How green is my album?

One Two Testing musicians' magazine - May 1985

Interview by Tony Bacon

 

昨年の夏、アリフ・マーディンとのコラボレーションで発表された素晴らしい数々のエレクトロ・ソウルに続いて、グリーンは元マテリアルのフレッド・メイハー、機械屋デヴィッド・ギャムソンから成る新生スクリッティ・ポリッティと共に新しいアルバムを携えて戻って来た。この初めてのグループ・インタヴューの中で、スクリッティはトニー・ベーコンに彼らの曲作りの方法論と作品、それに打楽器音に関する妄執について語った。

 

新しいLPには半ダースほどアリフ・マーディンによるプロデュース以降の作品があるわけですが、その中に本物のドラムスを使った曲ってありますか?

F(フレッド):ないよ。いくらかパーカッションと本物のトムトムを使ったくらいかな。ガーデン・スタジオで録ってた時に、― ウェセックスやエデン、バッテリー、ジェイコブズ、それにアイランドなんかも使ったけどね ― サンプルをやってみようということになってね、打楽器音をテープに落としたんだ。だからAMSから出た音もあるし、本物のトムトムのもある。

G(グリーン):それとAMSから出てるスネア音とかバスドラ音とかね。

 

AMSサンプラーのクオリティについてはどう思いますか?

F:最高だと思うよ。

D(デイヴ):おかしな話なんだけど、サンプル自体はすばらしいけど、でもドラムスを効果をかけてサンプリングしようとすると...

F:トリッキーだよね。

D:ものすごくトリッキーだよ。ホワイト・ノイズ(騒音)みたいにしないで、ちゃんとした音にするのが大変なんだ。

F:"shoosh"って感じの音が、いつでもすごく高いところで終わるし。

 

そういう場合のコツってありますか?

G:チューニングかな。上げ下げのタイミングとか。

F:ミキシングも沢山やったよね。例えばスネアは4つも録ったりとか。ひとつはリンで、ひとつはAMSサンプルA、サンプルB、それとリム・ショットかな。それに様々な割合で効果をかけてミキシングする...

D:実際、スネアでいい音が出るように努力すれば一番うまくいくような気がするな。

G:教訓があるよ。テープに4つのスネアを収めようなんてしないこと、でないと何日も身動き取れないハメに陥ることになるからね。

F:でもそういうことを全てやってみた後で気がつくのはDMXだのリンだの、そういうよくあるストック・サウンドには物凄く時間と手間をかけてあるということなんだ。あんまりスタンダードで面白みがないし、それにどんなに使いたくなくてもさ、始めるのには極めてよく出来ているサウンドだという事実は厳然としてあるね。

G : さっさとやろうと思えば出来得る作業ではあるんだけど...、仕事自体は骨の折れるものじゃないし、コツは決断力かな。決定に時間をかけないこと。

D : ところがね、ドラムスから先に録るとするだろ。AMSでサンプリングする時は特になんだけど、そうすると曲の他の部分が出来上がる頃には、もう既にドラムの音がぴったり来ないような気がして来るんだ。

G : そうそう、結局最後にはドラムをやり直すなんてしょっちゅうだったよ。スネアや、それにキックでさえね。

F : サンプルで効果をかけるということも沢山やったけど、それがトリッキーで、ほら、例のホワイト・ノイズの問題とかさ。

G : どこでサンプルをやるかというのも大いに関係があるし。エデンの小さい紳士用トイレでやったんだけど、面白いものが録れたよ。でもセラミック・タイルの小さい部屋でさ、明らかにパワー・ステーションとは違ってたね。

 

そうするとアルバムの中のドラムスは殆どがAMSで作ったものなんですね。平均いくつくらいのドラムスを作ったんですか?

G : 山ほど。それはもう数え切れないくらい作ったよ。

F : シモンズもいくらかある。

G : シモンズの音でおかしいのは、よくホントにどうしようもない音になっちゃうってことなんだ。それはもう、なんていうか...

