京都の夏と言えば祇園祭、でも関西に住んでるとハンパに近場なためにかえって行く機会を逸してしまっていました。毎年、この時期になると行きたいなあと思いつつ何年も経っていたんですが、今年はうまい具合に天気もよく、タイミングも合ったので初参加とあいなったのであります。 祇園祭のメインといえばやはり17日の山鉾巡行なんですけど、さすがにその日は混むだろうなということで、今回は前日の宵山見物。それでもすごい人出じゃないかと思って行ったわりには案外にすいていて、お昼間はいつもの京都とあまり変わりありませんでした。山鉾巡行は17日で、15日、16日が前夜祭とも言える宵山になるわけですが、この15、16、17という日にちは曜日に関係なく変わらないようで、今年はそれが平日に当たっていたことも、人出と関係があるかもしれません。 それでもさすがに日本三大祭りのひとつとも言われる祇園祭中の京都ということでいつもと変わっている点もいくつかあって、例えば、横の写真でもご覧になれる通り、大通りに提灯の行列が並んでいることや、アーケードに流れる音楽が、この時期ばかりは祇園祭につきものの、例の独特のお囃子の音色になることなどがそれです。このへんがなかなか雰囲気を盛り上げる役割を果たしているんですよね。 写真は京都のメインストリート四条通りを写したものですが、この大通りを東に向って歩いてゆくと、そのどん突き(突き当たり)に祇園祭の主役である八坂神社があります。このページ、トップのタイトル写真がそれなんですが、さすがになかなかの人出でしょう? でも、これは夕刻(6時頃)のもので、お昼間はもう少し人も少なくて、楽に見物することができました。
ご存知のように、京都は碁盤の目のように通りが縦横に走っているわけですが、大通りと直角に交差する商店街にも上の写真のように、祭り気分を盛り上げる提灯が沢山飾られています。その横の写真は鴨川を橋の上から撮ったもの。四条通りを歩いていてこの辺りに差し掛かると、さーっと川風が涼しげに吹いてきて、特に夏はほっとした気分になります。
さて、四条通りの両側には、いろいろな商店が軒を連ねているんですけど、有名な花見小路や先斗町もこの通り沿いにあります。メインストリートは普通に商店街という雰囲気なんですが、ちょっと横道にそれて花見小路などに入ると、道は石畳、両側に並ぶお店も昔の日本の町並みを思わせる古い木造のものが多く、このへんも一見の価値があるところですね。石畳を走ってゆくクルマもこころなしかのんびりゆっくり通り過ぎる感じで、タイヤの音もアスファルトを走っている時のものとはなんとなく違って風情があります。 ふと見ると、→ → → おや、郵便ポストが昔ながらの円筒形じゃありませんか。昔はみんなこんなだったもんですが、今はまずこんなの見かけませんよね? ポストばかりではなく、今はどこでも一般にこんな木の外壁を持つおうちを見かけることは殆ど無くなりましたが、京都にはこの花見小路ばかりではなく、あちこちでこういった手入れの行き届いた古い建物を見ることが出来ます。もともと、昔のおうちに使われている木は、今となっては希少な良質の木材であることも多いため、長年風雨にさらされてなお美しい景観を見せてくれるのだと思います。実際、こういう木材は今では手に入れることそのものが難しく、従って、相当高価な注文住宅でさえ、なかなかこんなふうにまでするのは大変なんじゃないでしょうか。それに、時間の経過のみが生み出す木の美しさというものは人工的に作ることができませんからね。京都に行かれたら、ぜひ、昔ながらの木造家屋の美しさも堪能して頂きたいものです。
というような、京情緒たっぷりな通りをのんびり眺めながら歩いて、やってまいりました、八坂神社。境内はそれほど広くはないんですけど、こちらも提灯や飾りつけが見事で、17日の神幸祭で街を練り歩くことになっているお神輿なども安置されていて、なかなか見ごたえがあります。もちろん、お約束の屋台も昼間から既にいっぱい。
