〜デュアンくんの日記から〜
おそらくそれが発端だったんだと思う。
それはぼくが4才くらいの時だった。ある日、ぼくはママの蔵書の中にキレイな絵がいっぱい載っている画集を発見したんだ。それはとてもヴィヴィッドな色彩と大胆な構図で描かれていて、それになんだかすごく不思議な絵だったので、ぼくはまずそれに夢中になってしまった。それから当然のことながらぼくはその作者に興味を持ち、画集の最後の方に載っていた彼の写真に目を止めた。その写真は、彼の絵の中に描かれている人物たちよりもさえ美しくて、ぼくのイメージを少しも裏切らなかったんだ。
考えてみると、ぼくはその瞬間にぼくの生涯唯一人の恋人になるはずの、デュアン・モルガーナに恋してしまっていたんだと思う。ただ、恋するにあたってひとつ不都合だったことは、それがぼくの実の父だという厄介な事実だった。でもその頃、まだぼくは彼がぼくの父であることを知らなかったし、自分が彼に恋してしまっていることに気づくにも子供過ぎたんだろうね。それでぼくは長いこと彼のファンなんだって思っていたんだけど、お近づきになれる機会なんてありそうもない大画家が、本当はお父さんだって知った時は驚いたのはもちろんだけど、それにも増してラッキーって感じだった。だってそれならちょっと会ってお話するくらいはしてもらえるかなと思ったからさ。
それなのにママが絶対ダメと言うものだから、その事実を知ってから本当に彼に会えるまで、更に2年以上もかかってしまった。最初に彼に会った時は、ぼくは何を喋ったのか正直言って何も覚えていない。只々アタマがぼーっとしていて、写真以上に優雅で綺麗で素敵な画家にみとれる以外、何も出来なかったのだけは覚えているけどね。
original text :
2008.3.15.
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