F : そんなのばかりじゃないけどね。ヒプノタイズのダブ・バージョンで使ってるトムトムの音はゲイリー・ランカンのリヴァーブ・コントロールなんだけど、それなんかはなかなかいいよ。

 

AMS、リン、オーバーハイム、シモンズなど、ドラムに様々なキャパシティを持ったものを使ったわけですが、どのような目的でも使えるドラム・マシンの必要性はなかったでしょうか。それとも様々な機器を使うことに何かメリットがありますか?

F : そうだな、ぼくにとって理想のドラム・マシンがあるとしたら、それはAMSを8台棚に並べとくことかな。ドラムマシンがサンプルを叩き出すのと同じ要領で、適当なモディファイを加えたものをコンピュータにリンクして出力するんだ。ストックしたサウンドがいっばい入ったソニーF1(デジタル・レコーダー)のテープが出来るかもね。

D : ハイ・ハットが問題だよ。

F :  うん。LPのハイ・ハットは全部リンかDMXなんだ。あまりにも時間が掛かりすぎるから、自分たちでサンプリングしようとは考えもしなかったな。

D : とは言え、機械のハイ・ハットは酷い。

G : 酷いと認めないわけにはいかないよ。

 

本物のハイ・ハットを使うというのは?

G : 他の音と本物のハイ・ハットを混ぜるというのは人間わざじゃないよね?

D : はっきり出ちゃう感じだから。

G : アリフとやった曲のセッションに加わってもらったスティーヴ・フェローンとか、そのくらい最高のドラマーでも、相当に強く、それから全く規則正しく叩いてもらわなきゃならないんだ。それでも実際、均等な打音にはならない。一方で他の部分の音も流れてるわけだよね。本物のスネアの音を、どんなにうまくAMSに取り込んだとしても、それは"ダ、ダ、ダ"という感じで絶対に乱れないわけ。普通は気がつかないだろうけど、全くのロック・ドラマーでも明らかに有機的な齟齬というのは生じているものなんだ。

 

マシン・メーカーの中にはそういった「人間的なもの」をプログラムに組み込もうとしているところもありますよね?

G : 実現はされてないけどね。

F : そういうのじゃなく、例えば実際には1小節の中の4つ目の打音は、各小節ごとにその叩き方や強さが違うとか、そういうことなんだ。

G : まあプログラムするのは可能だろうね。でも、そのひとつひとつを録音するためにはスタジオにオーバーヘッド・マイクを何本も用意することになるよ。それでも特定の音や唸りを全て録音し切れるとは思わないけど、スタジオの中にはウッドやメタルの入り混じったアンサンブル音が存在するわけだしね。

 

ドラムはそれでいいとして、それから...

G : こんなのはドラムに関してほんの手始めだよ。まだまだ大変なんだ。ドラムってのは、ものすごく重要だからね。

D : ぼくたちにとってはドラムはオブセッションになってるから。

F : 他の何よりドラムに時間を割いてると思うよ。

 

ドラムの他にアルバムで使っている楽器はありますか。

G : 在るか無いかくらいかな。

F : あと歌もちょっと入ってるんじゃない?

 

「バリスピード・ボーカル」論争については、グリーン?

G : ほんのちょっと特定の部分に使ってる他は全くないよ。ホントにぼくの歌なんだ。ぼくの声がバリスピードだって考えてるヒトもいるけどそうじゃなくて、ホントにぼくの声。のどで高いキィを出してね、そういうのがやりたかったから。ある種のシンガーの曲から影響されてるけど張り合おうとかいうんじゃなく、ボウイ以降の型にはまったヴォーカル・スタイルへの自然なリアクションというか、そういう王道をいく男性ヴォーカル・スタイルに対する、かな。どちらかと言えば、ぼくは女性の歌手が好きだし、それにアメリカの黒人男性シンガーは伝統的にとても高い声で歌うだろ? スモーキー・ロビンソンから始めて、エルドラ・ディバージに流れることは出来るよ。彼らはぼくなんかよりずっとうまいしね。でもそれは定まったやり方で、限界があるような気がするんだ。だからぼくは今回のLPでは少し開拓してみた感じかな。

 

他の楽器とかシーケンサーは、デヴィッド?

