Talking with a German Part 2

[not published] - July  1999

Interview by  Jochen Bonz

 

 

Jochen: あー、えっと、そうですね。では、あなたは...、つまりスタジオにもう一度...、もう一度スタジオに戻られて新しいアルバムのレコーディングを始められたわけですが、...

Green: 新しいやつのこと?

Jochen: ええ、あの本当に良く出来たアルバムのことですよ。  

Green: ふうん、そう思うんだ。なるほど、なるほど、なるほど..... 

Jochen: (笑) 

Green: (さっきの質問からずっと机を嬉しそうに叩いている)ぼくの考えではね...、うん。あれは台風にまきこまれたようなもんだったな。だって、ぼくはウエールズのリヴィングルームですっかり孤独にひたってたわけじゃない。で、ロンドンに戻って来たんだけど、そこでの暮らしに馴染むのが結構たいへんだったんだ。まわりに人がいっぱいいてさ。いきなりそれはものすごくたくさんの人がだよ。で...。まあ、いろいろ助けを借りてもう一度そういう社交的なことに慣れていったんだけど。もう一回まっすぐに歩いてゆく、というか、そういう...。ああ!、もうなんかおかしなこと言ってるな。

Jochen: そんなことないですよ。言葉どおり聞きますから。 

Green: そう?じゃ...。まあ、そうやって社会復帰を果たしたわけなんだけど、それから、こういうレコードが創りたいぞって思うようになったんだ。今でも飛行機から降りた時のことを思い出すよ。ぼくたちはニューヨークに少し寄って、って言うのはつまりデイヴ・ギャムソン、...ぼくの古い友人だけど、彼と一緒にね。

Jochen: ええ。

Green: で、それは良かったんだけど、...と言うのはデイヴが先にぼくに会いにロンドンに来てくれて、昔の友情が取り戻せたおかげで... 

Jochen: 今回のレコーディングが可能になったということですね。

Green: そうそう。

Jochen: はい。 

Green: ともかくも嬉しいのは、このレコードが他に何の成し遂げるところがなかったとしても、デヴィッドと再会出来て、彼や他の友人たちとのつきあいを取り戻すきっかけになったということだけでも、創ったかいがあると思えることだね。でも、どちらにせよ...

Jochen: 本当にそうですね。すばらしいことですよ。

Green: うん。まったくその通りだね。今ではぼくはこの友情をものすごく大切なものと感じているし、それだけでも充分に嬉しいことなんだ。でも結局、飛行機を降りた時にはぼくらはミュージシャンたちと会わなきゃならなかった。それは、...まあ例えば、デイヴがこんな風に言うとするだろ、「え..っと、ミシェルが(ミシェル・ンデゲオチェロ)、知ってるだろ、すごいベース・プレイヤーなんだけど」、するとぼくが「うん、作品は知ってるよ。でも彼女は全く...、かなりちがった世界の人だし、こうゆうのでは弾きたがらないんじゃないかな」、と言うと、デイヴが「そんなことないよ!やってくれるよ、絶対だよ」。...そんな成り行きで最初の夜には出かけて...、あのね、LAっていうのは、ただでさえおかしな所なんだけど...、あ、LAに行ったことはあるかい?

Jochen: いえ、私は一度も合衆国に行ったことはないんですよ。

Green: そう?。LAって所は、本当に変わったところなんだ。その晩出かけて行ったのは、パームツリーの向こうに海が見渡せるような場所だと思ってよ。そこでぼくらはミシェル・ンデゲオチェロや彼女のガールフレンドと一緒に食事をしたわけ。で、このガールフレンドというのが、偶然にも「カラー・パープル」を書いたアリス・ウオーカーの娘だつたんだ。それに他にも...

Jochen: ほんとですか、それ。

Green: もちろん、本当だよ。しかもベル・フックスって女流作家も一緒。

Jochen: ベル・フックスですって? もちろん知ってますよ。

Green: 読んだことあるかい? 

Jochen: 名前だけですけどね。作家と、それに男女同権を掲げる哲学者でもありますよね。

Green: そうなんだけど、彼女もその席にいて...。

Jochen: 黒人の男女同権論者でしたよね。

Green: 他にもウエンディ&リサ(プリンス&ザ・レヴォリューション)がいて、というのはウエンディ・メルヴォインがぼくのレコードで弾いてくれてたからなんだけど...。で、ぼくらは彼女たちと一緒に席についたわけ。でも、ぼくはと言えば、内心「ちくしょー、ウエールズ行きの飛行機にさっさと乗せてくれ」って気分だったな。

Jochen: (笑) 

Green: 神さま、どうかぼくをここから連れ出して下さい、これはスゴすぎます、まだとても心の準備が出来ていません!、ってさ。ま、始めはそんな風だったね。それからアルバムのリハーサルを始めたんだけど、ミシェルとぼくは、始め相当やりあってたんじゃないかな。

Jochen: どうして?

Green: 彼女はああしろ、こうしろ言われるのがキライなんだ。でもぼくはぼくで思わくがあるし...。すると彼女は、...わかるだろ? なんて言ったらいいのか...。

Jochen: 彼女の担当する楽器はなんでしたっけ?

