第3回 紅茶のお話 その1*私のリーフティことはじめ

 

本格的な冬が来るとやはり紅茶の季節。私の場合、毎朝リーフで入れた紅茶をたっぷり飲むのが日課になります。そういう意味では冬はトワイニングの定番リーフ・ティを買い揃えるところから始まる、と言ってもいいでしょう。

最近はマリアージュ・フレールのような紅茶専門店や、デパートでも様々なリーフ・ティを量り売りしてくれるお店をみかけるようになりましたが、私が子供の頃は紅茶と言えばリプトンのティ・バッグだったもの。どこのおうちでも、20年くらい前は普通そうだったんじゃないでしょうか。ウチにも、もちろんリプトンのティ・バックは常備されていましたが、お中元とかお歳暮とかで、その頃はまだ珍しかったトワイニングのリーフ・ティをセットで送ってくださるご奇特な方がありました。当時はもちろん味とか香りとか、まるっきりわからないで特に高級品とも思わず飲んでいたのですが、リーフ・ティがティ・バックとは全く異なる存在であることを知るようになったきっかけは一条ゆかりさんの「ティ・タイム」という作品です。

懐かしいと思われる方も中にはいらっしゃるのじゃないかと思いますが、主人公の紫苑くんのお姉さんが好んで毎晩飲んでいたお茶が、「オレンジ・ペコ」や「プリンス・オブ・ウエールズ」などトワイニングと思しきリーフ・ティの銘柄だったのです。当時の一条先生の作品は今よりもっと退廃的でお洒落なものが多かったんですけど、このお話は弟に恋して自殺してしまうお姉さんと、そのことで傷つけられてしまう弟、という一見危ないストーリー、でも半分コメディで楽しい作品です。ともあれ、私がトワイニングの缶に書いてある銘柄に興味を持つようになったきっかけがこの作品だったわけですが、その頃から一条先生の大ファンだった私はこれですっかりハマってしまい、シルヴィーさん(紫苑くんのお姉さん)のマネをして毎晩紅茶を飲むようになってしまったのでした。それ以来、長年愛飲しているわけですが、始めはわからなかったそれぞれのテイストが馴染んでくるとわかるようになるというのも面白いものです。やはり朝はその名の通り「イングリッシュ・ブレックファスト」や軽めの「オレンジ・ペコ」、香りはきついですが爽やかな「アール・グレイ」などが定番で、午後のお茶にはコクの深い「プリンス・オブ・ウエールズ」、「ヴィンテージ・ダージリン」などが、あやぼー的チョイスでしょうか。このごろは夜飲むと眠れなくなるのでハーブティにしていますが、それでも朝昼と飲むことが多いので大缶や詰め替えもあるトワイニングは重宝な存在。他の紅茶もいろいろ買いますが、やはり一番よく飲むのがこのあたりです。トワイニングの場合、詰め替えは「アール・グレイ」や「オレンジ・ペコ」など、写真のようなパッケージで私の知る限り4種類出ています。キレイな缶がムダにならなくていいよね。

さて、お茶はもともと例によって中国のもの。それがシルク・ロードならぬティ・ロードによって世界中に運ばれたわけですが、もともとは半発酵茶だったものが運ばれる途中で更に発酵して全発酵茶である紅茶になった、などという話もあるそうです。紅茶の木の種類はツバキ科の常緑樹で緑茶になるものも紅茶になるものも分類上は同じ「チャ」という植物。栽培されている品種はさまざまですが、それらをバランスよくブレンドしていろいろな銘柄の紅茶が作られるわけです。はるばる長い旅を経て世界から私たちのもとに届けられる紅茶の葉。やはり美味しく飲んであげたいものですよね。もうリーフ・ティが普及して久しいので皆さんすっかりご存知だとは思いますが、美味しいお茶の入れ方を、ここで一度おさらいしておきましょう。

まず茶葉はティ・カップ1杯分に対してティ・スプーン一杯ですが、英国式ではこれに「ポットのために」と言ってティ・スプーン1杯分を足してあげるのが普通のようです。これは私の私的見解ですが、例えばウエッジウッドなどの茶器は比較的大きいので小さめのティ・ポットで入れる時より「ポットのための一杯分」がお茶の濃さを調整するのに役立つのではないでしょうか。ですから一人分向けのティ・ポットくらいならティ・カップ分のお茶で十分のように思います。そしてこれに必ず沸かしたてのお湯を注ぐのが鉄則。水はミネラル・ウォーターではなく案外に水道水の方が良いそうです。これは水道水の方が新鮮で水の「気」が死んでいないせいだとか。ポットのお湯や沸かし直したお湯は絶対にいけません。先日、某デパートに英国で指折りのティ・ルームのオーナーが見えていてトークをやっておられたんですが、彼も新鮮な水道水を沸かしたてで用い、リーフ・ティを使って入れるのが一番美味しい紅茶の飲み方だと言ってらっしゃいました。彼によるとティ・バックには漂白剤などが用いられていてお茶の味を損ねてしまうので、やはり良くないそうです。

