前章では、副詞の種類と基本的な使い方を紹介しましたが、ここでは例外的なものや特殊な意味を持つものなどについて解説してゆきましょう。
1.形容詞と同形で副詞の働きをするもの 副詞には確かに「形容詞+ly」型のものが多いのですが、副詞とは「文の骨組みとなる様々な要素に対して、より詳細な説明を加える時に用いられる語句(形容詞が名詞を修飾する語であるのに対して、副詞は文のあらゆる要素にかかって来る点が違う)」と理解すべしと前章でも書いたように、形だけでは判断できないものも多々あります。中でも、形容詞と同形で副詞として用いられている語や、逆に「ly」型の副詞の形容詞用法もあるので、こう理解しておくと出てきた時も戸惑わなくて済むでしょう。 ex) He's an early riser.(彼は早起きだ) ・・・ 形容詞 He gets up early in the morning.(彼は朝早く起きる) ・・・ 副詞 an early riser では名詞 riser にかかっているので形容詞と分かりますが、He gets up early 〜ではgets upにかかっているので副詞と判断できます。また、ちょっと話が飛びますが、例えば... He usually gets up early in the morning. この例文などは、「回数や程度を表す副詞(この文では usually)は原則として一般動詞の直前」、「状態を表す副詞(この文では early)は一般に動詞の後」という2つの原則を満たす文なので、丸覚えしておくと副詞の位置を感覚的に把握するのに役立ちます。短い文なのですぐ覚えられて、しかも文法的に重要な2要素を含んでいるという良い例ですね。これを覚えてしまっておけば他のことを言おうとする時にも、原則的な副詞の位置について悩まなくて済みます。 私が「リクツを覚えるより、実例を丸暗記しろ」と重ねて言うのは、このように簡単な文を覚えることで、自動的に文法センスが養われ、日本語で考えなくても自然に使いこなせる素地を作る役に立つからです。この例文の場合も理詰めで英作文しようとして「usuallyは程度を表す副詞なので動詞の前に置き、earlyは状態を表す副詞なので動詞の後に置く」なんて考えてたら、たったこれだけのことを言うのに何十秒かかると思います? 受験や模試に取り組んでる学生諸君は日夜こーゆーアホなことをマジでやってると思いますが、学校英語とはこういうナンセンスの集積であり、従って決して実用的なコミュニケーション能力にも繋がりません。テレビや洗濯機を使おうとする時に、それらの機械的構造を勉強する必要はありませんよね? どこにスイッチがあり、どれを押せばどう動くのか覚えれば良いだけです。同様に、英語においても文法とは機械的構造の部分であって、それを知らなくてもスイッチがどこにあるか覚えれば使いこなせるということです。 話を元に戻しますが、形容詞であるearlyも動詞を修飾してれば副詞ってことでしたね。同様のもので代表的なのは、 high(高い/高く)、hard(熱心な/熱心に)、fast(速い/速く)、long(長い/長く)、 far(遠い/遠く)、low(低い/低く)slow(遅い/遅く) などですが、この他にも沢山あります。また、大きな辞書で見れば分かると思いますが、意味はこれだけではないことも多く、例えば「high」には「贅沢な/贅沢に」などの意味も出てきます。そこで、「live high」という表現は「贅沢に暮らす」という意味になるわけですが、highを感覚的に「高い」と把握していれば、最初からその単語の意味を全て記憶していなくても、文脈から判断して「高い方にある何か」を表現する日本語を導き出すことは比較的容易いでしょう。「live high」なら「高く生活する」という直訳のイメージから「贅沢に暮らす」という自然な日本語が出てくると思います。同様に英単語には意味が数限りなくある場合が多いので、このような単語の理解法も長文速読即解のコツと言えますね。 なお、形容詞と同型で用いられる副詞にも「ly」型の副詞が別にあることも多く、ここで注意しなければならないのは、形容詞同型の時と「ly型」の時で意味が違ってくる場合があるということです。その例を次でご紹介しましょう。
2.形容詞と同形のものと、lyが付いたもの2種類があり、それぞれ意味が違うもの @) high(高く)/highly(非常に) ex) He aims high in his political ambitions. (彼は政治的野心を高く抱いている) His idea is highly original (彼の考えは非常に独創的だ) 他にも a highly paid consultant (高給のコンサルタント)、highly placed people(高位の人々)など、highlyは「形容詞を修飾して意味を強める」働きをすることが多いようです。こういった使い分けも、highやhighlyの単語としての意味だけを覚えていたのでは身に付くものではなく、英文の実例を沢山見て記憶することでしか使いこなせない部分と言えるでしょう。