Green: ベースだよ。

Jochen: ああ、はい。

Green: セント・フェルナンド・ヴァレーのリハーサル・ルームで演ってたんだけど、彼女は20分ごとに怒って飛び出して行っちまう始末。戻って来て落ち着くと、ぼくは「もう一回やれるかな。このパート弾いてもらえますか」

Jochen: ええ。

Green: そしたら今度は彼女が何かヘマをやって、ぼくが怒って飛び出して行く。でも外は暑いんだよ、これが。セント・フェルナンド・ヴァレーってのは。それはもう、...。

Jochen: (大笑い。事実私は相当笑いましたね。グリーン・ガートサイドに会えて本当に楽しかったので、かなりハイになってたかもしれません。それに彼に好感を持たれるようにも努力したかな。楽しかったけどね。)

Green: 百何度って暑さだよ、外に出ると。「くそー、暑すぎるぜ、中に入らなきゃ」って感じ。そうこうしてるうちにお互い歩み寄って来て、結果的にはいい友だちになれたけどね。で、一ヶ月くらいリハーサルしてスタジオに入ったんだけど、その頃には「じゃ、次ドラムやろうか」みたいな...、本当に楽しかったよ、だいたいのところは。

Jochen: どのくらいかかったんですか。

Green: なんと! アルバム全部が出来るのに1年以上かかったんだ。でも今回のはそれぞれ創るのに少なくとも1年、ともすればそれ以上かかった“プロヴィジョン”や“キューピッド&サイケ”とは全く違う。、と言うのは、当時は一日に16か18時間くらいをスタジオで仕事しててさ、そりゃもうぼくらは全くおかしくなってたね。とりつかれてるみたいなもんさ。きちがいじみてて、いいことじゃなかったと思う。今回のアルバムの方は、「じゃあ、10時にスタジオね。昼までリハで6時までプレイして、上がったらビーチで過ごそう」って感じ。すごくいいだろ。

Jochen: いいですね、本当に。

Green: マリブにでも出かけるか、そうじゃなきゃマンハッタンで...

Jochen: そうするとレコーディングはすべてLAでやったんですか。

Green: バッキング・トラックはそう。ぼくにとってはXXXはとてもいいスタジオだった。ビーチボーイズが殆どのレコーディングをやった所なんだけど...。

Jochen: なるほど。

Green: そのあとヴォーカルやラップはニューヨークで録ったんだ。

Jochen: "スマイル"もそこで録音されたんでしょうか。

Green: そうだよ。

Jochen: わかりました。

Green:  全くその通りさ。

Jochen: それにこの消防車と。

Green: そういうこと。なかなかだろ?

Jochen: ええ。ところで、ファンの立場から言わせて頂けば、あなたはスクリッティ・ポリッティのすべてのアルバムで、いつもとてもファンをびっくりさせるんです。

Green: 本当に?

Jochen: ええ、そう思いますよ。スクリッティのアルバムは、どれも驚きに値するんですが、この作品はそれほどでもないですね。ヒップ・ホップという要素はとてもスクリッティらしいと言えると思いますし。

Green: そんなところかな。当たってるよ。

Jochen: でも、ギターがね。

Green: ギターだろ。

Jochen: ええ、もちろんギターなんですよ。で...

Green: それはぼくの...、いや、いいよ。質問を先に聞こう。

Jochen: いえ、どうぞ。

Green: ぼくが始めてもいいのかな。

Jochen: ええ、どうぞ。

Green: 答える方がいいんかもしれない。

Jochen: 説明して下さればいいんですよ。

Green: じゃ、ギターだけど。大好きなんだ。、と言うのは、ぼくがマスターした唯一の楽器と言ってもいいくらいだから。でも弾こうとは思わなかった。ぼくにとってギターは、初めてアメリカに行った時に置き去りにした物の象徴的な存在だったからね。

Jochen: ええ。

Green: つまり、ロックンロール神話の象徴とも言えると思う。

Jochen: それに初期スクリッティのね。

Green: そういうこと。ギターに密接な関わりがある。それに、無意識のうちにもパンクロック、ポストパンク、プレパンク、そういったものと結びつくんだ。かなり保守的な遺産、ギターってその筆頭だね、ある意味では。それはインディー・ミュージックの...。一方でR&Bではギターはリズム楽器のひとつでしかなくて、役割もそんなに重くない。ハーモニーを支えるものなんだ。それがR&Bの面白いところなんだけど。ハーモニーを支える、というのは、全く...。

Jochen: キーボード、それとも?

Green: そうそう、キーボードだよ。いつでも弦、管、鍵盤のミックスなんだ。ギターのコードのようなものじゃなくて、境界がないんだね。

Jochen: ギターが語るということはありませんからね。

Green: そう、全くその通り、きみは正しいよ。それがいいところなんだ。ギターは語らない。でもロックンロールの世界に戻るとぼくの好みとは食いちがってくる。80年代から90年代を通して、ぼくはそういったものをうんざりしながらふり返ったもんさ。ぼくはギター・ミュージックって好きじゃない。全く退屈(dire)なしろものだからね。

Jochen: direというのは?

