージ恐怖症が原因でライヴはやらずに来たんだけど、そうなるとレコード会社はラジオ・ショーなんかに出て来いって言うわけ。でもホントにハードなんだ...。生放送だし、それに...

Karina: 声とか全部ね!

Green: アメリカのラジオ局はぼくが育った環境にあるものとは全く違ってるし、日本のラジオ局もね。

Karina: 私は日本のラジオ局って知らないんですけど、どうして馴染めないんですか。

Green: 日本のラジオっていうのはね、出かけていくと一日に18セッションもやらされたりするんだ。相当強いか、そうじゃなきゃ賢いか、とことんバカかでもない限り気が狂うよ、それはもう。でもぼくにとってはそれが原因じゃなくて、...気がついたんだ。こういうのはでっち上げだって。そういう考えが居心地悪くて、業界も...。誰かがぼくはフラストレーションに対して忍耐力が低いんだって言ってたな。それって物事がうまく行かなくなると逃げ出したくなる、みたいな...

Karina: 状況が悪化すると、離れたくなるんですね。

Green: それが弱いからだって言う人もいるけど、ぼく自身は強いからだと思ってるよ。

Karina: だって人生は短いですもん。楽しくやれないなら、逃げるが勝ちでしょ。

Green: そう。まさにぼくがやったのはそういうことなんだ。

Karina: でも、音楽は続けたかったんでしょう?

Green: 音楽を聴くのをやめたことはなかったな。生まれたウエールズに帰って一人で孤独に浸っててわかり始めたのはね...。ぼくはガールフレンドとも別れて、バンドからも離れて、田舎のコテージで暮らしてたんだけど...

Karina: 素敵! すばらしいですね。

Green: そういう生活を何年も続けてて、わかって来たのは、ぼくは音楽を創ることが楽しくて、それがないと淋しいということだった。そうするうちに、創ることと売ることは別物だとも思えるようになったんだ。

Karina: じゃあ、どうしてこういうプロモーションとかそれに類することに対して準備が出来たと思うようになったんですか。内面的に強くなったということ?

Green: たぶんやらなくちゃ、と思うようになったんだろうな。それにその値打ちはあるって結論したんだと思う。以前はよくわからなかったんだけどね。音楽を創れる、というチャンスは本当に凄いんだ。誰でもがやらせてもらえることじゃない。田舎の小さなコテージにこもって業界の文句を言ってるなんてバカげてるよね。音楽を創るということは、ぼくの人生において、2番目に楽しいことだな。

Karina: じゃ、一番楽しいことは?!

Green: 自分の中で物事を落ち着かせること。再調整する、というか、そういうことかな。確かに音楽を創ることは楽しいし他の人たちと一緒に仕事することは大切なことだけど、もしおしまいに悪い批評が出たとしたって、死ぬわけじゃないしね。

Karina: あなたにとっての成功って、どういう意味を持つことなんでしょう。

Green: 成功も失敗もイコールだな。

Karina: 音楽で身を立てては行きたいけど、有名になるのはイヤだってことかしら。

Green: たぶんね。世の中に対する義務がついて回るだろ、それは...

Karina: プレッシャーね。

Green: 人間ってレコードにお金を出すだけじゃないんだ。ぼくはそうじゃないし...。もしレコードを買うとしたら、(それを作った)人たち、それに彼らが表現するものに対して支出してるんだよ。そういうのが居心地が悪い原因かな。

Karina: プライヴェートを大事にする方?

Green: うん。自分の個人的な場所を持ちたい方だし。音楽業界とは何の関係もない友達とつきあえる所とかね。

Karina: そうすると、田舎にひきこもってる間は何をやってたんですか。...ダーツとか?