京都に来ると、ここってやっぱり世界の観光地なんだなあと改めて感心するんですが、外国人観光客の方が実に多い。話されているコトバを聞くともなく聞いていると、英語ばかりじゃなく、フランス語まではなんとかそれらしいと判別出来るんですが、中にはどこのコトバ??? というようなのまでいっぱい飛び交っていて、しかも神戸に比べて明らかに「観光してます」な外人さんがいっぱいなんですね。写真の射的の屋台なんかでも、遊んでいるのはコレ、皆さん外国のお嬢さんたちです。道を歩いていても、浴衣姿や着物姿の日本人の女の子なんかは、彼らの恰好の被写体になっているようで、外国の方にはやはり「京都=日本文化」なイメージが定着してるってことなのかなと思ったりしました。
そして、この八坂神社を通り抜けて裏の方に出てゆくと、こちらにはかの有名な一年坂、二年坂、三年坂のある東山が広がっています。もちろんこのあたりも観光のお客さんがそれなり歩いていますし、土産モノのお店も沢山ありますが、通りに連なる建物の外観が古風なせいか、情緒はあまり損なわれていません。 で、まあそのへんをのんびり見物していたら、いきなりぬっと現れたのが下の写真の塔。こーゆーもんが、当たり前のように、しかしいきなり出現するところが京都だなあと、以前、商店街のハズレで本能寺を発見した時も思いましたが(その時の経緯はこちらでどうぞ)、確かに、京都に来ると、本でしか知らなかった歴史をこういうふうに実感する瞬間というのがありますね。建物とかにしても、存在するとアタマでは理解しているんですが、それってわりと実感を伴ってないもので、でも実物をこうして目の前に置かれると「本当に在るんだ」というインパクトがどん、と来る感じです。ただ、昔、学校の遠足とかで観光バスに乗って引き回された時には、例えそういう場所に行っても全然なんも感じませんでしたから、やっぱり本人が「見よう」という気持ちが伴ってないと、そういう実感も沸かないってことなのかもしれませんけどね。
あやぼー的に特に夏は、こういうところを見物して歩きながら、そのへんのお店で買ったかき氷とかソフトクリームを食べるってのも楽しみのひとつです。ふだんはモノ食べながら歩くなんてのは許されないコトのように思えるんですが、ま、お祭りとか観光してる時くらいは良いじゃないですか。もちろん、食べ終わった後のゴミは、ゴミ箱に、ですけどね。そういえば、八坂神社の境内もあれだけ屋台が出ていたにも関わらず、ゴミがちっとも落ちてなかったのは印象的でした。境内にはゴミ箱はなかったんですけど、神社を出た所とか、周囲の通り沿いには設けられていて、皆さんそちらにちゃんと捨ててらっしゃるようでしたよ。
東山をぐるりと回って、もう一度八坂神社に戻ってみると、そろそろ夕方になろうとする時刻だったんですが、偶然、和太鼓の奉納に出くわしたのはラッキーでした。こちらは「京北・大杉太鼓保存会」の皆さんの演奏で、境内では4曲ほど披露して下さったんですけど、これが実に素晴らしかった。和太鼓のライヴ演奏なんて、私なにしろ初めて聞きましたからね。しかも、コンサートホールとかじゃなく、戸外で、しかも目の前で聞けるわけですから、その迫力がまた凄い。こんなのは、こういうお祭り以外ではめったに出来ない経験だと思います。これに続いて、伝統的な鷺踊りも奉納されたんですが、その様子が下の3枚の写真です。これらはクリックして頂くと大きいバージョンでも見れるようになってますので、ぜひ格好いい和太鼓のパフォーマンスと、華やかな鷺踊りの様子をよくご覧になってみて下さい。ビデオでお見せできないのが残念なくらいです。 和太鼓は、電気機器を一切通さない生の重低音なわけですから、これがまた一段と迫力のあるもので、ロックやジャズのドラムスと違って、そのぐっとプリミティヴな力強さのある音には大変感動いたしました。で、また、叩かれてるみなさんの振りやバチさばきがまたなんとも決まってて見ごたえ大アリ。いやー、これはもう全くのもうけものでした。さすがに祇園祭、なかなかハンパではない本モノを見せてもらえます。一方、鷺踊りの方は、10才から12才くらいの女の子が選ばれて毎年披露される伝統的なもののようで、こちらは7月末に催される「花傘巡行」の一行にも加えられているのを、以前見たことがありました。ちなみに、「花傘巡行」というのは、御神輿や時代装束に身を固めた人たちが、お囃子や踊りを披露しながら、かなり長い行列で八坂神社から京都の町を一周して回るというもので、こちらは数年前に見に行ったことがあります。これもなかなか見応えのある行事でしたよ。