次に、これがティ・ポットの重要性でもあるんですが、お湯を注いだあと茶葉の抽出を促進するのがジャンピングです。ティ・ポットの中で茶葉を拡散させて十分に抽出するようにするわけですが、この点からゆくとストレーナーを内蔵したティ・ポットではなく、やはりウエッジウッドのような丸型の大きいポットが一番適しているということなのでしょう。抽出時間は普通3分くらいと言われますが、厳密に言うと茶葉によって違うので特に指示があるような場合はそれに従うのが良いでしょう。またお茶の香りは、お湯を注いだあと適当とされる抽出時間が経過した時点(普通3分くらい)が一番よく、それを過ぎると休息に劣化してしまいます。ですからお茶を入れる時はタイミングを計って、お湯を注ぐようにしたいものですね。

こうして美味しく入れたお茶も、時間が経つと更に濃くなってしまうわけですが、私のお気に入りのカフェではポット・サービスのお茶の飲み方について、こんなアドヴァイスをしています。まず入れたての紅茶は先ほども書いたように香りが一番良い時なので、それを楽しむためにもストレートで飲むのが一番。2杯目、3杯目になると濃くなってしまうので後の方はミルク・ティにしてどうぞ、というわけです。これはなかなか良いアイデアではないでしょうか。昔は紅茶を注文すると「ミルクですか、レモンですか」だったものですが、最近はちょっと気の効いたお店だと、これに「ストレートですか」の選択肢があるので、私はどこで紅茶を注文する時にもミルク・ティでお願いしておいて始めの方はストレートで、最後の一杯はたっぷりミルクとお砂糖で、という頂き方をしています。これは二度美味しいお茶の飲み方かもしれません。

ところで美味しいお茶を入れたら、やはり欲しいのは美味しいケーキ、ですよね? 関西で一番美味しいケーキのひとつと言えば、個人的に真っ先に挙げたいのは芦屋のアンリ・シャルパンティエです。こちらのケーキは、お値段も一流ですが味の方もそれにたがわず、ケーキとは名ばかりの画一的な洋菓子が多い中で、それぞれにしっかりした個性的な味わいを満喫させてくれます。中でもあやぼーのお気に入りが「金のモンブラン」で、洋酒をたっぷり含ませたマロンの風味は絶品。最近はこれに洋酒を使わない「銀のモンブラン」も人気があるようです。他にベイクド・チーズケーキ、これはマキシムのル・ロワイヤルというチーズケーキにも匹敵するくらいよく出来ていますが、そのマキシムにも美味しいケーキがいっぱいありますよね。挙げてゆくとキリがありませんが、甘いものと一緒に紅茶を飲む時オススメしたいのは、やはり紅茶に何も入れないでストレートで頂くことです。どんなに美味しいものでも最初の一口が一番味をしっかりと感じられるもので、舌が鈍ってくると十分に味わえなくなってしまいます。ストレートの紅茶でその香りを楽しみ、舌をニュートラルに戻してケーキを頂く。もし甘いものに甘い飲み物、というのが習慣になっているようでしたら、是非一度お試しあれ。紅茶ばかりではなく、コーヒーも甘いものと一緒に飲むならブラックが最適です。

さて最後になりましたが、トワイニングの紅茶好きの方にちょっと耳よりなお話。実はこの前、梅田の某輸入食品売り場でトワイニングの紅茶缶の値段を見るともなく見てたら「アール・グレイ」が100グラム缶で800円していました。思わず高いなー、と思ってしまいましたが、私がたまに行く神戸の輸入食料品店では200グラム800円というのが通常価格。ここは神戸周辺にお住まいの外国人の方がよく利用される古くからの輸入食品店なので、こういった生活価格が定番になっているようです。トワイニングの紅茶缶は「プリンス・オブ・ウエールズ」や「ダージリン」など何でも200グラム缶があり、それぞれに一般より安いお値段で購入出来ます。フォションなんかも置いてますよ。小さなお店ですが、中は輸入食品の宝庫で、あやぼーはスイス製ヒーロ社のジャムやリンツのチョコレートが大好きなので通りかかるとついつい寄っちゃうのね。紅茶ばかりではなく他にもさまざまな輸入食品が平均して安く買えるのが嬉しいお店。場所は神戸三宮の東急ハンズを裏手へ出ると左手に生田神社沿いの坂道があるんですが、それを登っていくと生田警察署があり、その先が大きな交差点になります。それを渡って少し行ったところの右手、あまり目立たない感じの古いマーケットがそのお店です。外見は古びてますが神戸通には知るヒトぞ知る存在なので、機会があったら神戸散策の折りにでも覗いてみてね。

では、今回はこのへんで。

2001.11.27.-2001.12.20.

BGM : Lakai

 

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