Green: やってたよ。ダーツってアメリカでも人気あるの? それならきみもやらなきゃ。

Karina: そうなんですけど、やってはみたのよね、でも才能ないの。

Green: イギリスじゃパプでよくやるゲームだったもんだけどね。でもいつのまにか見なくなったな。田舎そのものが無くなって、ショッピングモールやこぎれいな郊外になりつつあるね。みんながそういう古い遊びで時間をつぷしているような昔ながらの村なんて探そうと思っても、なかなかだよ。

Karina: そういうのが好きだったのかしら。

Green: 小さな村に住むのは好きだね。牛乳配達って聞いたことあるでしょう。パプに行くとそんな人がいて、何てことない世間話をするんだ。音楽のことなんかじゃなくね。向こうはちっとも気にしないし...。スタジオにいなければ、だけど。

Karina: つまり、何かを創りだす作業そのものの創造性に魅力を感じるわけですね。

Green: うん、そういうこと。

Karina: そういうパプでお友達と飲んでて、あなたが誰かわかった人っていたかしら。

Green: よく。でも村の人たちはみんなぼくが何やってるか知ってるようなもんだったから。だからって誰も気にかけなかったけどね。

Karina: なるほど。...ところで、ずっとアメリカのアーバン・ミュージックがお好きだったと思うんですけど、それはどんなきっかけからなんでしょう。どんな風に気づいたんですか。

Green: そうだな。マイケル・ジャクソンは重要だね。

Karina: マイケル・ジャクソンからなんですか?

Green: イギリスで育つと、白人の創ったポップ・ミュージックばかり聴くようになってしまうものなんだ。それに白人の創ったロックね。それからパンクの時代が来たんだけど、その仲間になるのは楽しかったよ。

Karina: どうして?

Green: 毎晩遊びにでかけて、いつもパーティって感じだったから。クラッシュみたいなアイドルにも会えたし。でも何年かすると飽きてきてさ。

Karina: ええ。

Green: イギリスのインディー・ロックにはうんざりして来てたし。そういうわけで他の種類の音楽もチェックし始めたんだ。

Karina: パンクっていうのは排他的な集まりだと気がついたということでしょうか。

Green: パンクってまさにそうだよ。しかもインディペンデントの世界そのものがそうなんだ。カッコだけはつけてたけど、でも中身がなかった。

Karina: 怒りを装うことがカッコいい時代だったからそうしてただけなんでしょう。

Green: 言ってみれば、そういう方向で騒いで見せてただけ、というかね。

Karina: もともとポップに興味があったんですか。

Green: パンクには本質的なものがないと結論したんだ。ぽくがパンクに興味を持ったのは、そのパワーと反体制的な姿勢のせいだったんだけど...。パンクの後に来た音楽っていうのは全く反体制的なものじゃなかった。パンクというのはそれ自体の特異なマーケットと流通体系を発展させていたからね。そういう世界には新しいことが入る余地がないし、チャレンジもない。それでぼくはポップ・ミュージックのパワーを別な角度から見るようになったんだ。まず黒人のR&Bを主に聴き始めて、それからマイケル・ジャクソンのようなコンテンポラリーなものね。そうするとそこにはパワーがあるんだ。時代性なんかは全く関係がなくて、全く違った種類のパワーなんだよ。

Karina: それはどういうものなんですか?

Green: 議論を引き起こすような、何かパワフルなことをやって見せる必要なんかないんだ。何も世界を変えるためじゃない。これは保守的な考えに挑戦するための、もっとずっと興味深くて洗練されたやり方だと言えるね。そういうわけでパンクのあと、アメリカの黒人や白人か創っているアーパン・ミュージックに興味を持つようになったんだけど、初めて聴いた黒人音楽はレゲエで、ジャマイカから来たやつ。ラッパーズ・ディライト、ザ・シュガー・ヒル・ギャングのレゲエ・ダブ・ヴァージョンだった。

Karina: ええ。

Green: それはぼくがヒップホップへ興味を持つきっかけになったんだ。ポップ・ミュージックには一般にすごいパワーがあると思うね。

Karina: じゃあ、あなたにとってはそのパワーが重要なものなんですね。

Green: インスピレーションかな。

Karina: ソウル?

Green: ソウルには信頼が置けない。より良い場所への憧れとか希望とか、ユートピアやより良い何かへの潜在的な約束...

Karina: より楽天的...

Green: そういうので、わかりにくくなるんだな。ぼくはポップ・ミュージックを軽く見る人たちが好きじゃない。

Karina: じゃあ、スパイス・ガールズみたいなポップ・ミュージックはどうですか?

Green: ああ、あれは単なるポップ・ミュージックだよ。

Karina: ああいう種類のインスピレーションが必要な人たちもいますよね。

Green: ポップが引き起こす現象というのは興味深いね。

Karina: では、ここで、ニューアルバムの「アノミー&ボノミー」から1曲目の"UMM"を聴きましょう。

(Plays: UMM)

Part 2