前章では、複数形の形や発音について解説しましたが、形の上ではある単語の複数形であるにも関わらず、常に複数形で用いて単数形とは違った意味を持ったり、使われる意味(用法)によって複数形が異なる名詞、複数なのに単数のまま使う名詞などもあります。また、形は複数形でも単数扱いになるものもあるので、意味や慣例的な使い方に注意して使わなければなりません。この章では、そういった特殊な複数形について代表的なものを網羅してありますので、しっかり全て暗記してしまって下さいね。
1.常に複数形で用いられる名詞 @) 2つの部分がペアになっている器具、衣類 ・・・ 数える時には「a pair of 〜」を用いる ex) glasses / spectacles (めがね)、binoculars (双眼鏡)、scissors (はさみ)、tweezers (ピンセット)、 shoes (靴)、pants / trousers (ズボン)、jeans (ジーンズ)、socks (短い靴下) この他にも、例えはパジャマは、「a suit of pajamas」 の形で使う。
A) 学問の名前 ・・・ 形は複数形でも常に単数扱いとなる ex) mathematics (数学)、physics (物理学)、ethics (倫理学)、economics (経済学)、
B) その他、慣例的に複数形で用いられるもの 形は複数形でも単数扱いとなるものもあるので注意。以下の例では riches のみ通例複数扱いで、他は単数扱い。 ex) billiards (ビリヤード)、mumps (おたふくかぜ)、measles (はしか)、riches (富)
2.複数形で独自の意味を持つ名詞 多くは単数形から連想される意味を持ちますが、あまり関係のないものもあります。他の例と一緒に暗記してしまいましょう。 ex) airs (気取り)、arms (武器)、assets (資産)、athletics(運動競技)、authorities (当局、関係筋)、 basics (基礎、基本原理)、belongings (所持品)、 circumstances (状況)、clothes (衣類)、colors (軍旗)、 customs (税関、関税)、earnings (収入)、 effects (動産、身の回り品)、essentials (本質的要素)、expenses (経費)、 furnishings (備え付け家具、備品)、 goods (商品)、gymnastics (器械体操)、headquarters (本部)、looks (容貌)、 manners (行儀作法)、means (方法、手段)、odds (勝ち目、公算)、outskirts (郊外)、pains (努力)、 politics (政治)、premises (家屋敷)、proceeds (収益)、proceedings (議事録)、refreshments (茶菓子)、 remains (残額)、savings (預貯金)、sights (名所)、specifics (仕様書)、statistics (統計、統計学)、 supplies (必需品)、talks (会談、会議)、terms (条件、関係)、thanks (感謝、謝意)、valuables (貴重品)、waters (海、湖、川)
3.用法によって複数形が異なる名詞 これに類する名詞は以下のようなものが代表的です。注意して使いましょう。 @) fish 特に米語では「三匹の魚」と言う時に「three fish」となりますが、英国では「three fishes」となります。しかし、「三種類の魚」のように種類について言う時は米語でも「three fishes」となる点に注意して下さい。 ex) I caught three fish. (私は魚を三匹釣った。) ⇔ I caught three fishes (= three kinds of fish). (私は魚を三種類釣った。) また、食品としての「魚」は「魚肉」として物質名詞となるため、常に単数扱いで数詞や冠詞は付きません。 ex) Fish is cheap this week. (今週は魚が安い。)
他にも、魚や動物で群れをなしているものには、このように単複同形で使われる名詞があります。 ex) carp、salmon、sardin、sole、trout、tuna baison (野牛)、deer、sheep
A) fruit 果物全般を総称する場合は単数集合名詞となるので常に単数形、種類を言う時は複数形になります。また、「魚肉」と同じように食品としての「果物」を指す場合は物質名詞なので常に単数扱いで数詞や冠詞は付きません。 ex) This tree bears fruit. (この木には果物がなる。) ・・・ 一般的な使い方 ⇔ The store sells various fruits. (その店では、いろいろな種類の果物を売っている。) ・・・ 「種類」について言う ※ この場合、「sell」は販売している状態を言っているので進行形にしなくても構いません。 ⇔ She eats much fruit every day. (彼女は毎日、沢山の果物を食べる。) ・・・ 物質名詞として用いる
B) hair 髪の毛一本ずつを指す場合は普通名詞なので単数でも複数でも使えますが、頭髪全体を指す場合は集合名詞になるので常に単数形です。 ex) There's a hair on your shoulder. (肩に一本髪の毛がついていますよ。) ⇔ She has long hair. (彼女はロングヘアだ。) / She has gray hair. (彼女は白髪だ。) ちなみに、白髪のことは「gray hair」であって「white hair」とは言わない点を覚えておきましょう。また、上の例のように「白髪アタマ」という頭髪全体の状態を言う場合は単数形になっていますが、一本ずつの「白髪」は普通名詞となるので単数、複数ともに使います。 ex) She has gray hairs. (彼女は白髪まじりだ。) ・・・ 全体が白髪ではない点に注意
4.常に単複同形で用いるもの @) Japanese など、国民を表す言葉でeseの語尾を持つもの ex) There are three Japanese and two Chinese in this class. (このクラスには日本人が三人と、中国人が二人います。) 他にも、以下のようなものがあります。 ex) Bengalese (ベンガル人)、Burmese (ビルマ人)、Portuguese (ポルトガル人)
ひとかたまりのものを数える「単位」として用いられていると考えると分かりやすいと思いますが、ひとつのかたまりを指す時でも、複数のかたまりを指す時でもスペルは変わりません。但し、かたまりがひとつか複数かによって、それを受ける動詞は変化します。またcorps については、単数か複数かで発音だけが違ってくる点に注意して下さい。 ex) We're going to publish a new series of love stories. (我々は新しい恋愛小説のシリーズを刊行する予定です。) Many series of soap operas are on TV every day. (テレビでは毎日、たくさんのメロドラマシリーズをやっている。) A new television series is now on TV . (新しいテレビシリーズがいよいよ放映される。) 以上の例から、「a series of 〜s is ...」、「two series of 〜s are ...」という形が分かると思います。なお、series の後に来る名詞は常に複数形である点にも着目して下さい。「corps」も同様の使い方をします。
B) その他 以上の他にも、aircraft、spacecraft、Hovercraft(商標名なので大文字で始める) などは、複数でも「s」を付けずに使われます。
では、以上のような点に注意して、以下の日本語を英語に直してみて下さい。極力、日本語で考えず、イメージを自動的に英語にする努力をしましょう。もちろん、発音やイントネーションにも注意して下さい。すぐに言えなかった場合は正解例を見て記憶し、少し時間を置いてから言えるかどうか試してみます。これを何回か繰り返すうちに、日本語に対応した英語が難なく出てくるようになると思いますよ。
解答例1で「put on airs = 気取った態度を取る」。「stop 〜ing」 だと「〜するのをやめる」ですが、「stop to 不定詞」になると「〜するために止まる」という意味になるので注意して下さい。解答例2は税関で特に申告するものが無いときに使われる慣用表現です。 上の例文や解答例では、動詞と複数形になった名詞との関係にもよく注意して覚えるようにしましょう。
2007.10.30.+11.7. 基礎確認篇その11名詞 2.名詞の数 @)複数形の規則変化と不規則変化 <<
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