D : MSQ700を使ったよ。好きじゃないんだけどね。そのリアル・タイムは使い物にならなくて、何もかもステップ・ローディグでやらなきゃならないんだ。それにリアル・タイムのクオンタイジングが厄介でね。

F : 音をバラバラにするんだよ。

G : ハワード・ジョーンズが好きなやつじゃなかったっけ?

F : うん。やり方によってはベースラインは、なかなかいいからさ。

D : ステップ・ローディングは時間を食うし。例えばどの音も違う長さじゃないといけないとか、そういうのがいろいろ。それがヤなんだよね。

G : MSQのリアル・タイムも使ってみたけど、全く論外だったよ。

 

MSQを使わないとしたら何でやったんですか? コンビューター?

F : そう、それそれ。

D : QX1は良いような気がする。リン9000もね。 でも、やってた時は出てなかったんだ。フェアライト・ページRみたいなホントに使いやすいやつが出てくればいいんだけど。

 

アリフ・プロデュース以降の曲には生のベース・ギターを使ってないんですけど、たぶんシンセ・ペースですよね。ミニムーグかな、デヴィッド?

D : その通り。

F : ベースはデヴィッドの管轄だからね。ぼくらにとってベースはドラムに次いで重要な存在なんだ。

 

じゃあ、デヴィッド、どうやってあんなファンタスティックなシンセ・ベースのサウンドを創り出したんですか?

D : そうだな、ミニムーグというのは幸先がいいと思うよ。かなりの量のベース・ラインがシーケンスされてるし。ドラムと同じように普通ベース音というのは、様々な音のコンビネーションで出来てるものなんだ。ミニムーグでもDXでもフェアライトでもね。ミニムーグでヘマなんてやりようがないんじゃない? スイッチをオンにして振動器(オシレーター)を入れれば、もうベースの音になってるんだから。DXだとプリセットを入れ換えないといけない。これは耳でやるんだけど、数値化して処理するなんてぼくには考えられないな。でもヤマハの物凄く分厚いマニュアルを見るとね、生音と同じ質感を出すための数値が載ってるんだ。だから、そういう音を得るやり方があるんだけど、そこに辿り着いたら次のステップに進む。ともあれDXもなかなかいいと思うけどね。

G : 問題はあるよ。

D : うん。音の輝度を増すと曲にしっくり来ない透明感が出たりとか。

G : トレヴァー・ホーンが言おうとしてたことなんだけど、ぼくらがサームで仕事してた時はDXを曲に馴染ませるのに問題があるかもしれないという忠告にはブーブー言ってたんだ。特にリバーヴをかけようとすると問題になりうるんだけどね。

D : そうそう。特に厄介なのがリバーヴをピックアップしようとする時でね。アナログ・シンセがピックアップするような感じにはならなくて、反応が出るまでに相当強くかける必要があるんだ。それでも全く同じというわけにはいかない。そんな感じ。

G : それにまだ他のDXや別の機器とミックスする必要があったりとか。ひとつのDX独自の音は、とても際立ってるからね。

D : DXにEQをパッチして輝度を上げようとするとパッチする方が明るいと特になんだけど、例の透明化が起こり出してしまう。オリジナル・パッチの方に何か問題がありそうな気がするな。でもいくつものDXを使ってレコーディングする時には、そのどちらもが問題になるんだよ。

 