Green: 悲惨ってこと。つまらない、とるにたりない。

Jochen: ああ、ええ。

Green: だから、ただそれは...。つまりぼくは音楽をあきらめた時に、ギターを弾くのもやめてしまったんだ。事実、本当に...。ミュージック・ルームはあったんだけど...、言っただろ。ウェールズで住んでたコテージにはマッキントッシュやサンプラー、シーケンサー、ギター、キーボードなんかを集めておいた音楽室があって、でも長い間、その部屋に入る気がしなかったんだ。ああ、イヤな部屋だな、って感じさ。悪いことを思い出してしまうし。この部屋は...、そうだな、不幸そのもののような気がしてね。

Jochen: そのコテージには部屋がいくつあったんですか。

Green: 全部で、ってこと? それ本気で聞いてるの? (笑)

Jochen: そうです。

Green: ベッド・ルームと音楽室、リヴィングにあとダイニング・テーブルをおいておくような小さい部屋かな。それとキチン。

Jochen: なるほど。

Green: あと、庭もあったな。

Jochen: ええ、はい。

Green: で、その音楽室には入りたくなかったんだ。ドアを開けてそういう音楽づくりの道具を見るだろ、するとギターだって目に入る。で、思うわけ。「ぞっとするな、入りたくない。落ち込んじゃうよ」って。でも結局は入る時が来た。つまり、わかるかな。音楽は聴きつづけてたからね。ずっとヒップ・ホップばかりだったけど、あと、ダンスホール・ミュージック。

Jochen: ダンスホール・ミュージックは今も聴いてますか。

Green: いや、もう聴かないね。しばらくは聴いてたんだけど...。その他は全くヒップ・ホップばかりだったな。で、おかしな成り行きで...。ロンドンにスケートボードのショップをやってる友人がいるんだけど、スラム・シティ・スケーツって言うんだ。他の友人はスケートボードに関して着るもの作ってるしね。そんなわけでスケートボード関係の連中はよく知ってたんだけど、まあ、ロンドンに行った時に、ちょっと立ち寄ってヴィデオなんかも手に入れて来たりとか。スケートボード関連のあれやこれやを作ってる、いろんな会社から出てるやつ。

Jochen: それが重要なカギなんでしょう? そのヴィデオ。

Green: そういうこと。スケートボード会社から出てて....、ChocolateとかGirlとか...

Jochen: スノーボードもそんなふうですよ。

Green: へえ、そう?

Jochen: ええ、そうだと思います。

Green: で、そういうヴィデオをよく見てたわけ。1時間か1時間半くらいのヴィデオで、それぞれのホームタウンにいる人たちを撮ってるんだ。ズー・ヨークのヴィデオならイースト・コースト、とかね。ぼくもスケートを...、あー、でも、そのサウンドトラックには、いつでも面白いヒップ・ホップがおりまぜてあって、ギター曲も聞こえて来てた。始めどんなギター曲を聴いてたのかもう覚えてないんだけど、たぶんNoFX、 Rancid、 Pennywise、なんかのつまらない、パンクっぽいやつじゃなかったかな。でも、そういう初期のスケートボード・ヴィデオには、時々ものすごくいいギターの曲があってさ、ペイヴメントとか...

Jochen: 本当に? ペイヴメントですか?

Green: で、たぶん...、家で座ってテレビを見てて、そのうち音楽室からギターを持ち出して来たんだろうな。でスケートのヴィデオを見ながら...

Jochen: ホントにそういうのを楽しんでたんですねえ...。

Green: うん。ぼくもスケートやってたしね。そんなにうまくはないよ、白状すればものすごくヘタだったし...。でもやってはいたんだ。で、ギターを持ってきて、そうだな、こんな風だよ。そういうロックに合わせてなんとなく弾き始めて、the Wu-Tang Clanとか他のロック曲とか、そんなのにね。ぼくの記憶ではそんな風にしてギターに戻って行ったんだと思う。そのうち「ん、結構楽しいな」とか、思うようになって来たんだ。おかしな話なんだけど、そういう日常で唯一名前を覚えているのは...、ぼくは本当に沢山買ってたからね...、Veruca Saltだった。Veruca Saltって聞いたことあるかい?

Jochen: さあ、どうでしょうね。何ですか、それ。

Green: アメリカのギター曲だよ。ペイヴメントとか最近ではフー・ファイターズとか。でも何にせよ、他にもいろいろあったんだけど。そういうのがぼくに自然にまたギターを弾かせるきっかけになったんだ。そしてそれはぼくに二つの要素を...

Jochen: それで、今ではそんな風にスタイルを取り混ぜることを楽しんでいるわけですか。

Green: いや、そうじゃないよ。全くそんなことはない。楽しむとかそういうのはぼくのやることじゃないし、他の人たちに任せておくよ。でも、興味深いと感じることは確かだね。

Jochen: でも、それでうまく行ってますよ。本当に成功しています。

 

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