さて、和太鼓の話に戻りますが、境内での披露は4曲だけだったんですけど、後に7時〜9時まで、南座の前での演奏もあり、こちらでは2時間で15曲という、もう全くコンサート状態のプログラムで堪能させて頂きました。昨年まではもっと時間が短かったようなんですが、なにしろ本当に素晴らしい演奏なので毎年の人気も高いようで、今年はこのプログラムになったようですね。 実際、太鼓というのはとにかく太鼓ですから、他の楽器のように音階のある音楽というわけではない。しかも、なにしろこちらはシロウトですから、最初に4曲聞いた時はどれがどういう曲か区別がつかなかったんですけど、2回目に聞くと、ああこれはさっき聞いた曲だなと分かるということにちょっと驚きました。こういうのは、何回も聞いていると、もっと何が表現されているのかよく分かってきて面白いものなんだろうなあと思います。まあ、演奏しておられるグループが、結成して来年で20年ということで、皆さんそれだけ年季も入ってらっしゃるからなんでしょうけど、単に「お祭りの和太鼓」というに留まらず、聴き応えのある音楽表現になっていることにも驚かされました。 太鼓にもいろいろ種類があるようですが、中でも迫力だったのが、上の左の写真にも写っている、人の背丈ほどもある変形の杉太鼓です。これは樹齢400年とも500年とも言われる杉の木に革を張って作られたもので「ひびき」くんという名前まであるとか。これの音なんですけど、すっごい不思議だったのが、叩かれる方によって音が違う感じがするんですね。まあ、叩く人の力やリズム感によっても変化するものなんでしょうけど、若い方が叩かれると爽やかに響く感じ、年配の方が叩かれると、雷サマか? というくらいドスの聞いた重低音になる感じがするんです。いやいや、太鼓と一言で言っても、なかなか奥が深いものですな。 15曲の中で、特に印象に残ったのが「転禍招福息災延命」と唱和しながら叩かれるものだったんですけど、特にこの「転禍招福」というコトバが良いですね。「災いを転じて福とする」というような意味ですが、これはまあ祈願のコトバなんですけど、日頃から「悪いことがあっても踏み潰して、それを乗り越えてピンチをチャンスに変えるのだ!」というのが私の信条なんで、それと相通じるものがありました。ともあれ、南座前での演奏は、終了が9時になるということが分かっていたので、何曲か聴いたら引き上げようと思っていたのに、ついつい全曲最後まで聞いてしまったほどで、ぜひ、来年も聞きに行きたいものだと思っています。
この時期、6時を過ぎると四条通りは歩行者天国になるようで、それもあって八坂神社へのアクセスは人が多くなる時刻になってもわりとすんなりゆくようでした。これ、歩行者天国になってなかった時代ってのは、あの狭い両側の通りだけだったんだろうから、それこそ動けないほどだったんじゃないかと思うけど、往復で6車線が開放されるとさすがに人間で渋滞するってことはありませんね。このくらいの混雑なら、込むのキライな私のような人でも、まあまあ許せるという程度のものでしょう。ただ、あくまでもこの日は平日に当たっていたことは明記しておかないといけないかもしれません。土日に当たる日ってのは、だぶんこんなもんじゃないんじゃないかという気がします。ちなみに、四条通りと交差する道は車道が生きているので、それを渡る時には信号で止められます。 ま、そんな感じで祇園祭・宵山の京都を観光して来たんですが、とっても楽しかったので、来年はぜひ「山鉾巡行」も見に行きたいと思います。本当は今年、続けて行きたかったんですけど、さすがに1日歩き回ると疲れて翌日はダウンしてしまいました。それで、今年は「宵山篇」だけなんですけど、来年のこの時期に運良く晴れれば「山鉾巡行篇」をお届けすることが出来るんではないでしょうか。間が一年空くところが、シュミの個人サイトの微笑ましいところではないかということで、この話題はまた、来年(♪) 最後の写真は、鴨川沿いの夜景です。
photo : 2008.7.16. text : 2008.7.22.
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