シンセ・ペースのサウンドはフェアライトのものもあると言ってましたね。それはサンプルされたものですか。

F : フェアライトの講習を受けたんだけど、シンセサイザーの部分は触れないなという結論に達したんだ。最も複雑な部分だろうね。だからサンプリングに使うだけにしたんだよ。

D : ベースとか、それにギターでも大部分はなんだけど、ぼくらがやったのはパートごとに音をひとつひとつサンプルするやり方なんだ。まとめてじゃなくね。その方がずっといいような気がする。

G : なんでそうしたいのか、たまに不思議になるんだけど。

D : 簡単さ。ミニ・ムーグとの相性がピッタリ来るんだ。

 

じゃあ、フェアライトを使ったのは何故ですか。非常に高価なサンプラーですよね。

F : ページRだよ、基本的には。ものすごく使いやすいんだ。フェアライトを使ってた時にはプログラマーに来てもらってたんだけど、でもページRなら簡単だからね。それにきみの質問に答えるとするなら、ぼくらがこれを作ってる時にはエミュレーターUがまだ出てなかったってこともある。そりゃ、欲しかったさ! でも手に入らなかったんだ。

D: 機器やスタッフにこだわりすぎるところって、あるんじゃないか、フレッドは。

G : もうやらないよね、特にデイヴは。

F : そうかなあ...。

D : だって何でプレイするかよりアレンジの方が問題だと思うからだよ。アレンジメントには明らかに一家言あるね。

F : カウンターポイント(対位法)だろ。

D : 音質とリズム、双方についての対位だね、実際。ぼくが思うにファンク・ミュージックとは正にそれなんだよ。カウンター・ポイントって何かって? 二つの異なるラインが縦横にハーモナイズすることだよ。譜面上では個別に演奏されるけど、相乗して効果が生まれるんだ。それがアレンジメントの真髄ともいうべきもので、音質の点についても...

G : Cod funk shit. そういうこと。

F : 内輪のジョークだよ、ごめんね。

D : まあ、ともかく音質の点についても対位法が成立すると思うわけ。音楽的に同じ展開が続いていても、音質を変えてゆくことで面白みが持続するというか。

F : それで可能な限り手当たり次第に沢山のデジタル・リバーヴを使ったんだよ。

G : リバーブに関しては追い掛け回したよね。

F : と言うのも、もしリバーブが一種類しかなかったら、基本的にはユニバーサル・パッチも一種類しかないってことなんだ。その結果全く一次元的に聞こえるミックスしか期待出来ない。アンビエンスを必要とする全ての要素は、最終的にひとつの器に収まることになるんだけど、現実にひとつの部屋で人間が合奏しているのと違って、デジタル・リバーブとなると、...デジタル・サンプルというのは完全に一定の存在だから、...リバーブもそうで、例え違った割合でかけたとしてもね。それで手に入る限り多くのリバーブを使いたかったということなんだ。

G : 理性の領域を越えた問題だよ。

 

その山ほどのデジタル・リバーブの中で特に気に入ったものってありますか?

F : 今のところぼくらが一番気に入っているのは Lexicon 224X かな。凄く融通のきくリバーブだよ。

D : それのデジタル・プレートは多分最高と言っていいだろうね。

G : ぼくはソニーDRE2000も好きだよ。国内には1〜2台しかないと思うけど。ブリタニア・ロウがひとつ持ってたけどソニーに戻したし、グラスゴ−にもひとつあるかな。それとヤマハのRev 1 も面白いと思う。

F : AMSのデジタル・リバープなんだけどさ、これはリバース・ルームやノン・リニア・プログラムなんかで変わった効果をかけるのによく使ったんだけど、例の224Xよりむしろ、これからプレートを取るとしたら較べるものはないと思うよ。でも実際何にも変えられないのは昔ながらの本物のブレートだね。例えばウェセックスは、いくつか凄いのを持ってたよ。

G : でもそういうオーソドックスなものって、どこかに使い道があるものなんだよね。

 

2002.2.24.-2002.3.21.