A) hard(熱心に、激しく)/hardly(殆ど〜ない) ex) It's raining hard. (激しく雨が降っている) It's hardly raining. (殆ど雨は降っていない) hardly はseldom、scarcely などと同様、一般に否定語としてよく使われる単語です。上例のように意味が全く正反対になるようなこともあるので注意しましょう。
B) pretty(かなり)/prettily(美しく) ex) I'm pretty sure of it. (それについては、かなり確信している) Flowers are prettily arranged in a vase. (花が花瓶に美しく生けてある) prettyは、「かなり」の意味で強意の副詞として日常大変よく使われる言葉です。It's raining pretty hard.なんて言い方もしますね。また、prettilyは基本的に「美しく、可愛らしく」という意味ですが、「明白に(pointedly)、適切に(aptly)」などの意味も持っています。何度も言いますが、このようにひとつの英単語の意味は沢山あるので、文脈から意味を判断するという習慣を身につけるように努力して下さい。
C) near(近く)/nearly(殆ど、あやうく) ex) The shop is situated near to the station. (その店は駅の近くにある) She nearly fell into the river. (彼女は危うく川に落ちるところだった)
前置詞としてよく使われるnear ですが、副詞、形容詞としても使われます。上の文は、 The shop is situated near the station. とも言えるわけですけど、これは本来は副詞、形容詞であったnearから、後に付くtoが習慣的に脱落した結果として前置詞化した用例です。この場合は文法的には、「near the station」がひとかたまりの副詞句としてsituated を修飾しているということになりますね。 また、nearly は、near の「近い」という感覚的な意味から連想して、概念的に「近い」という意味を表現する語と理解すると分かりやすいかと思います。She nearly fell into the river.では、後に続く「川に落ちるという状況」に「近い」事態であったということで、それに適合する日本語が「〜しかける」、これは「危うく〜しかける」という表現でよく用いられるため、nearlyの一般的な意味を辞書では「危うく」とか「殆ど」なんて書いてあるわけです。こう考えてゆくと、「単語を感覚的に理解しておけば、それに対応する日本語は辞書に頼らなくても自分で作れる」ということが分かってもらえるでしょう。
@) not always, not necessarily など 英文を理解する時に厄介なことのひとつがこの「部分否定」というやつです。でも、よく出てくるので、ここできっちり把握しておきましょう。代表的なものは、 not always、not necessarily (必ずしも〜ない) not exactly (正確に〜というわけではない) この他にも、quite(まったく)、perfectly(完全に)、precisely(正確に)、absolutely(絶対的に)など、「常に」「全く」「完全に」「正確に」のような意味を持つ言葉が否定語と対になると、部分否定として「〜とは限らない」の意味になると覚えておきましょう。 ex) You don't necessarily have to help him. (あなたは必ずしも彼を助けなくて良い) I don't feel quite well today. (今日は全く気分が良いというわけではない)
A) not very と not much 「非常に」という意味を持つvery、muchが否定語を伴うと「あまり〜ない」という意味になります。 ex) He's not very kind. (彼は、あまり優しくない) I don't want to bother you much. (あまりご迷惑はかけたくありません)
では、以上のような点に注意して、以下の日本語を英語に直してみて下さい。極力、日本語で考えず、イメージを自動的に英語にする努力をしましょう。もちろん、発音やイントネーションにも注意して下さい。すぐに言えなかった場合は正解例を見て記憶し、少し時間を置いてから言えるかどうか試してみます。これを何回か繰り返すうちに、日本語に対応した英語が難なく出てくるようになると思いますよ。
※下線を引いた部分に特に注意して覚えて下さい。
2008.4.24.
>> 基礎確認篇その15.副詞2.注意すべき副詞 A)頻出する副詞の用法
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